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いま知っておきたい、デルのテクノロジー 第1回

VRTXで始める、未来のビジネス

編集部のナードが、テクノロジーの未来を妄想してみた

2014年11月21日 13時00分更新

文● NERD@ASCII.jp、イラスト●安谷隆志

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 ASCII.jp編集部はだめなナードの集まりである。技術好きなオタクである彼らは、見果てぬITの未来を求めて日夜くだらない議論を続けている。要はITサイコー、テクノロジーこそエクスタシーが信条の集団である。知識はときに適当で、理屈はおおむね机上の空論だが、ごく稀に役立つ情報やアイデアが出てくることもある。この連載は、狭い編集部の片隅で、妄想という名の夢を語らう、風呂敷だけを広げた議論の記録である。

 「ゔ~、さびぃ。誰だよ、12Fの空調設定、また18℃に下げたやつは!!」
 「何か空気の循環が悪くて、暑いところと寒いところの差が激しいフロアーですからね。場所によっては、机にものを積み上げて蛸壺に入り込んでいる人もいますからね」
 「くしょん、ここ人口密度が低いから、風の通りがよすぎるんだよなぁ。秋も終わってそろそろ冬だっていうのに、冷房全開だしね」
 「全自動管理ができる時代なのにいまだにマニュアル設定でイチ(全開)か、ゼロ(停止)かっていう運用ですものね」
 「まあいいや! ハジ行って今日も始めるぞ」

データセンターが机の下に置ける時代だから

 編集部の片隅で議論を始めた今回のテーマは、データセンターの小型化。コンピューターの世界ではあまりにも有名な「ムーアの法則」は半導体の集積密度はどんどん向上し、同じサイズなら超高性能。同じ性能なら超コンパクトになるというもの。速度こそ正義のコンピューターの世界において、大量の情報をものすごい速度で処理できるようになれば、目先の目的がはっきりしなくても大抵の場合はいいことが起こる。なんか面白いことを考える人が出て、すごいことが始まるからである。

ムーアの法則で示された半導体進化の予測図

現在に至るまでの半導体の進化のグラフ

歴代のCPUにおけるトランジスター数の推移

この人が、ムーアの法則で有名なゴードン・ムーア博士

 「コンピューターの性能向上は、あいかわらずものすごい勢いで進んでっからな」
 「ムーアの法則はもともと『LSIのトランジスター数は1年半ぐらいで倍になる』というもので、単純計算すると5年後に10倍以上、10年で100倍以上、15年後には1000倍以上……という感じになりますからね。現在ではチップ上のトランジスター数を向上させる速度には限界があるけど、コンピューターの性能がどんどん向上していく努力目標みたいな感じで使われていますけど」

 「空調の話、出たけどさ、工場なんかだと、ラインにセンサーを張り巡らせて、ネットで集めたその情報を集中管理したり、ビッグデータとか使って解析したりするんでしょ? たとえばLEDのライトとか、切れそうなやつを予測して警告を出したりとか。監視カメラとか温度センサーとか使って、人がいなくても品質管理に必要な環境の調整に使ったりとか。生産性向上に役立てるって聞いたことあるよ」

 「編集部だって記事量産する、工場みたいなもんなんだから、生産性向上のために、そういうことやれよ」
 「ほうれんそう(報告・連絡・相談)すら満足にできる人いないから、無理なんじゃないですかね~。最近にわかに活気付いている“IoT”(Internet of Things)というキーワード。すごく率直に言うと、いろんなものをネットにつなげて、情報を報告させて効果的にそれを活用しましょうって話じゃないですか。
 センサーを使って情報を得て、その情報を元に普通じゃなかったような日用品もインターネットから操作できるようにしてPCやスマホなんかで離れた場所から集中管理しましょうって話ですよね。センサー類をZigbeeみたいな無線技術でゲートウェイっていう機器に接続して、空調や照明とかさまざまな機器を操作しようとするもの。サーバーもクラウドとか、今までだったら専用のサーバールームにラックで置いていたようなものもコンパクトになってきていたりもするので──」
 「難しいこといわれてもわかんねぇよっ!! 夢語れよ」

 「最近だと、“コンパクトデータセンター”みたいなふれこみで、ちっちゃくてかっこいい感じのサーバーが出てきたりしますよ。デルの“VRTX”(バーテックス)っていうんですけど。高性能だけど、コンパクトなので設置場所の自由度が高いし、レイアウト変更の多い工場なんかでも置き場所変えたりとかが簡単にできたりしますし」

 「おっ、メカメカしくて結構そそる外見じゃねぇか」
 「ブレード4枚に、HDD12台(48TB)も載せられるのかぁ」
 「データセンターというと、大掛かりなものを想像しがちですけど、これ1台で200クライアント分のVDI(パソコンのクライアント環境をサーバー上に集約する方法)が動かせるそうです。タワー型のパソコンみたいに机の下において使うなど、置き場所にも神経質にならなくて済むので、バラバラに置いていたPCとかサーバーを小さいオフィスで1台に集約したいといった用途でも便利ですね」

