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平井社長の苦悩をセグメント情報で読み解く

エクスペリアに賭けたソニーの判断は凡庸だったか?

2014年11月11日 07時00分更新

アスキークラウド書籍編集部

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 2014年度の連結決算が2300億円の赤字見込み。2年連続の赤字が必至の平井社長は、なぜエレクトロニクス事業の復活を実現できないのか。ソニーの経営指標を事業別に眺めると、その苦悩が外野からも垣間見える。

 ソニーの本業として思い浮かぶのは、「ブラビア」などのAV機器事業だ。だが、2013年度の連結決算によれば、ソニーで最大の事業はエクスペリア、バイオなどの携帯機器を含む「モバイル・プロダクツ&コミュニケーション」部門の約1兆6301億円(2013年度、以下同じ)だった。ブラビア、ウォークマンなどのAV機器を含む「ホームエンタテインメント&サウンド」部門の売上高は1兆1686億円。売上高で見ると、今のソニーは携帯電話の会社なのだ。

 一方、営業利益で見ると筆頭は「金融」部門の約1703億円。売上高で最大の「モバイル・プロダクツ&コミュニケーション」部門は約750億円の営業赤字だ。エレクトロニクス復活の鍵は、売上でも赤字額も最大の「モバイル・プロダクツ&コミュニケーション」部門を立て直すこと、というのは簡単な算数でしかない。しかも、モバイル部門は2012年度の売上高約1兆2576億円から約29.6%伸ばしており、切り離されたPC事業を別にすれば、黒字だった。「2014年はエクスペリアで生き延びる。そのために赤字のバイオは売却だ」と判断するのはもっともだったわけだ。

 非常に合理的に思えるが「最大の事業が赤字でも、そのうち二桁成長している部分を取り出して次年度に成長させる」という判断は高度でも創造的でもない。誰でもできる簡単な判断を、高い報酬を得ている役員がやっていないか。とはいえ、従業員数約14万人、総売上高が約8兆円の大企業のトップが凡庸なはずはない。合理的で大胆な決断を妨げている原因が何かあるはずだ。

ソニーのセグメント情報

 その理由は、利益を生まない部門の人員が多すぎることだ。ソニーは、映画、音楽、金融、その他(ゲームの一部含む)の各部門の期末従業員数を公開している。一人当たりの売上高は、映画部門が約1億1522万円(7200人)、音楽部門が約7512万円(6700人)、金融部門が約1億1692万円(8500人)、その他部門が約6394万円(9300人)。4部門の売上高は合計で約2兆9213億円、従業員数は3万1700人。一方、4部門以外のおおむねエレクトロニクス事業といえる大半の約10万9200人の一人当たりの売上高は約4866万円。平均年収885万円の高給取りが、一人当たり4866万円しか売り上げていない

 「エクスペリアに賭ける」という平井社長の判断は実は非合理で高度な判断なのだ。10万人以上の従業員を整理する事態になれば、ソニーブランドにキズがつくだけでなく、部品等の供給元にも深刻な影響をもたらす。「ものづくり」という日本の神話は単なる昔話になる。余りに影響が大きく、合理的に判断すれば済む話ではない、というのが平井社長ら経営陣の本音ではないか。

 このように、セグメント情報は企業の実態を読み解くのに欠かせない。全体だけではなく部分も読むことで、ニュースの意味がより深く理解できる。アスキー・メディアワークスでは、セグメント情報に特化した財務諸表の入門書『「強い会社」はセグメント情報で見抜きなさい 「ソニーは金融業」「TBSは不動産業」――財務諸表で読み解く各社のプラチナ事業』を11月7日に刊行した

「強い会社」はセグメント情報で見抜きなさい
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長谷川正人 著

  • 定価:1,728円(本体1,600円)
  • 発売日:2014年11月7日
  • 形態:B6変型 (258ページ)
  • ISBN:978-4-04-866371-7
  • 発行:アスキー・メディアワークス
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