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人工衛星太陽電池パネルなど、多種多様な工業製品に応用できるかもしれない生物進化の複雑さ

東大、昆虫界で最も精緻な「ハネカクシ」翅折りたたみ方を解明 -工学的応用の可能性も-

2014年11月07日 17時29分更新

文● 行正和義

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 オオアバタウミベハネカクシ(体長6mm)。Aは後翅を閉じた状態、Bは後翅を広げた状態、Cは収納状態の後翅(鞘翅を外したところ) (提供:丸山宗利九州大学助教)

 東京大学は11月4日、昆虫界で“最難”と言われるハネカクシの翅の折りたたみ方を解明したと発表した。

 ハネカクシは体長1mm~数cmほどの小型の甲虫で、甲虫類の中では15%を占めるほど多くの種類が世界中に生息する。ハネカクシの名前のとおり、翅は外鞘の内側にきれいにたたみ込み、瞬時に展開して飛ぶことができる。

 翅の折りたたみ方はこれまで詳細が解明されていなかったが、東京大学生産技術研究所では九州大学総合研究博物館の協力の下、ハネカクシの中でも飛ぶのが得意なオオアバタウミベハネカクシ(体長6mm)の翅の折り畳みと展開を1秒500コマのハイスピードカメラで撮影して解析した。

ハネカクシの翅の折りたたみ動作。上:左右の翅を重ねた後で、柔軟な腹部を使って2枚同時に折り畳む/下:左右どちらからでも翅を折りたたむことができる(パターンは入れ替わる)

 同じ甲虫のカブトムシなどでは左右の翅を折りたたんで重ねるが、ハネカクシでは左右の翅を最初に重ねたのちに2枚同時に折りたたみ、腹部を動かして鞘翅の下に後翅を折り込んで収納する。折りたたみパターンは左右非対称だが、左右どちらからでも折りたたむことができ、その際は折りたたむパターンは入れ替わる。

 複雑な折りたたみ機構を持つにもかかわらず一瞬で展開し、毎秒20~100回もの羽ばたきに耐える剛性・強度を持つことは工学的観点からも驚くべき部分が多い。折りたたみ方に加えてどのような材料・構造・幾何学で実現されているのかを研究することは、宇宙空間での太陽電池パネル構造をはじめ、雨傘や扇子などの日用品に至るまで幅広い応用が期待されるという。

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