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グリー、動画広告で王座狙う スマホでテレビCM

2014年11月07日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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 グリー子会社のグロッサム(Glossom)が4日、米動画広告大手アドコロニー(AdColony)の日本国内での配信ライセンス取得を発表した。来年1月から動画広告の提供を開始する。アプリを中心に動画アドネットワークを構成する計画。技術を武器に、ゲーム広告だけでなく自動車や飲食のようなマス広告も取りに行く構えだ。

 アドコロニーは2010年から動画広告を手がけ、米モバイル広告事業者で3位の上位企業。強みは高画質な広告動画の配信技術。動画の読み込み時間は他社の9.41秒に対して、0.13秒。40倍以上も高速だ。テレビやパソコン向けのCMを大幅に劣化させることなくスマートフォンに配信できる。

 アドコロニーはもともとゲームアプリ開発会社として2008年に創業した企業だが、収益化のために開発した動画広告システムが商売道具となり、以降は広告会社として運営している。

 アドコロニーの売上規模は年間1億ドル超、2010年からの3年間で約360%成長した。モバイルゲーム会社に加え自動車や飲食のような大手広告主も抱え、出稿金額はゲーム:大手でほぼ半々。大手の出稿媒体には、ロサンザルスタイムスなど大手メディアのニュースアプリも含まれている。

 グリーはもともと米子会社グリーインターナショナルで自社のゲーム6本にアドコロニーの広告を導入し、ゲーム1本につき最大で月間約700万円、全体では年間で億単位の売上を得た経験がある。

 調査によれば、今後4年間で動画広告市場は世界で1兆円規模、日本国内では同じく640億円規模に伸びると見られている。YouTubeやFacebookが日米ともに動画広告では先行するが、グロッサムはアドコロニーを通じて両者を追い落とす意図はなく、あくまで動画広告からの流し込み先として考えているという。

 動画広告はスマートフォンでの表示速度の問題から、ブラウザーベースのオンラインメディアではなく、スマホアプリへの出稿が多くなる。従来のアプリ広告市場はアプリ市場全体の傾向からゲームが主体となるため、大手企業を抱えた広告主は出稿先となるゲーム以外のアプリを探している状態だ。

 日本国内では 「Antenna」が同じくアプリ動画広告を手がけるアップベイダー社の技術を導入している。グリーはニュースアプリ「SmartNews」とも資本提携関係にある。今回の動画アドネットワーク構想は彼らのようなニュース・ビジネスアプリの収益化を助け、成長を促すエンジンにもなりそうだ。

 なおグリーはプラットホーム事業をウェブブラウザーベースからネイティブアプリベースに移すべく、他企業とゲームの合弁子会社を設立するなど対策を講じている。動画アドネットワークは、アプリ収益化のトレンドを先導する形でエコシステムの移管をはかる「ネイティブシフト」の一環とも位置付けられるだろう。


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