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パニック障害などの疾患治療に利用できる可能性

理研、危険に対し冷静・適切に対処できる神経回路を発見

2014年11月21日 19時29分更新

文● 行正和義

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左:危険を知らせるシグナルに対して、回避行動を学習する能動的回避行動の学習実験/右A:ランプの点灯に対する、腹側手綱核の神経活動の応答を記録する実験/右B:蛍光タンパク質GFPで標識した腹側手綱核を生きたゼブラフィッシュで観察

 理化学研究所は11月21日、動物が危険を感じたときに冷静かつ適切に対処する学習に関わる神経回路の働きを特定したと発表した。

 恐怖を覚えるような事態では、動物はパニック反応で立ちすくむことがある一方、経験を積むとパニックをおこさず回避行動が取れるようになる。これは回避成功時の「ほっと安心」する際に脳内ドーパミン神経細胞の活動が報酬として働いて行動の強化学習に繋がる。動物が本来持っている危険予測値と現実の結果の差によって神経細胞の活動が起きることが分かっていたが、その差が脳のどこで表現されているのかはこれまで解明されていなかった。

 理研脳科学総合研究センター、発生遺伝子制御研究チームでは、小型の淡水魚であるゼブラフィッシュの脳を調べ、脳内の腹側手綱核(ふくそくたづなかく)という部分が危険予測値に対応していることを実験で確認した。手術により腹側手綱核からの情報を遮断すると能動的な回避学習ができなくなる。

A:ゼブラフィッシュの脳での腹側手綱核-縫線核経路の模式図/B・C:腹側手綱核-縫線核経路に神経伝達を遮断する破傷風毒素(緑色)を発現するように操作した遺伝子改変ゼブラフィッシュの脳切片/D・E:腹側手綱核-縫線核経路の神経伝達を遮断したゼブラフィッシュでは回避行動の学習に異常が認められる。 

 また、光感受性タンパク質を神経細胞に発現させ、光をあてて神経を活性化させる光遺伝学という手法を用いることで、人工的に大きな危険予測値を植え付けることにも成功した。

A:光ファイバーを接続した自由遊泳中のゼブラフィッシュ/B・C:光遺伝学を利用して腹側手綱核を人為的に活性化させる実験の模式図/D:腹側手綱核に光感受性タンパク質を発現させた魚では、光照射による腹側手綱核の活動の上昇に伴って回避行動が観察され、光の照射を受ける領域に滞在する時間が短くなる

 手綱核-縫線核神経回路は、ゼブラフィッシュから人間を含むほ乳類まで保存された機能で、機能が共通という。ちょっとした不安などから動悸や息苦しさといった発作を起こすパニック障害を抱える人は100人に1~2人いると言われており、理研は今回の実験結果がパニック障害などの疾患の効果的な治療法開発に繋がるとしている。

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