このページの本文へ

商用ディストリビューションと、アセスメント/設計/構築などの支援サービス

「HP Helion OpenStack」商用版発表、強みはどこにある?

2014年10月29日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は10月28日、独自の商用OpenStackディストリビューション「HP Helion OpenStack」の提供開始を発表した。合わせて、既存環境のアセスメントからOpenStack環境の設計や構築などを支援するプロフェッショナルサービスも提供される。

 HPでは今年5月、OpenStackを中心に据えた包括的なクラウドサービス/製品群を「HP Helion」ブランドで発表し、今後2年間に10億ドル以上の開発投資を行うとしていた(関連記事)

5月に発表されたHP Helionのポートフォリオ。今回、商用OpenStackディストリビューションとプロフェッショナルサービスの提供開始が発表された

発表会に出席した日本HP クラウドビジネス統括本部 統括本部長の春木菊則氏

同じく日本HP 執行役員 テクノロジーコンサルティング事業統括 兼 APJ OpenStack Professional Servicesディレクターの有安健二氏

HP自身の運用経験に基づき機能強化した「HP Helion OpenStack」

 HP Helion OpenStack(v1.0)は、OpenStack“Icehouse”リリースをベースとした商用ディストリビューション。ただし、分散仮想ルーター「Neutron DVR」やベアメタルサーバーのプロビジョニングツール「Ironic」といった、次期リリース(“Juno”)で提供予定の一部機能も取り込んでいる。

 また、OpenStack環境の可用性や拡張性、運用性を高めるための付加ツールを標準搭載しているほか、自動デプロイメントツール「TripleO」で容易に環境をセットアップできる。なお、ホストOSとしてDebian GNU/LinuxベースのHP hLinuxもバンドルされる。

 Helion OpenStackでは、9×5の(1日9時間×平日5日間)の標準保守対応が提供される。このサポートを含む年間サブスクリプション価格(税抜)は、物理サーバー1台あたり12万9000円。また、24×7の拡張保守対応オプションの場合は、物理サーバー1台あたり23万6000円となる。

 また、Helion OpenStackは商用版のほかに、無償版(Community Edition)も用意されている。無償版では対応するハイパーバイザやストレージ、拡張性(ノード数)などに制限があるものの、テスト環境や小規模な商用環境を構築することができ、有償サポート(9×5、年間サブスクリプション価格9万7000円/台)を受けることもできる。

「HP Helion OpenStack」商用版と無償版の違い。無償版でも有償サービスを受けることができる

 日本HPの春木氏は、HPではすでにOpenStackベースの大規模なクラウド環境を構築、運用しており、その経験に基づき、必要となる追加機能をHelion OpenStackに盛り込んだと説明。「簡単に言うと、クラウドを使いたい方、作りたい方が『楽に、安心して』使えるのがHelion OpenStackだ」と紹介した。

なお、OpenStackとCloudFoundryを組み合わせたPaaS基盤「Helion Development Platform」が米国で発表済みだ。「国内でも近い将来、披露できると思っている」(春木氏)

OpenStackのプロフェッショナルサービスチームを結成

 「HP Helion Professional Services」は、顧客がOpenStackベースのクラウド基盤を導入する際の、アセスメントや設計、構築、検証、運用などを、HPのアーキテクトやクラウドエンジニアが支援するサービス群だ。

「Helion Professional Services」のサービスメニュー

 このサービス群は、OpenStack経験の豊富なアーキテクトやクラウドエンジニアから構成される「HP Helion OpenStack Professional Services」チームが提供する。このプロフェッショナルサービスチームは、世界最大規模のOpenStackパブリッククラウドである「HP Helion Public Cloud」を運用し、OpenStackコミュニティでも多くのコードをコミットしている。

 APJ(アジア太平洋・日本)地域の同チームを統括する有安健二氏は、顧客はOpenStackのベネフィットを理解している一方で、従来のオープンソースソフトウェア(OSS)と同様の課題や懸念をもっていると指摘した。すなわち、サポートサービスやセキュリティ、エコシステム(コミュニティの維持)、インテグレーション、拡張性といった課題や懸念だ。

 「そうした課題や懸念を解消できるのが、商用OpenStackディストリビューションであり、プロフェッショナルサポートの提供である」(有安氏)

 有安氏は「OpenStackエンジニアは全世界的に少ない」と述べ、HPでは現在、外部からのリクルーティング、社内インフラエンジニアへのトレーニングも含めて、技術者の確保に注力していることを説明した。APJチームでは現在、数十人のOpenStackエンジニアを擁しているが、1年後までに現在の3~4倍となる数百人規模とするという。また春木氏は、SIパートナーへのトレーニングも実施していくとした。

OpenStack市場における“HPならでは”の強みとは?

 すでに多くのベンダーが独自のOpenStackディストリビューションや、OpenStackベースのクラウド構築サービスを提供開始している。そうした中で「HPならでは」の強みはどこにあるのか。

 春木氏は、すでにHelion OpenStackを導入している顧客からの声として、(HPの)ハードウェア動作検証済みで提供されている点、メジャーリリースが6カ月ごとに行われる点が魅力だとした。

 一方、有安氏は、プロフェッショナルサービスで提供されるメニューの豊富さを強調した。特に、HP自身が大規模OpenStackクラウド基盤の構築/運用実績を持っており、そのノウハウを基にしたOpenStackクラウドの設計や構築のサービスは、他社には真似のできない強みであると語った。

■関連サイト

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード