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MARKETING 書かなきゃいけない人のためのWebコピーライティング教室 ― 第3回

3限目:「看板」から学ぶ「見出し」の基本設計とは!?

2014年11月17日 13時00分更新

森田哲生/Rockaku

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イラスト:寺井麻美

紙媒体とWebのちがい……「読まれ方」の構造的な差

 「見出し」のつくり方が今回のテーマです。一口に「見出し」といっても、広告やメルマガの中にあるテキストの小見出し、リスティング広告の見出し、ニュースサイトの見出し、それからポータル上に表示されるリンクテキストなど多岐にわたりますが、ここでは「本文が後に続くもの=本文を読ませるための短いコピー」をまとめて「見出し」として定義します。ではさっそく、見出しづくりの基本的なメソッドから触れていきましょう……とはならないのがこの教室であることは、みなさんもそろそろお気づきのはず。まずは、「その手前にある余談」から入って行きましょう。

 僕はセミナーなんかで余談を挟みすぎて持ち時間をパンクさせがちなので、担当者からは「余談少なめで」と釘を刺される講師なんですが、こうした余談を通じて、対話する相手とイメージや世界観を共有することは、セミナーであっても、文章であっても、とても大切なプロセスです。まずはひと笑いしながら軽くお付き合いください。

 以上、言い訳完了。張り切って余談をはじめましょう! Webサイトやメディア、広告制作の現場ではよく論じられますが、「紙媒体とWebのちがいってなに?」という問いに対して、みなさんはどんな答えをお持ちでしょうか? 正解はいくらでもあるわけですが、Webコピーライティングの観点から言えば、「読まれ方の構造」にあります。

 書籍、雑誌、カタログ、チラシ、パンフレット……「紙媒体」と言っても多種多様ですが、基本的に誌面(紙面)とページ構成で構築されたクローズドな世界です。一度手にとって読み出せば、読み終わるまでその媒体の中に視線を留めておける、という性質があります。もちろん、雑誌の中には読み物と広告が混在したりしますが、情報の質や量は、ある程度制作者側で制御できます。

 これに対してWebは、読まれる状況がちょっと異なります。画面上、所狭しと広告バナーや外部リンクが張られ、あるいはブラウザにブックマークが残されていたりします。1つのサイトから情報を読むことが「書籍や雑誌を読む行為のデジタル版」くらいに思われがちですが、実は「常にものすごい量の情報に囲まれながら読んでいる」+「他媒体への移動が自由自在」という、紙媒体とは異質な情報環境があるのです。

 そんな特有な情報環境の中でキーとなってくるパーツがあります。それが今回のテーマである「見出し」です(ほら、ちゃんと余談から本題に戻ってきましたよ)。

「見出し」は「看板」である

 例えば歌舞伎町とか、渋谷のセンター街の風景を想い描いてください。多種多様な看板がひしめいていて、訪れる人を誘惑しています。ちょっとコーヒーを飲みながら遅れ気味の原稿を書こうとしていたはずなのに、気がついたら焼肉を食べている……ことはよくあるはずです(よくあったら困りますが)。

 これって、情報があふれているWebとちょっと似ています。「見出し」は、Webという巨大な歓楽街の中でユーザーを導く「看板」です。「喫茶店を探している人間を適切に喫茶店に導くこと」はもちろんですが、「喫茶店を探していた人間を焼き肉店に引き込んでしまうこと」さえも、「看板」たる「見出し」の力次第というわけです。

 さあ、もうおわかりですね? 1限目で「料理」、2限目で「魔法」ときましたが、3限目の見立ては「看板」です。今回はみなさんと優秀な「看板職人」を目指してみたいと思います。

「見出し」≠「読み出し」……視覚的な言葉を立てるべし

 「見出し」を書く上で、もっとも注意していただきたい大前提。それは、「見出し」が「読み出し」ではないことです。Webの世界にはファーストビューという言葉がありますが、Web上のテキストやコンテンツにおけるファーストビューを担うモノこそが「見出し」です。リード(Read)じゃありません。ビュー(View)なんです。視覚的にキャッチさせ、直感的に興味や関係の有無をジャッジする基準をつくること。そのお店に入ってみようかな?=読んでみようかな? と思わせることが「看板」たる「見出し」の機能です。リンク先に、本文に、どんな情報があるのかを伝え、かつ、「読みたい」「知りたい」と思わせる言葉をどうつくるか。その基礎理論を解説していきましょう。

看板の「材料」を調達する方法

 「見出し」という看板を立てるには、的確な材料探しが必要です。さてさて、材料はどこにあるのでしょうか。答えは簡単。見出しをつける本文や広告スペース、あるいは商品資料など、つまりは情報の本体の中にあります。まずはその本体の中から、具体的なキーワードを抽出していきましょう。この部分は1限目でご紹介したカレーのレシピのワークショップの【下ごしらえ_その3】を思い出していただければよいと思います(と、このようにWeb上のテキストは読者を他のページに簡単に飛ばせてしまうわけなんですが、みなさんはこのページに戻ってきてくださいね……)。

合言葉は「書く前に置く」 見出しづくりの基本ワークフロー

1.リスト化

 材料調達の流れから、「見出し」づくりの基本フローに入っていきましょう。いきなり見出しとなる文章を書こうとはぜずに、まずは引きになる数字、商品名、人名、企業名、機能性、期間などの具体的なキーワード=材料を探し出してリスト化します。カレーのワークショップ【下ごしらえ_その4】で紹介している具体性の出し方も参考にしてください。

