理化学研究所は11月21日、動物が危険を感じたときに冷静かつ適切に対処する学習に関わる神経回路の働きを特定したと発表した。
恐怖を覚えるような事態では、動物はパニック反応で立ちすくむことがある一方、経験を積むとパニックをおこさず回避行動が取れるようになる。これは回避成功時の「ほっと安心」する際に脳内ドーパミン神経細胞の活動が報酬として働いて行動の強化学習に繋がる。動物が本来持っている危険予測値と現実の結果の差によって神経細胞の活動が起きることが分かっていたが、その差が脳のどこで表現されているのかはこれまで解明されていなかった。
理研脳科学総合研究センター、発生遺伝子制御研究チームでは、小型の淡水魚であるゼブラフィッシュの脳を調べ、脳内の腹側手綱核(ふくそくたづなかく)という部分が危険予測値に対応していることを実験で確認した。手術により腹側手綱核からの情報を遮断すると能動的な回避学習ができなくなる。
また、光感受性タンパク質を神経細胞に発現させ、光をあてて神経を活性化させる光遺伝学という手法を用いることで、人工的に大きな危険予測値を植え付けることにも成功した。
手綱核-縫線核神経回路は、ゼブラフィッシュから人間を含むほ乳類まで保存された機能で、機能が共通という。ちょっとした不安などから動悸や息苦しさといった発作を起こすパニック障害を抱える人は100人に1~2人いると言われており、理研は今回の実験結果がパニック障害などの疾患の効果的な治療法開発に繋がるとしている。