このページの本文へ

Azure、機械学習など、汎用的なテクノロジーをあらゆる業種に提供

MS、IoT分野で竹中工務店、日立ハイテクと異業種コラボ

2014年10月16日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本マイクロソフトは10月15日、IoT(Internet of Things)領域での新たな取り組みとして、大手ゼネコンの竹中工務店、および産業機械メーカーの日立ハイテクノロジーズ(日立ハイテク)との連携/協業を発表した。両社が提供主体となるIoTサービスを、Azureクラウドや機械学習技術などを通じてサポートする。

ビル管理システムをクラウド化、機械学習に基づく自動管理も

 竹中工務店との連携では、IoTとAzureクラウド、機械学習エンジンなどを活用した、次世代のビルエネルギー管理システム(BEMS)の構築、提供を目指す。竹中工務店では2012年にクラウド型BEMS「ビルコミュニケーションシステム ren.」を発表しているが、マイクロソフトのテクノロジーを追加することで、これをさらに機能拡充する形だ。

Azureをプラットフォームとして活用する竹中工務店の「ビルコミュニケーションシステム ren.」の概要

 ビルコミュニケーションシステム ren.は、これまでビルごとに独立して機能していたBEMSを、クラウド上の共通プラットフォーム(ren.Cloud)に接続し、空調や照明などの設備や環境センサーからデータをクラウドで収集、統合監視できるようにする。今回、集積したデータをAzure側で統計処理、分析することができるようになり、さらに「Azure Machine Learning」による機械学習を通じて、ビルの熱源や動力の効率的な制御モデルの構築と自動制御につなげていく。

 発表会に出席した竹中工務店の後神洋介氏は、これまでのビル設備管理は“経験と勘”に頼っていたが、今回の連携とクラウド化によって、実データに基づく制御モデルの構築や管理の自動化が可能となり、ビルの使用エネルギー効率化と管理負担の軽減が実現する、と同システムの価値を説明した。

竹中工務店 情報エンジニアリング本部長の後神洋介氏

 さらにこのシステムは、BEMSの主要な役割であるビルエネルギーの管理だけにとどまらないと言う。将来的には防犯や災害対策などの「安心安全」、コミュニケーション活性化や“にぎわい”といった「コミュニティの活力魅力」などの創出サービスにもつなげたいと、後神氏は抱負を述べた。

医療機器や産業機械の高精度な障害予兆診断サービスを提供

 一方、日立ハイテクとの協業においては、医療機器や産業機械といった設備の故障などを高精度に予兆診断するクラウドサービス「BD-CUBE」を日立ハイテクが開発し、グローバルなクラウドサービスであるAzure上に構築することで、同サービスのグローバル展開を支援する。

日立ハイテク「BD-CUBE」の概要

 BD-CUBEは、日立グループが独自開発した予兆診断アルゴリズムに基づいて機器の異常予兆を検知し、機器メーカーや保守サービス事業者に対し多角的にわかりやすく可視化するサービス。部品交換や点検実施の要否を保守サービス提供者が前もって判断できるようになるほか、メーカーが分析データに基づいて機器の不具合や改善点を把握することも可能になる。

 日立ハイテクの田辺徹氏は、サービス提供基盤としてAzureを選択した理由について、開発ツール群が提供されておりクラウド環境の構築が容易なこと、スケーラビリティが高いこと、地理的な冗長性が確保されていることなどを挙げた。

日立ハイテクノロジーズ 新事業創生本部 コーポレートプロジェクトマネージャ 兼 IoT担当部長の田辺徹氏

汎用的な技術/プラットフォーム提供で幅広い業種とIoTコラボを

 米マイクロソフト コーポレート バイスプレジデントの沼本健氏は、マイクロソフトのIoTビジョンは“Internet of Your Things”であり、まずは既存のIT資産(システムやデバイス、データ)活用からスタートしようというコンセプトだと説明した。

 「(さまざまな業種の)顧客には、それぞれ大切なITインフラやデバイスがある。それらを活用してIoTの取り組みをスタートすることで、事業機会を“今日から”実現できる」(沼本氏)

米マイクロソフト コーポレート バイスプレジデントの沼本健氏

マイクロソフトでは「Internet of YOUR Things」を提唱している

 今回発表した協業と同じように、日本マイクロソフトではすでにFA(Factory Automation)制御機器メーカーの三菱電機、オムロンとも連携し、それぞれの製造業向けIoTサービス展開をサポートしている。

 沼本氏は、こうした異業種とのIoTコラボレーションを実現していくために、マイクロソフトでは「汎用的なテクノロジーとプラットフォーム」の提供に注力していることを強調した。Linuxを含む多様なデバイスOSとエージェントのサポート、幅広い接続プロトコルへの対応、グローバルに展開するAzureクラウド基盤、分析や機械学習といったテクノロジーなどだ。

沼本氏が示した、IoTを実現する上でプラットフォームに求められる「5つの要素」

 また、今回発表した連携や協業は、単にプラットフォームや製品の提供にとどまるものではなく、技術サポートの提供、あるいはフィードバックを受けて改善に生かすなど、積極的な姿勢で臨むと説明した。

 なお、IoT普及推進のためには、組み込み系技術とソフトウェア開発技術の両方を身につけた開発者が求められる。そうした開発者の養成のため、マイクロソフトでは若松通商と連携して、センサーボード(ハードウェア)や、Azure、VisualStudio、.NET Microフレームワークを使った学習コンテンツなどの提供にも取り組む。

若松通商とのコラボレーションにより、1万人の“IoT開発者”養成を目指す

■関連サイト

カテゴリートップへ