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フジテレビのインターネット放送はなぜクラウド採用か?

Azureを使って1.5ヶ月で構築した有料動画配信サービスの舞台裏

2014年11月11日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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11月10日、日本マイクロソフトはMicrosoft Azureを採用したフジテレビジョンの有料動画配信サービス「フジテレビNEXTsmart」の導入事例を紹介するプレスイベントを披露した。イベントでは、フジテレビジョンやシステムを構築したEVC、日本マイクロソフトの担当者が舞台裏を語った。

今すぐ観られる有料放送「フジテレビNEXTsmart」

 2014年3月からスタートした「フジテレビNEXTsmart」は、「F1グランプリ」や「ドイツブンデスリーガ」、音楽ライブやオリジナルドラマ、CS放送「フジテレビNEXTライブ・プレミアム」などをインターネット上で視聴できる有料チャンネル。オンデマンド型ではなく、24時間番組編成を行なっているリアルタイム放送がベースで、生放送後の見逃し配信を提供しているのがメリットとなる。

フジテレビNEXTsmartの概要

 また、インターネットから簡単に申し込みと視聴できるのも特徴。フジテレビジョンの窪田氏は、ドイツブンデスリーガの中継で日本人がスタメンに入ったことを知った視聴者が、開始30分までの間でフジテレビNEXTsmart一気に加入したという事例を紹介。「専用チューナーやアンテナが不要で、TVが家にないお客様もいる。そういったお客様の今すぐ観たいというニーズに応えられる」と語った。また、違法アップロードが多いインターネットの中で“本物”をアップすることにも意義があるという。

フジテレビジョン 総合開発局 メディア開発センター ペイTV事業部 部長 窪田正利氏

大量アクセスに不安!Azureを使った動画配信

 さて、今回は10月1日からの「ニコニコチャンネル」(ドワンゴ)での配信を実現するのにあわせて、フジテレビNEXTsmartでの配信をMicrosoft Azureで開始。数多くのアクセスやディストリビュートに対応しつつ、安定的な配信を実現しているという。

Azureをベースにした配信をスタート

 Microsoft Azureを採用した背景は、やはり拡張性だ。「既存の放送は放送波を流せばよいが、やはりストリーミングはお客様に1本ずつ線を渡しているようなもの。当然、人気コンテンツになるとアクセスが一気に増える」といった不安があった。スポーツ中継も多く、そもそも有料サービスなので、やはり途切れないことは重要だったという。

 これを実現するのが、Microsoft Azureのようなクラウド。従量課金で低コストでの配信が可能なほか、しかも多くのアクセスに耐えうる安定した配信が可能になるという。ハードウェアの管理が不要で、短期間で基盤の構成や変更が可能なのも大きかった。

 こうしたフジテレビのニーズを受け、配信システムを構築したのは、映像配信に強みを持つEVCだ。動画管理・プラットフォーム「Bizlat VoD」をベースにして、予備校の授業配信や企業の動画サイト、自治体の議会中継のほか、最近ではパ・リーグのマルチデバイス向け有料ライブも手がけている。独自の「Active Client Switch」によって、クライアント側ではなく、配信事業者側からのストリーム切り替えを可能にすることで、24時間IPサイマル放送を行なえるという。

1.5ヶ月の構築!高い可用性とマルチデバイスのセキュア通信

 今回はMicrosoft Azure Media Servicesで構築したBizlat VoDにより、わずか1.5ヶ月で有料動画配信システムを構築。東西の2つのデータセンターによって高い可用性を実現するほか、マルチデバイスに対するセキュアな配信を実現したという。

Microsoft Azure Media Servicesが実現したこと

 日本マイクロソフトのクラウド&ソリューションビジネス統括本部 Azureプリンシパル ソリューションスペシャリスト 飯田昌康氏は、TV、PC、モバイル、タブレットの4種類のデバイスを持っていた方が視聴時間が長いというNBC Sports Groupの統計を紹介する。

TV、PC、モバイル、タブレットの4種類のデバイスを持っていた方が視聴時間が長い

 こうした中、FIFA World Cup 2014ほか数々の大規模配信でも実績があり、動画配信に必要なサービスをコンポーネントとして利用できるMicrosoft Azure Media Servicesは放送局にとっても利用価値が高いとアピールした。

 フジテレビとしては、今後クラウドを前提として、追っかけ配信やまだら配信、4Kなどの高品質配信などへのチャレンジも視野に入れている。「こうしたチャレンジで有料チャンネルが活性化する可能性も出てくる。まだまだ先のアイデアも多いが、いろいろな可能性を秘めている」と窪田氏は抱負を語る。

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