このページの本文へ

変革を続ける30年目のデルを追う 第5回

コンバージドシステムの新しい提案

デルの戦略製品「PowerEdge FX」はなにを目指すのか?

2014年11月13日 06時00分更新

文● 大河原克行

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

11月12日、デルは次世代統合アーキテクチャ「Dell PowerEdge FX」を発表した。Integrated IT Companyを標榜する同社の戦略製品となる位置づけとその狙いをデルの日本法人に聞いた。

既存のPowerEdgeがFXのシャーシに搭載できる

 デル エンタープライズ・ソリューションズ統括本部長・町田栄作氏は、「顧客の投資に対する保護を実現するとともに、標準化、オープン化、自動化といったデルが目指すIntegrated IT Companyを実現する要素を備えた製品。そして、パートナーが扱いたくなる製品である」と位置づける。

 Dell PowerEdge FXの特徴は、ブレードとラックのそれぞれの要素を組み合わせ、ストレージとネットワークを統合した1つの共通モジュラープラットフォームとして提供する点だ。2UエンクロージャのFX2シャーシに収まるように設計された第13世代のPowerEdgeサーバーやストレージ、ネットワークをスレッドを搭載することで、さまざまなワークロードに対応。エンドユーザーは、ビジネスニーズに合わせたインフラの管理、スケーリングなどを行なえるという。

デル エンタープライズ・ソリューションズ統括本部長・町田栄作氏

 デルは、これまでにもコンバージドシステムには取り組んできた経緯がある。2013年には、垂直統合型のアプライアンス製品「Dell Active Infrastructure」を発売。さらに、机の下に収まるコンパクトデータセンターというコンセプトで、「Dell PowerEdge VRTX(バーテックス)」を投入した。

 デル エンタープライズ・ソリューション統括本部エンタープライズビジネス開発部・馬場健太郎部長は、「大規模データセンター向けにはC8000やM1000eといった製品群を用意し、また中堅・中小企業向けの導入およびリモートでの活用領域にはVRTXが最適な製品として、日本でも高い評価を得ている。今回のFXは、この間を埋める製品になるとともに、大規模データセンターまでの領域をカバー。コンバージドシステムの新たな提案を行なうことになる」とする。

 FXが対象とする領域はかなり幅広いと、デルでは考えている。「Windows Server 2003からの移行に伴う、仮想化やプライベートクラウドとしての活用のほか、ビッグデータ解析、既存資産からの置き換えなどを想定している。VDIや機械学習といった分野などにも活用できる」とする。また、注目している分野のひとつにHPCがある。「VRTXでもHPC分野で活用するといった動きが見られた。これは当初は想定していなかった領域だが、小規模の研究部門などでの導入が行なわれた。FXでもその分野は重要な市場になる」(デル・馬場部長)とする。

PowerEdge FXの3つの特徴

 Dell PowerEdge FXの最大の特徴は、その柔軟性だろう。「エンドユーザーにとって、プライベートクラウドの設計に際して課題となっているのが、数年後を見据えた設計が求められている点。だが、その予測が難しいのが実態である。FXでは、当初設計したものとワークロードの比重が変わったとしても、それにあわせてサーバーやストレージを導入できる。スモールスタートができるため、初期投資も抑えることができる」とする。

 そして、これはパートナーにとっても重要な意味を持つ。「VRTXは、固定された機能として提供し、導入の敷居を下げたのが特徴であったが、FXの特徴は様々な組み合わせが可能であるという点。むしろ、SIerの提案力が生きる領域。そこにパートナーの特性が発揮できる」(デルの町田統括本部長)。

 また、エコシステムにより、さまざまなワークロードの組み合わせも提案できる点も見逃せない。パートナーが扱いたくなる製品という理由はそこにある。

 2つめの特徴は、既存の投資資産の保護が行なえるという点だ。

 デルの馬場部長は、「FXのコンセプトは新しいが、使っているテクノロジーは、従来型の技術を踏襲している」と前置きし、「FXでは、管理コントローラにCMC(Chassis Management Controller)を採用している。これは、従来はiDRACと同じ管理機能を持つものであり、ラックサーバーやブレードサーバー、VRTXと同じ直感的操作で管理ができる」とする。

U2の統合型シャーシ「PowerEdge FX2 エンクロージャ」

 また、「FXにおいては、ASMを使うことを前提に開発しており、既存環境を持っているユーザーにとっては別の製品を使うという感覚はない。ファームウェアやドライバーも共通化し、ハードディスク、ネットワークードが共有化されるようにデザインされている」(デル エンタープライズソリューショングループエンタープライズテクノロジスト APJの日比野正慶氏)という。

 そして、3つめにはVRTXの実績が、FXの販売にも弾みをつけるとみられる点だ。

 VRTXはミドルサイズのコンバージドシステムとして、企業の支店やリモートオフィスなどにも活用。日本の中堅・中小企業への導入も促進。「日本のユーザーの規模感にあった最適な製品として、また市場競争力が高い製品として、大きな成果をあげている」(デル・馬場部長)というように、デルは、VRTXによって、コンバージドシステムの評価を一気に高めてきた。

 「過去2年間、VRTXに取り組んできた経験とともに、市場に対しては、VRTXで培われた技術を利用できる安心感を、FXでも提供できる」とする。VRTXの実績がFXのスタートを加速することにつながるとみている。

Integrated IT Companyを象徴する製品

 11月上旬に、米テキサス州オースティンで開催された「Dell World 2014」で、デルは、「Integrated IT Company」を標榜してみせた。

米デルのマイケル・デル会長兼CEO

 町田統括本部長は、「デルはこれまでに180億ドル(約2兆円)を投資し、数々の企業を買収することで、ソリューションポートフォリオを拡大してきた。これにより、モバイル、セキュリティ、ビッグデータ、クラウドといった4つのトレンドに対応できる体制を整えている。これが、Integrated IT Companyの根底にある」とし、「FXは、買収したストレージやネットワーク製品、ソフトウェアを組み合わせることで実現できた製品でもある」と語る。

 ストレージのCompellentや、ストレージソリューションである「FluidCashe」なども、FXの柔軟性の実現に貢献。「NVMeのフラッシュストレージの搭載や、アプリケーションの性能を向上させるFluidCasheなどにより、サーバーサイドでの高速化も実現している」(デル・馬場部長)

 いわば、FXは、デルが新たに標榜したIntegrated IT Companyを象徴する製品だといえる。デルは、FXが市場に与えるインパクトはきわめて大きいと捉えている。日本市場において、これからどんな反応が生まれるのだろうか。

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事