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ニフティ、Comcast、Dailymotionなどの採用実績、日本オフィス開設で展開強化

500ペタバイトの事例も!Scalityストレージが日本に本格参入

2014年11月05日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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 新興ストレージベンダーの米Scality(スケーリティ)が10月29日、日本事務所の開設を発表した。聞き馴染みのないベンダーだが、実はニフティなど、日本市場でもすでに多くの導入顧客を持つという。来日したScality CEOに、同社製品の特徴や強み、日本市場における戦略などを聞いた。

Scality CEOのJerome Lecat(ジェローム・ルキャット)氏

汎用ストレージをソフトウェアベースで構築する「RING」

――今回、日本事務所を開設されましたが、まずはその経緯についてお話しください。

 Scalityは2009年に設立された、ソフトウェアストレージの新興企業だ。米国内に2箇所、そしてフランスに拠点を持つ。今回の東京は4拠点目となる。

 設立当初から、日本は重要なマーケットだと考えてきた。そしてすでにニフティ(@nifty)を初め、大手サービスプロバイダーの数社がScality製品を導入している。だから、実はわたしも含む当社の幹部は、頻繁に日本に来ているよ。

 これまで、日本の顧客から「いつ日本オフィスを立ち上げるのか」とたびたび聞かれていた。「日本でのビジネスが軌道に乗ってきたらね!」と答えていたが、今年、日本市場の売上高が全体の15%を占めるようになり、いよいよその時期だと考えたんだ。

 日本は大型のデータセンターが多く、ストレージ投資額も高い市場だ。Scalityのストレージ製品は大規模な環境ほどメリットが増えるので、この市場の可能性は高い。日本市場に注力していくのは当然の流れだろう。

――すでに日本市場でもビジネスを展開しているわけですね。では、旗艦製品である「Scality RING」とはどんなストレージ製品なのかを教えてください。

 Scalityは設立以来、一貫して「汎用ストレージをソフトウェアで提供したい」と考え、製品の開発に取り組んできた。その結果生まれたのがRINGだ。

 RINGは、オブジェクトストレージのアーキテクチャをベースとした、ペタバイト~エクサバイトクラスの拡張性を持つストレージシステムだ。われわれは「スケールアウト型のSoftware-Defined Storage(SDS)」と呼んでいる。スケールアウトが容易で高速、可用性の高い堅牢なSDSだ。

――CephやSwiftといった、いわゆる「分散オブジェクトストレージ」とはどこが違うのでしょうか。特徴はどこにありますか。

 アプリケーションの側から、オブジェクトアクセスだけでなく汎用的なファイルアクセスができる点が大きな特徴だ。大量のHDDを搭載したx86サーバーをクラスタ化して、単一のストレージプールを構成するという点では同じだが、RINGは従来の汎用ストレージのように「見せかける」ことができる。

Scalityのアーキテクチャ図。オブジェクトストレージだけでなくファイルサーバー、仮想環境向けストレージとしてのインタフェースも備える

 そのためRINGは、従来の汎用ストレージがカバーしてきたワークロードの80%をカバーできる。安価なコモディティサーバーを利用するので、規模が大きくなるほどコスト面でのメリットが出てくる。

ペタバイト級の実績が多数、HPとのグローバルパートナーシップも

――国内ではニフティなどが導入しているとのことですが、海外での導入事例は。

 Comcast、Time Warner Cable、Dailymotion、Orange、Los Alamos National Laboratory(ロスアラモス国立研究所)などで大規模な採用事例があり、幅広い用途で利用されている。

RINGの採用事例。クラウドサービス基盤、メディア(動画)配信、エンタープライズクラウド、テープアーカイブの代替など幅広いユースケースで実績がある

 たとえばある政府機関では、膨大な量のテープアーカイブをRINGのストレージに移したことで、30ペタバイト(PB)以上のアーカイブデータに常時アクセスできる「アクティブ・アーカイブ」を実現した。また、Webメールのクラウドサービスを提供する顧客では、RINGが1億5000万ユーザーぶんの電子メールを保管している。

 RINGを最初に導入してくれたのは、200万ユーザーを抱えるサービスプロバイダーだった。2010年7月から導入されているのだが、それ以来、1秒のダウンタイムも発生していない。1秒も、だ。したがって、“ほぼ100%”ではなく“完全に100%”の可用性を実現しているわけだ。

 これまで最大の導入事例は、ロスアラモス国立研究所の500PBだ。ここではHPC/分散コンピューティングシステムのストレージにRINGを採用している。

 日本市場でのターゲットも、このような大規模なストレージ環境を必要とするサービスプロバイダー、データセンター事業者、通信事業者、メディアなどになるだろう。

――ストレージ市場で競合する製品は何でしょうか。たとえばBashoの「Riak CS」とか?

 いや、実際のところ、これまでの案件でBashoと競合したことは一度もない。先ほど事例を紹介したように、われわれの製品はNASやアーカイブストレージとして利用されるケースも多いので、オブジェクトストレージだけが競合というわけではない。案件によっては、NetAppやIsilonなどと競合することもある。

従来のストレージ市場(左)と将来Scalityがカバーする領域。現在の市場は4領域(SAN、NAS、オブジェクトストレージ、テープアーカイブ)に分かれているが、将来的にはその大半をScalityでカバーできると説明

 Scalityでは、グローバルパートナーとしてヒューレット・パッカード(HP)とのリセラー契約を交わしている。HPとのパートナー関係はすでに長期にわたっていて、HP経由だけで50PB以上の導入実績がある。彼らのグローバルなセールス網が、Scalityにもたらすベネフィットは大きいね。

――今後のScality RINGのロードマップについて教えてください。

 引き続き、「汎用ストレージをソフトウェアで提供する」というこれまでと変わらない方向性で機能を強化していく。たとえばエンタープライズ向け汎用ストレージが持つ、スナップショットなどの機能を実装していきたい。

 また、他のアプリケーションとのインタフェースも強化して、SDSの自動化も図っていく。特にOpenStackとのインテグレーションには注力しており、すでにCinderドライバやSwiftコネクタも提供している。
  ※インタビュー後の11月3日、Scalityは、フランスNumergyが自社のクラウドサービス「Numergy OpenStackクラウド」において、RINGをストレージ基盤に採用したことを発表している。

 他の地域と比べて、日本の顧客は品質やプロセス、サポートといったものを強く重視する。日本市場からそれらを学び、うまく行けば、他の市場でも生かせると考えている。これからも日本担当チーム(日本事務所)だけでなく、本社からも強く支援していくつもりだ。

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