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記者の耳 ちょっとそこらで聞いた話

渋谷ではたらく社長、アメブロの収益性を心配される

2014年11月01日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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 サイバーエージェントが先月30日、2014年9月期通期決算を発表。売上は2052億円(前年比26.3%増)、営業利益は222億円(同115.3%増)、ともに過去最高となる業績をあげた。

 ブログサービスの先駆けとなり、藤田晋社長が「渋谷ではたらく社長のアメブロ」をつづったことからも「アメブロの会社」というイメージが強いが、売上の内訳を見ると、実はアメーバ事業は2割もない。

 1127億円(55%)は業界トップシェアのインターネット広告事業、653億円(31%)はサイゲームスを始めとするソーシャルアプリケーションプロバイダー(SAP)子会社を含むゲーム・その他メディア事業が稼いでいる。

 アメーバ事業は収益性も悪かった。今期の売上高は386億円だが、営業利益は24億円。アメーバ事業、とくにアメブロの収益性については株主からも懸念されていた


スマホ時代でアメーバが迎えた転換期

 アメーバはプラットホーム利用者増加を通じて、業績に大きく貢献してきた事業ではある。

 サイバーエージェントではアメーバブログを開始した2004年から2009年までの5年間、赤字を押して利用者を増やすことに専念。2009年にアメーバピグを開始して、2010年にようやく黒字化した。

 現在はアメーバ開始当初に比べ、利用者の環境も大きく変化している。2005年にはアクセスの100%がパソコンだったが、2009年にはケータイが過半数、2013年にはスマートフォンが6割以上を占めるようになった。ケータイ・パソコンのアメーバコイン(有料課金)消費額は右肩下がりで、売上の大半はスマートフォンだ。

 2012年からは経営体制とともに開発環境のスマホシフトを進め、ローカルサーバー中心だったサービス運用をプライベートクラウドに切り替えた。今年度は売上の実に4分の3(76%)をスマホが稼ぎだす構造になって、ウェブブラウザーをベースに成長したアメーバは転換のときを迎えている。

 「スマートフォンの売上は、2011年ほぼゼロの状態から売上の4分の3まで一気に上げてきた。スマートフォンの会社に生まれ変わったと言える。数字はさらに伸びるはず」(藤田晋社長)


スマホで新たな成長分野「動画」に注力

 スマホ時代、アメーバ事業は構造改革が進んでいる。

 1600人規模で抱えていたアメーバの人員を800人まで半減させるなど販管費カットにつとめ、2015年9月期までに売上高400億円、営業利益80億円の大幅増益を見込んでいる。アメーバを離れた800人はゲーム事業、コミュニティ事業、また音楽・動画など新規事業に振り向けられる。

 藤田社長は広告・ゲーム・アメーバという3本の収益源に加わる新たな「第4の柱」を探したい、今後はアドテク・エンタメ・コミュニティ、いずれかの分野を大きく成長させたいと話していた。

 動きが目立っているのは動画だ。

 子会社の広告映像制作の渋谷クリップクリエイト、ライブ動画配信のアメスタに加え、31日にライブ動画配信のタクスタ、動画キュレーションのサンレンプを新たに発表。合計4社を運営することになる。

 なお決算説明会で藤田社長が述べたところによれば、モイの「ツイキャス」、ドワンゴの「ニコニコ」のようなアマチュア向けではなく、芸能人やアイドルのようなプロ、またはデビュー前のアマ向けを狙っている。競合はDeNAのライブ事業「ショールーム」。アメブロで培った芸能界とのつながりを動画に向ける狙いだ。

 サイバーエージェントは成長企業だ。メディア・広告・コンテンツ事業は、デバイス・インフラといったハード面への投資が少ない代わりに、決算インセンティブを社員に配る、新規事業を育成するなど成長につなげるソフト面の種まきが欠かせない。スマホ成熟期、アメブロの資産はどう化けるのか。


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