2.ピックアップ

 材料は多いほどもちろんいいですが、すべてを盛り込むと要件がぼやけ、「看板」の機能は低下してしまいます。そこで、材料の中でも、より関心を引きそうなものだけを4〜6つ程度に絞ってピックアップします。特に数字や、「◎◎限定」といった独自性と具体性のある情報、読者の好奇心をくすぐるキーワードは要チェックです。

3.配置

 絞り込んだらいったん横一列に配置して客観的に眺めてみましょう。まだ文章化しちゃダメですよ。くどいようですが、「見出し」は見られるものです。最初に目に触れるべき材料=キーワードはなんなのかを考えます。Yahoo!トピックスの14文字がわかりやすい例ですが、「見出し」は概ね10〜20文字程度が適切な長さ。キーワードを配置した時点で、入れたい情報が多いのか少ないのかもわかるはずです。どちらかと言えば「多すぎる」状況に陥る可能性が高いので、読者の関心を高める要素は価格なのか? 限定性なのか? 品質なのか? をよく考えて優先順位を決め、順位が低いものは大胆に削除していきます。そうです。時には捨てる勇気も重要なのです。

4.連結

 材料の優先度に従って、最後に接続詞や感嘆符で連結させ、文章化します。 

 合言葉は「書く前に置く」。これ、テストに出ます(テストをやる予定はありませんが)。美しい文章を書こうとはぜずに、部品としてのキーワードがきちんと組み合わさって機能するように組み立てていきましょう。最後に読み返してみて「日本語としておかしくないか?」と、「本当に続きが読みたくなるかどうか?」の2点をチェックしましょう。不安ならいくつかパターンをつくり、同僚や家族に見せてみるのもアリです。

「具体性」と「謎」のバランス

 Webコンテンツ、とりわけ記事系のコンテンツや広告を読む動機の成分には、「課題解決」と「好奇心」が多めに含まれています。ここで重要になってくるのは、それに応える「具体性」「謎」のバランスです。

 「見出し=看板」とするなら、本体の読んで欲しい情報が「お店」に当たるわけですが、看板にびっしりとお店のすべてが書いてあっても、情報過多で何が言いたいのかぼやけてしまい、あまりお店に入る気がしませんよね。逆に「うどんうらない」と、謎の言葉だけが書いてあっても怖くて扉を開ける勇気は持てません。つまり、「見出し」では言いたいことすべてを見せるのではなく、引きになるキーワードを効果的に選んで、「具体性」と「謎」のバランスを演出し、読者の「課題解決」や「好奇心」といった欲求を刺激することが必要になってきます。この構造を公式に置き換えると下記のようになります。

言葉の「インパクト」をアーティスティックにデザインする

 この連載の想定読者であるところの「書かなきゃいけない人」であるみなさんなら、一度くらいは「もっとインパクトのある表現で!」という要求に苦慮した経験があるのではないでしょうか? なぜこの要求が厄介なのかと言えば、「インパクトがある」という極めて感覚的な結果だけを求められていて、その結果に至るプロセスが明確ではないからだと思います。

 みなさんはお笑いや演劇を見たとき、「シュールだねえ」という感想を持つことがありませんか? この「シュール」という言葉の起源はフランスの文芸運動である「シュールレアリスム」から生まれたものなんですが、ちょっと掘り下げて行くと、「インパクト」が生まれるプロセスや構造が明解になってきます。

 僕はこの話をするとき、いつも、シュールレアリスム運動に多大なる影響を与えたロートレアモン伯爵の言葉を引用します。

 ええ、意味不明です。ここで彼の文学性や芸術性を掘り下げることはしませんが、彼が「美しい」とした「シュールな情景」の構成要素とは、「現実では出会いがたい存在同士の衝突」から生まれていることは何となくわかるはずです。

 この「衝突」の構造をちょっと強引に解釈すると、我々が見出しやキャッチコピーで求められる「インパクト」のつくり方が見えてくるはずです。もう既に頻出していますが、僕は言葉やコピーに対して「書く」という言葉ではなく、「設計」とか「デザイン」という表現を意識的に用いていますよね? これもまた、ロートレアモン伯爵の教えに従った「衝突」の手法です。

 本来、ベタに表現するなら言葉やコピーは「書く」となります。しかし、一般的にあまり使われていない「設計」や「デザイン」をぶつけることで、インパクトが生まれ、ひいては記事を読む動機や、読者の好奇心を刺激する謎を効果的につくり出せるようになるんです。

 シュールさ≒インパクトと考えたときのポイントは、衝突させる言葉同士の距離感です。もちろん、何でもかんでもぶつければいいってことじゃないですが、その構造については上の図を参照してもらうと、もっとよくわかると思います。イメージが遠くにある言葉を見つけ出してぶつける。遠いほど大きな音がする。それがコピーのインパクトの強弱を計る代表的な基準のひとつなのです。

まとめ!よい看板=「見出し」をつくるための5箇条

 さて、歓楽街からロートレアモンまで、話が方々へ散ってしまった感もあるので、最後にきちんとまとめておきましょう。

 この5つを踏まえただけで、みなさんが掲げる「見出し」という「看板」の機能は、グッとランクアップするはずです。ぜひ、実務の中で試してみてください。

それではごきげんよう。さようなら。

著者:森田哲生(もりたてつお)

著者写真

1978年生まれ/多摩美術大学卒業後、編集プロダクション、デザイン会社勤務を経て2007年に独立し、コピーライター事務所Rockaku(ろっかく)を創業。広告代理店やメーカー、制作会社など多彩なパートナーとともに、コピーワーク、ネーミング、情報設計などを手がける。また、宣伝会議、OpenCU、CSS Nite、スクー、その他企業研修などでコピーライティングの講義を多数担当し、それなりにほめられているらしい。


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