若くて親日なベトナム!成功のコツはギャップを楽しむこと

文●大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

2014年10月13日 09時00分

NTT Communications Forumでは、世界各国のICT事情を現地の担当者が語るミニセッションが行なわれる。古くからグローバルに展開する同社ならではの名物セッションを毎年お伝えしており、昨年はインドネシア(電話局の鍵は隣のおばさんが!インドネシアの最新ICT事情)をお伝えしたが、今回は若い労働力が大きな魅力となっているベトナムを取り上げる。

平均年齢29.2歳!労働力が魅力の親日国家ベトナム

 ベトナムのセッションで講演したのは、ホーチミンに赴任するNTTコミュニケーションズ(ベトナム) セールスディレクターの鈴木貴之氏。「行く前は若い労働力、親日国などいいイメージを持っていた人が、実際に行ってみて理想と現実のギャップに悩まれている。それをきっかけでベトナムやベトナム人を嫌いになってしまう人もいる」とのことで、なるべく現地の動向をつまびらかにし、ギャップを感じないようにしたいというのが、講演の趣旨だという。

 インドシナ半島で東側に位置するベトナムは、九州をのぞく日本と同じ面積に9342万人の人口がひしめく社会主義国家。政治の中心である北部の首都ハノイ(670万人)、最大都市の南部のホーチミン(730万人)、そして中部に位置するダナン(89万人)の3つの都市を中心とした3つの地域で構成され、南北に長く伸びた国土が特徴的。「北部は真面目、南部はおおらかな気質だが、概して頑固。絶対に自分が正しいという人が多い」(鈴木氏)。1980年代のドイモイ(刷新)政策以降、高い経済成長を遂げており、政治・社会が安定している、治安がよい、自然災害が少ないなどの特徴があるため、グローバル企業の投資も拡大している状況だ。

 ベトナムの魅力はなんといっても、安価で質の高い労働力。平均年齢が29.2歳(日本は46.1歳)のベトナムは若い労働力が豊富で、手先も器用で安価。年齢が若いため、新しいトレンドにも敏感で、内需型のサービス業にとっても魅力的だという。さらに、ODAの最大援助国であることもあり、対日感情がきわめて良好。もっとも信頼できる国はどこかというアンケートで日本を挙げた比率は、インドネシアに次いで2位となっている。こうした背景もあり、日本からの投資も拡大しており、新規投資額で第4位、拡張投資額で第1位。現地に進出している会社(商工会登録数)は、2014年で1300社を突破したという。

 こうした投資を支えるベトナムの通信環境やICTの市場動向はどうか? 通信市場に関しては、郵政通信系のVNPT(Vietnam Posts and Telecomminications Group)と軍隊通信系のViettelという2つの通信グループが大きなシェアを持つほか、IT関連ではFPTというグループが最大手となっている。他のアジア諸国に先駆け、2006年にはFTTH、2009年には3Gの通信サービスがスタートしており、価格も比較的低廉だという。「月額1万円で日本のフレッツ光のようなブロードバンドサービスが利用できる」(鈴木氏)。

 また、データセンターはVNPTとNTTコミュニケーションズの合弁会社であるGDS(Global Data Service)やViettelのような通信キャリアがメインで、その他FPTやCMCといった事業者がサービスを提供している。

 鈴木氏が赴任するNTTコミュニケーションズ(ベトナム)は2001年に設立され、すでに13年の実績を持つ。現在は124名で、このうち110名がベトナム人。本社をホーチミン、支社をハノイに置き、システムやネットワークのインテグレーション、データセンターなどのサービスを提供している。

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進出前に聞いたベトナムのいい話は本当か?

 優秀な労働力、親日、リスクフリー、好立地、急成長など、さまざまなレポートでは、ベトナムのメリットばかりが強調される。しかし、ベトナムは課題も多い。鈴木氏は、こうしたリスクは事前に盛り込んでおくべきだと説明する。

 まず通信品質があまり高くなく、1ヶ月で43分程度の故障が発生する可用性。中国、マレーシア、タイ、フィリピンに劣り、インドネシアやインドよりは優れているというレベルだ。「通信ケーブルの配線が雑だったり、架空されているケーブルに洗濯物が干されていたりする。やはり人為的な問題は大きい」(鈴木氏)。

 また、国際回線の接続障害が大きいのも悩みどころ。ベトナムは陸揚げされている海底ケーブルの数自体が4本と少なく、しかも大容量のAAG(Asia American Gateway)に大きく依存している。そのため、AAGにトラブルが起こるとベトナムのインターネット全体に大きな影響が起こる。実際、2013年、2014年には連続してケーブルの切断事故が起こり、インターネット障害が発生。「海底ケーブルの断線に関しては、修理するまで手の打ち所がない」(鈴木氏)とのことだ。

 電力インフラも万全とは言えない。需要に対する供給は追いついてきたものの、2013年5月には南部20州以上、隣国カンボジアのプノンペンまで含む大規模な停電が発生。完全復旧まで8時間かかった停電の原因は、樹木の移植作業を行なった際に、クレーンが持ち上げた樹木が送電線に接触したという事故で、電力システムの脆弱性が露呈されたという。

 さらに人材面でも問題に直面する。鈴木氏は、「ベトナム人は情報共有文化が希薄なので、辞める時も引き継ぎをしない。横領や盗難、麻薬などに手を出す人もいるし、そもそも会社へのロイヤリティがないので、すぐ辞める」と指摘する。違法ソフトウェアの利用率も81%と、中国よりも高い。不正コピーで欧米企業から訴えられる例も起こっている。

“問題”ではなく“ギャップ”を埋める

 そもそも日本人とベトナム人は資質も大きく異なる。ベトナム人から見て日本人は礼儀正しく、真面目で、几帳面だが、一方で働きすぎる、細かすぎる、融通が利かないというネガティブさも持ち合わせる。しかし、長所を裏返せば短所になるため、日本人はベトナム人から学ぶことも多い。鈴木氏は「両者にあるのは“問題”ではなく、“ギャップ”。相互のスタイルを尊重し、ネガティブポイントをカバーすることで乗り越えられる」と指摘する。

 こうしたギャップを乗り越えるため、ITの利用価値は大きいという。たとえば、ベトナム人がすぐに辞めるのを前提に、情報をあらかじめドキュメント化しておく。作業の俗人化や賃金の高騰を前提に、ERPやワークフローを導入し、手作業を極力減らす。さらに脆弱なインフラ事情を補うべく、データセンターの活用やネットワークの冗長化などを進めるといった施策だ。

 NTTコミュニケーションズでは13年に渡るベトナムでの実績を活かし、ギャップを解消するソリューションを提供するという。鈴木氏は、「ベトナム進出時からご相談いただき、拡大までお手伝いさせていただく。ベトナムだけではなく、アジアさらにはグローバルまでカバーできる」とアピールし、講演を締めた。

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