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ヤマハ謹製“音のビーム”でヘイグス粒子砲が唸る!

シドニアの騎士5.1chをサウンドバー「YSP-2500」で聴いた

2014年11月14日 11時00分更新

文● ASCII.jp編集部 撮影●篠原孝志(パシャ)

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(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

部屋の環境に合わせて最適な音響を実現する
インテリビームを搭載

編集者A 「YSP-2500のサラウンドがリアルなのには驚きました。ただ、壁の反射で前後左右の音を生み出している仕組みということは、左右の壁の距離とかも正しく測って置かないとダメってこと? それだと今の我が家に置くのは難しいなあ」

編集者B 「そのへんは心配無用。ちょうどいいので、ちょっと視聴を中断して音響調整の話をしよう。YSP-2500では、設置時に付属のマイクを使って室内を音響測定するんだ。その結果に合わせてYSP-2500側が自動的に最適な音場に調整してくれるので、左右の壁の距離などはあまり気にする必要がない」

 ここで、編集者Bがインテリビームによる自動音場調整を実演。付属のマイクを本体に接続し、視聴位置にマイクをセットする。こうした自動音場補正はAVアンプなどにも備わっているが、YSP-2500の場合は壁の反射を利用するため、AVアンプとは測定も異なっている。

 このとき便利なのが、座ったときの耳の位置にマイクを固定するためのダンボール製簡易スタンドが付属していること。一般的にはカメラの三脚などを利用するのだが、三脚がない人でもきちんと測定できるわけだ。

インテリビームで測定中。椅子の座面に簡易スタンドを立てている状態 (C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 測定では、各種のテスト信号で部屋の残響特性や周波数特性を測るわけだが、これに加えてインテリビームでは左右と後ろの壁との距離や反射による特性を測定する。実際の測定では不要な音を立てるなど測定の邪魔にならないよう部屋の外に出るのがセオリーだが、今回は測定の様子を見てみることにする。

 ザーっというノイズがぐるりと部屋を一周しているのがわかるはず。これは音のビームをさまざまな方向に反射させ、良好な反射位置が得られる場所を探しているのだ。この結果から、5.1chの適正な位置から音を聞かせて、最適なサラウンド空間を再現できるようになる。

編集者A 「本当に音のビームを飛ばしている様子がわかるのは面白いですね」

編集者B 「これを行なうことで、左右の壁の距離が異なっていたり、片側が普通の壁で、反対側は窓というような環境でも、適正なサラウンドが再現できるんだ。また、壁の材質によっては高音が吸収されやすかったり、逆に高音がきつくなることもあるけど、こうした周波数特性の違いまで調整するというから驚きだ」

編集者A 「新居では、リビングの壁の一方に寄る形でテレビを置いているんですが、こんな補正機能があるなら心配はなさそうです」

編集者B 「またインテリビームによる自動補正に加えて、設定メニューから手動で微調整することもできる。実際の聴こえ方を自分の耳で確認しながら微調整すれば、より完璧なサラウンド音場が再現できるよ」

設定メニューからの手動調整も可能。数字を見ながら微調整できるのは便利 (C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

編集者A 「テストトーンを聴きながら、フロントやサラウンドの音が出てくる位置を調整できるんですね。これならわかりやすいので僕にもできそうです」

編集者B 「YSP-2500は、誰でも手軽に本格的なサラウンドを実現できること目標として生まれたデジタル・サウンド・プロジェクター技術を採用しているので、リアスピーカーを置く場所が不要という手軽さだけでなく、設置や調整も簡単にできるようになっているんだ」

YSP-2500の接続端子部

 YSP-2500の音場の調整が容易という話と関連して、接続や設置についても紹介しよう。YSP-2500と薄型テレビやBDレコーダーなどの接続は基本的にHDMI接続。YSP-2500には4K/60pにも対応する最新規格のHDMI入力が3系統備わっているので、BDレコーダーのほか、ゲーム機はもちろん、4K放送チューナーなどとの接続も可能。薄型テレビともHDMI接続でOK。必要なケーブルはHDMIケーブルが2本だけだ。

 ちなみに、このほかには、アナログ音声入力、光デジタル入力×2、同軸デジタル入力×1があるので、オーディオ機器などとの接続も可能。サラウンド用スピーカーとしてだけでなく、オーディオ再生なども幅広く楽しめるのだ。

AVライターXの乱入コラム

編註:AVライターとしてお馴染みの某氏に、今度『シドニアの騎士』で試聴するんですよと話したところ、「じゃあどこかに作品紹介コーナーが必要でショ。ここはBD全巻買いそろえた僕の出番ショ」と解説役を買って出てくださった。明らかに別の作品にハマっているであろう口調が多少気にはなったものの、ここに全文を記す。(編集者B)

『シドニアの騎士』とサラウンドの良い関係

 『シドニアの騎士』は、ハードな世界観を持ったSF作品で知られる弐瓶勉が現在連載中の作品。もともと彼の作品は、いわゆる“ハードSF”の流儀にのっとり、緻密に練られた世界観やSF的設定を構築しながら、説明を極限まで排除したストーリーなどわかりづらい面も持っていた。

 しかし、本作では王道のロボットを題材とし、得意の多層建造物やヘビーなSF設定を盛り込みながら、若い少年少女が正体不明の敵と戦うというストレートな物語としている。これが人気が出ないわけがない! アニメの原作としても相性抜群でアニメ化は必然とも言える作品だった。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 本作の画期的な点は、ほぼフル3DCGによる制作(背景画などに一部2D作画があるようだ)が挙げられる。ロボットの作画を3DCGで行なう手法は一般化してきているが、キャラクターまでも3DCG化するのは、手描きのキャラクターに慣れたアニメファンには違和感が生じやすい難点がある。

 しかし、原作の弐瓶勉の絵柄は、簡略化された描線やマンガ的な記号的表現こそあるが、優れたデッサン力を活かした骨格のある立体的なキャラクター像であり、しかも人間でありながらどことなく無機質な雰囲気がある。このあたりの雰囲気が3DCGによるキャラクター作画とも相性が良かったと想像する。本作のアニメ化は必然と言えるが、制作が3DCGを得意とするポリゴン・ピクチュアズであったことは僥倖と言えるだろう。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 もう1つの必然がサラウンド音声の採用。音響デザインは、劇場公開作品に匹敵するクオリティー。サブウーファーを備えた5.1chシステムをお持ちの人ならば、第1話の冒頭シーンで、部屋全体が揺れているような轟音に驚かされたはずだ。また同時に、音が前後左右に動き回るような、わかりやすいサラウンド効果が少ないことにも気付くはずだ。衛人と奇居子のアクション場面などでは、ヘイグス粒子砲の音の移動感や衛人の移動音なども含まれているが、演出効果としては控えめだ。

 それ以上に綿密に作り込まれているのが、空間の響き。操縦席の狭い空間はもちろんのこと、宇宙空間の静寂感、そして特徴的な円筒状の多層構造物に築かれた狭苦しい街並みや室内、こうした空間の広さと狭さが音響によって見事に再現されている。ハードSFや本格SFはこうした環境をある種の主人公として扱うことが多いし、本作はその原作のムードを3DCGで見事に立体化した。ここまできて、音だけが平面的なステレオ音声でよいわけがない。サラウンドによる立体音響の付加はなくてはならないものだ。

BD『シドニアの騎士』には音声特典として5.1ch音声が収録されている (C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 この立体音響によって、視聴者は巨大な宇宙船の内部で生活する人々の暮らしをリアルに体感できるようになる。物語の世界の中に視聴者を巻き込み、そこで起こるさまざまな事件を体験的に伝えることで、人類滅亡の危機という状況のシビアさ、そこで生きる人々に感情移入できるようになる。優れた物語と映像と音。この三者の良い関係が『シドニアの騎士』を傑作たらしめていると思う。

 だからこそ、音だけ2.0chというのは、本作の完璧さを損なってしまうことにほかならない。アニメ『シドニアの騎士』は5.1ch音声で初めて完成する。第2期の放送の開始を首を長くして待っている今のうちに、5.1ch再生環境の構築にもぜひ挑戦してほしい。

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