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学校では教えてくれないIT業界 第4回

採用担当が語る、内定率が飛躍的に上がる10のこと

2014年10月31日 09時00分更新

文● 久松 剛(ネットマーケティング )

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 年末が近づきエンジニアの転職市場も活発化してきました。2016年新卒就活解禁の足音だけでなく、2015年新卒についても追い込み、これから開始、既に得た内定を前に再度思い直しての就活再開など様々な境遇を耳にします。

 企業選びについてお話しさせて頂いた前回から更に一歩進み、エンジニア採用担当として選考をしていて残念だなと思うポイントを軸に内定率を上げる10のポイントについてお話しします。

1) 大企業に比べて採用されやすいという根拠のない妄想を捨てる
 前回のコラムでお話したように大企業に対する滑り止めとして中小企業に応募される方が多く居られます。

 「大量採用して3割辞めてもやむなし」とする大型採用をする大企業に比べ、スタートアップを含む中小企業では募集人数が少ないために誰でも良いというわけには行かず、投下できる採用コストも相対的に低いために採用後に失敗しないように慎重に選びがちです。

 個人的には純粋な応募者から見た内定難易度としては中小企業の方が高いのではないかと考えます。間違っても「滑り止め」感覚で望むのは落ちに行くようなものなので避けましょう。

2) 何の会社が何を募集しているのか理解する
 弊社「ネットマーケティング」の場合、応募したキッカケを質問すると「……。えーっと……インターネットのマーケティングをされる会社ですよね?」と会社名から捻りだす方が1割程度見られます。求人票やコーポレートサイトは最低限見ておきましょう。

3) 興味を感じたら接触してみる
 有名なプロダクトを持つ大企業以外では、今ひとつ何をしているのか分かりにくい企業が殆どです。企業の中には応募する前の段階で事業説明会を開いているところがあります。

 主催している勉強会で接触してみるのも効果的です。特に積極採用をしている中小企業であれば応募前に個別に時間を取って話ができるところもあるため、一度問い合わせをしてみると良いでしょう。

4)スキルを盛らない
 やったことがなかったり、知らなかったり、うろ覚えだったりする技術は正直に伝えましょう。仮に書類審査を通過したとしても、話が進むうちに誤って覚えているだけなのか虚偽なのか悩んでしまいます。スキルレベルはあるに越したことはないですが、足りない部分は会社と共に成長していくという立て付けができれば代替可能なケースも多くあります。

5) 履歴書の右側を埋める
 採用する側になって特に驚いたポイントとして、面接当日に受け取る履歴書の内の実に6〜7割程度が右側が白いという現実があります。右側と言えば応募者様のセールスポイントや志望動機が並びます。記入するだけで、単純に他の方より差がつく結果となります。

 就活コラムで手書き履歴書が必須であるようなエントリを定期的に見かけますが、全体を埋めることほどの重要性はありません。加えて字が綺麗な人であれば好印象に繋がりますが、あくまでも事前情報なので面接結果を覆すまでには至らないというのが個人的な感想です。ただし過去に署名以外を他の字が綺麗な方による代筆で提出された方が居られましたが、それは違うと思います。

6) きちんとした写真を貼る
 履歴書の右側と共に驚いたのが写真です。面接当日でも6割程度の方が貼られていません。そのため履歴書同様、貼った方が意向の高さを伺い知ることができるという点で差別化できるのが実情です。また、写真が古かったり画質が悪かったりホラーだったり、ともすれば手でちぎった写真の方も少なくないため、きちんとした写真を貼るだけで綺麗な手書き履歴書と同じようなポジティブな効果を企業に与えられます。

7) 応募先の会社のプロダクトを利用する
 BtoBプロダクトや利用シーンが限定的で特殊なものは仕方がないですが、どっぷり任せることになるものだけに是非とも事前に触っておいて頂きたいところです。そのプロダクトに関わる意欲だけでなく、共に事業を育てていけそうで非常にポジティブなイメージを受けます。他方、5%ほどの割合で事業の分野そのものを面接の場で否定される方が居られるのですが、残念というより何故ご応募頂いたのか理解に苦しむところです。

8) ポジティブな受け答えをする
 スタートアップを含む中小企業の場合、経営層にとって売上増、知名度増、上場、世界進出などといった様々な目標があり、その実現に向けた仲間を募集するのが求人です。

 分かりやすく「一緒に盛り上げていきましょう」「会社と共に育っていきます」とがっちり握手するイメージで望む方が遙かに円滑に進むのです。逆に言えば最初に接触してみて自身の中で盛り上がらなければその会社はマッチングしていないと判断して良いと思います。

9) 制作物をコンプライアンスに響かない範囲で見せる
 スマホアプリやWEBアプリの場合、実際に公開しているものや実機で動くものを持参すると説得力があります。中には実装物のソースコードを見せるようにという他社様もあるようです。ただし契約の観点で難しいのであればその旨お話頂きたいところです。

 過去に「作成したiPhoneアプリは前職でBtoB向けに納品したものなので見せられないのですが…」と『社外秘』と書かれた仕様書を持参された方が居ました。こうなってくると残念というより社会人としてどうなのかという話になります。

10)PDCAを回す
 私が感じる既存の人事採用業界の問題点として、応募書類や面接に対してお祈りされるばかりでどこがまずいのかフィードバックする仕組みがほぼないため、改める機会がないということにあります。

 例えば面接の場合、ネガティブな受け答えをしてしまっても面接官が露骨に不快感を示さない限りは気づかないケースが多く、そのまま別の企業でも同じ過ちを繰り返している方というのがある程度見受けられます。

 弊社の場合、程度の酷い方については紹介会社様に一度再面談をお勧めしています。しかしそうしたフィードバックをする企業は少ないので、可能であれば紹介会社や就活仲間、同じ境遇を経験した知人らに書類や面接練習を見てもらうことも考えた方が良いでしょう。

 皆様の転職・就職活動の参考になれば幸いです。


筆者紹介──久松 剛


著者近影

 ネットマーケティング システム開発本部 サービス開発部 インフラチームマネージャ。慶應義塾大学政策メディア研究科博士。2000年より村井 純環境情報学部教授に師事。在学時の専門は次世代インターネット、リアルタイムストリーミングなど。IT革命・事業仕分経験後に2012年6月より現職。FacebookマッチングサービスOmiai、広告運用システムALLADiNなどのAWS・オンプレミスインフラエンジニア、リスクマネジメント、BCP、エンジニア採用などを担当。



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