限られた場所で、リッチな経験が可能になる

 「ちっちぇけど、高性能って言うと、夢(妄想)が広がってくるよな」
 「いまはデスクトップぐらいのサイズですけど、性能が上がると同じ性能・容量でランドセルぐらいのサイズになったりとかも可能になるかもしれないですよね。そうすると背負ってサーバーを持ち運ぶみたいな人も出てくるかも」
 「ああ、尾瀬の山小屋に飲み物とか食料運んでくる歩荷みたいな感じでな」(冒頭のイラスト

 「そういうニーズが実際にあるかどうかは分かりませんが、車載して移動できるデータセンターとかあったら、災害発生時などに便利かもしれないですし、縦横に張り巡らせたセンターからリアルタイムに魚群の動きを解析して、適切な漁場を探るマグロ漁船とかもできそうですよね。コンパクトで設置の自由度が高くて、場合によっては移動できるサーバーが高性能化するといろいろ新しいことができるようになるっていうのはあると思いますね。たとえばCEATECみたいな展示会では、農業みたいにいままでITとあんまり縁がなかったような分野でもIoTと組み合わせていろんな可能性があるっていう展示がありました」

CEATECで目にした展示。半導体製造工場の施設で低カリウムレタスなどを栽培。センサー技術を応用した管理で、天候や菌にも左右されず、野菜を効率よく作れるのだそうだ。

 「半導体工場を転用して、レタス作ったりとか、IoTで植物に当てる照明器具の強さを変えたりして、適切な成長速度で、適切な栄養価を持った作物を工場生産するとかだよね。腐らないレタスとかちょっと怖いけどね」
 「こういう分野ではクラウドを応用して──っていうケースも多いんでしょうが、もっと高負荷の作業を限定されたスペースでっていう場合には使う場所にサーバーを置いて(オンプレミスで)というニーズも増えてくるでしょう。3Dのモデルをリアルタイムでレンダリングしながら、なんか見せるとか」
 「スマホやタブレットに話しかけると、言葉が返ってくる音声認識ってクラウドで処理してたりするけど、みんなが話しかける時間になったりすると、急にやり取りが、ツンデレになったりするけど、大勢で一緒にというとやはり限定された範囲でゆとりある処理性能も転送速度もほしいと思えてくる」

時代は掃除機までインターネット、そしてクラウドにつながる時代である。音声認識でツンデレなボイスが聞けるIoTだ。ただしツンデレになるのは、本文で言うようなクラウドの処理能力のせいではなく、商品企画上のものだが。

 「デジタルショーケースみたいに、ARとかVRを使った、製品展示をする事例も増えてきているしね。自動車とか住宅展示場みたいに大掛かりな商品とかだと、実物をそのまま置くっていうのは結構難しいけど、プロジェクションマッピングみたいな技術を組み合わせて、ショウルームに実物大のサイズでドンっと見せちゃうとか」
 「色とか家具の配置とか、カスタマイズした上で、最後にサンプルとして3Dプリンターで何分の1かにしたものを作ってもってかえるとかな」
 「実際に投影しようと思ったら、それなりにスペースが必要ですけど、Oculus RiftみたいなVRのHMDを使えば、漫画喫茶の個室ぐらいの小さいスペースで、一度に何人もの人と商談するみたいなのも可能になりますしね。そうなると扱うデータ量とか、処理能力とか考えると、クラウドじゃなくてローカルで早いデータの転送速度が必要になってくると思います。眼鏡かけちゃえば、隣の人と距離が近くても意外と気にならないですし」
 「俺はHOOTERSみたいなお色気がほしいけどな」
 「めがねかけて、ニヤニヤしながら飲み食いしている集団は気色悪いけどね。」

 「見る角度を観客一人ひとりが自由に変えられる、バーチャルシネマとか、複数の人で楽しむエンターテインメント用途がよりリッチになるといったことができますよね」
 「つまりあれだな。ITの進化はハイパフォーマンスでモビリティーがあって、エンターテインメントで、アグリカルチャーってわけだな」

机の下に100台以上の仮想PCを置ける、
デルのコンパクトデータセンター「PowerEdge VRTX」とは?

 コンセプトは、ずばり“コンパクトデータセンター”だ。

 タワー型筐体(幅31×奥行き73×高さ48.4cm)に、最大4枚のブレードサーバーと、最大48TBの共有ストレージ(3.5インチHDDなら12台、2.5インチHDD/SSDなら25台)を収納できる製品。ラックマウントする際には5Uサイズですべての機能が収まる。また、オフィスにある標準的な机の高さは73cmほど、机の奥行きは65~75cmほどなので、机の下にも置けなくはないサイズだ。これで100台以上のVDIをまわしても問題ないパフォーマンスを持つ点が特徴となる。

 専用のサーバールームに設置することが多い、これまでのブレードサーバーとは異なり、一般的なオフィスにおけるコンパクトさ、静穏性を持ちつつ、高い性能や柔軟性、信頼性などに優れた構成を選べる点が特徴だ。動作音は41dBほど。これは普通のオフィスでささやいている声が聞こえるレベル。電源も110V ACに対応するため、国内でも特別な設備の追加なく導入できる。

前面から4枚のブレードを収納したサーバーノードを抜き差し可能。

 用途としては、これまでオフィス内に、思い思いに立てられていたサーバーを1台の筐体に集約してスッキリと集中管理する用途や、画像や金融関係のトランザクション処理など比較的多くのデータを扱うが、本社やデータセンターから拠点までWANでつなぐと回線費用が高くなったり、逆に低速で不便だったりするような、リモートオフィス向けサーバーなどが想定されている。

PCIe Gen2対応の拡張ボードを8スロット搭載。フルハイト/フルレングスのカードは3基、ロープロファイル/ハーフレングスのカードを5基まで差せる。PCIeスロットやNICは、各サーバーノードに自由に割り当てられる

 本文中でも触れたように、工場内に設置し、各ラインに設置した、センサーネットワークなどで収集した情報を処理するFA(Factory Automation)用のサーバーとしても導入が進んでいる。

背面に4つの冗長電源や6つの冗長ファンなどを装備。電源もツールレスで簡単に着脱可能だ

用語解説

ムーアの法則:米インテル創設者のひとりゴードン・ムーア博士が1965年に提唱した法則。経験値に基づき、半導体の集積密度は毎年およそ2倍程度の割合で高まっており、その割合は当面維持できるとするもの。

ビッグデータ:従来のデータベースシステムでは扱うのが難しい、文字通り巨大なデータ。決まった定義はない。単に量が多いだけではなく、構造や形式に決まりがなく、ソーシャルメディアの投稿内容を即時に保管して解析するなど、リアルタイムな処理が求められることも多い。

データセンター:サーバーやメインフレームなどを設置して運用するために作られた施設。大容量の通信が可能な回線を引き込み、信頼性を高めるため、電源や空調、耐震性などにも特別な配慮が加えられていることが多い。

VDI:Virtual Desktop Infrastructureの略。デスクトップ仮想化などと訳される。サーバー上でVM(Virtual Machine)と呼ばれるパソコンと同じ動作をするソフトをたくさん走らせ、1台のサーバー上で複数のOSを同時に実行できる。これをネットワーク経由で別の端末から呼び出すと、さまざまな端末から自分用のデスクトップ環境を使えるようになる。

IoT:Internet of Things。「モノのインターネット」化などと訳される。PCやネットワーク機器など従来の範囲を逸脱し、家具や家電、文房具などあらゆるものがネットに接続し、状態や情報を交換できる世界をあらわしている。

Zigbee:近距離で無線通信するための規格。距離が短く低速だが、安価で消費電力が少なくできるという特徴がある。リモコンやセンサーなどに利用されることが多い。

ゲートウェイ:異なるルールで通信しているネットワークとネットワークの間をつなぐためのネットワーク機器。

ツンデレ:ツンツンしていたキャラクターが、だんだんデレデレしていく様子。本当は好意を持っているけど、素直に表現できない女性キャラのしぐさを表現する言葉。ただ最近ではデレなくても、ツンデレといわれることが多い。

AR:Augmented Realityの略で、拡張現実などと訳される。モバイル機器のカメラで写した現実の世界の映像の上に情報を表示したり、実際にはない人工的な映像を付加したりする技術。

VR:Virtual Realityの略で、仮想現実などと訳される。コンピューターグラフィックスなどを利用して、人工的に現実味のある世界を生み出す技術。

プロジェクションマッピング:パソコンで作ったCGをプロジェクターなどで映し出し、現実の空間や実際にあるモノにぴったりと重ね合わせる技術。CGで作った物体やキャラクターが現実世界にあるように感じる。

3Dプリンター:3DCGのデータなどをもとに立体(手に取れる物体)を作れる機械。光を当てると固まる、冷やすと固まるなどの特徴を持った樹脂の断面を少しずつ重ねていくことで、立体が作れる。

Oculus Rift:オキュラス・リフトと読む。バーチャルリアリティを体験するために開発された、ヘッドマウントディスプレー。左右それぞれの目に対応した液晶ディスプレーを持ち、頭の動きに合わせて映像を表示する角度を変える機能なども持ち、本物のような世界を体験できる。

HMD:Head Mount Displayの略で、日本語でもヘッドマウントディスプレーなどとそのまま呼ばれることが多い。頭部に装着して使うタイプのディスプレー。Oculus VRの「Oculus Rift」やソニーの「HMZ-T1」などが代表的な製品。

HOOTERS:タンクトップとオレンジのホットパンツを着た女性が接客してくれるアメリカのレストランチェーン店。

編集部のNERDの妄想はまだまだ続く

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