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8時間寝るために努力すれば、売上は伸びる=吉越浩一郎氏

2014年11月12日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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 オンラインノートのEvernoteが10日、渋谷ヒカリエでビジネスマン向けイベント「Evernote Work Day」を開催。「お〜い、お茶」伊藤園との協業、日経新聞電子版との資本業務提携の発表とともに、吉越事務所の吉越浩一郎代表を講師に招き、セミナーを開いた。

 トリンプインターナショナル日本法人代表として19期連続の増収増益を実現、売上高を1998年当時の100億円台から524億円まで5倍以上に伸ばした吉越氏。直営店モデル導入と共に「早朝会議」「がんばるタイム」など社内制度を導入、社員の生産性を高めたことでも知られている。

 「重要なところは残業ゼロ、デッドライン。その2つを導入すれば、ほぼ勝ちが見えてくる」と吉越氏は力強く断言する。


「ツルハシ仕事術」をやめなさい

 吉越氏はプロセスに力を入れる日本の仕事を、皮肉をこめて「ツルハシ仕事術」と呼んでいる。24時間ツルハシを振り回すのがいい仕事かといえば、決してそうではない。

 「仕事は本来9時に始まり、同じような効率を求めて17時まで働くもの。なら、夕方の17時に頭が回るわけはない。睡眠時間をとる努力を最大限してほしい。8時間睡眠と設定すると、仕事は時間内に終えなければならないというのが分かるはず」

 仕事というのはゲームと同じだと吉越氏。自分でゲームを作る必要があり、ゲームにハマりこんではいけない。つねに仕事は「脇に構えて」見るものだと述べる。

 仕事の対極とは何か。日本人は「休み」だと答える。仕事に「体力」を使っているためだと吉越氏。一方、ヨーロッパ人は「遊び」と答える。仕事には「能力」を使い、遊びに体力を残している。

 「サラリーマンの一生も同じ。60歳になるまでにそれなりのお金を稼いで退職し、本来の人生、『本生』(ほんせい)を楽しめなければいけない。日本の場合は『余生』余った人生となる。週末にどんな過ごし方をしているかと同じ質問になる」

 吉越氏の奥さまはフランス人。夜遅くに変えると「何してきたの!」と怒られる、「日本人は家庭を作ることを知らない」とグチられると吉越氏。「日本人は仕事にのめりこんで一生懸命やるが、仕事はゲーム。仕事イコール人生ではない」


部下に権限を与えて締切を守らせなさい

 しかしゲームであっても勝負は勝負。仕事では絶対に負けてはいけない。

 それではいかに仕事をするかというと、部下に権限を与えることだ。報告・連絡・相談はさせない。部下に課題をどう解決するかを聞いて、解決策に納得できたら、仕事を放り返してすべてをまかせる。一任を行う決定において重要なのは、情報を徹底的に共有することだという。

 吉越氏は全社員を参加させる8時半からの「早朝会議」を導入。会議の場で徹底的に情報を共有し、オープンにしていた。業務効率を上げたいなら「隠すのがいちばんまずい、ぜんぶオープンじゃないと会社は回っていかない」と吉越氏。

 「同じ情報を持てば、同じ判断に至る。それがキー」

 吉越氏自身、秘書とアシスタントを雇い、自分宛てのメールにすべて目を通し、部外秘社外秘の情報以外はすべて聞かれたら答えるよう言いつけていたそうだ。

 もう1つ大事なのはデッドライン(締め切り)だ。

 すべての仕事に日付を決めて、言いだした人が最後まで追いかける。「課題を解決するため、この施策を1週間後までに打つ。どの部署にどんな影響が出るが、それはこう解決する」と部下に解決策を考えさせ、行動させることで学ばせる。

 吉越氏は社員教育を「習育」と呼んでいる。上司が教えることはできない。部下に責任を与え、学ぶ場を与えれば、自分から習っていく。

 「『社内に活気がある会社』は危ない」と吉越氏。部下には権限を与えて個室をあてがい、静かな環境で集中して仕事をさせるべきだと考える。一方、役員クラスは全員を小さな部屋に入れて、各部署の情報を共有させるのが理想的な会社の姿だとする。


経営計画なんて作る必要はない

 仕事は「緊急度が高い」「重要度が高い」仕事に分かれるが、通常、緊急度の高い仕事に追いやられて重要度の高い仕事は先送りにされがちだ。上司がとくにフォローにまわり、締切を強く設定すべきは「重要度が高い」仕事だという。

 「残業をしてはいけない」「締切は守らなければならない」という二重のルールに従うと、部下は仕事の効率化を考える。IT化やマニュアル化による時間短縮に成功すると、今度は空いた時間を「重要度が高い仕事」に割り振れるようになる。

 「会社はスピード。単に早くしろで終わることはない。デッドラインを前倒しすること。ノー残業で仕事の密度を濃くすることが大事」

 会議では締切設定にもとづき、1議題あたり2分で結論を出し、次々と課題を解決させていたという。

 「決断なんてしている会社はダメ。どんどん結論を出さなければならない。バグがあったら直すだけ。バグを100%直そうとするから遅くなる。問題が出たら大変だからと判断を遅らせてしまう。計画はもっと単純にやらなければいけない」

 正しい判断は6割程度で充分だと吉越氏。走りながらでも判断できる段階で決めて、先に進んだほうが会社にとっての利益になると考える。


成功するまでやればかならず成功する

 吉越氏のモットーは「成功するまでやればかならず成功する」だ。

 大事にしているのは「TTP」、ゼロから作るのではなく成功したアイデアを「徹底的にパクる」こと。同じ仕事術を導入しても、成功できる秘訣は最後までやり抜いたことだったと語る。

 大体の企業において「PDCA」のAは「アクションではなく諦めるのAではないか」と会場に笑いを呼んだ吉越氏。重要なのはアイデアではなく実行だ。残業ゼロ、締切設定。結果がついてくるまで信じた仕事をやりつづけるのが「吉越流」だ。


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