羽田でもマーシャラー2人で
1機を誘導することがある!
飛行機の誘導は、1機を1人のマーシャラーが担当するのが大原則。マーシャラーが何人もいたら、違う指示が出たときに誰に従ったらいいのか分からなくなるからだ。
しかし特殊な事情で1機を2人のマーシャラーが誘導するという、珍しい場合がある。それが富山空港の誘導だ。必ずマーシャラーが2人いるというわけではなく、風向きやゲートによって2人で誘導するらしい。動画投稿サイトにその映像が公開されているが、世界的に見ても珍しいようで、英語のコメントもついているほどだ。
通常は滑走路(誘導路)に対して直角に駐機するが、富山空港は斜めに駐機する。なので着陸の風向きによってはUターンに近くなる
実は羽田でも2人のマーシャラーが飛行機を誘導する場合があるという。先に「特殊な事情」と書いたが、それは「飛行機が90度以上ターンするとき」だ。
滑走路の着陸してゲートに駐機する際、コクピットからマーシャラーを見ると正面~左右90度の範囲であれば、コクピットの窓越しにマーシャラーを目視できる。しかし90度以上旋回すると、マーシャラーが窓枠に隠れて(死角に入って)しまい誘導を目視できなくなるのだ。
そのため空港のゲートは90度以上旋回しないでゲートに入れるようになっていて、羽田空港も一般の旅客ゲートでは2人のマーシャラーが出ることはない。
しかし政府専用機のゲートは特殊で、風向きによっては2人のマーシャラーが出て誘導することになるという。マニアのヒトは、政府専用機の飛行スケジュールを確認して、羽田空港の駐車場からV1スポットを狙ってみてはいかがだろう(屋上は高い柵があるので、途中階の北側がオススメ)。かなり貴重な写真が撮れるに違いない。
定時運行率世界No1と旅客の安心・安全は
マーシャラーの腕
JALが神経質と思えるほど駐機位置にこだわる理由がこれでおわかりだろう。「JALの本物すぎるフライトシミュレーターを体験したぞ!」でJALの定時運航率は世界でナンバーワンということをお伝えした。
これまでの記事でお伝えしたとおり、飛行機の遅れる要因は山とあり、遅れを挽回しようパイロットが頑張ってみても1時間に1分つめるのがやっと。そこで、多少の遅れは到着機から出発機への準備時間を詰めてリカバリーしたり、あらゆるものを事前にスタンバイしておきヨーイドン! でいっせいに作業開始できる体制が必要になる。
なにより当初の予定時刻よりやや早めに作業が進んでいれば、心に余裕ができて安心・安全・サービス向上につながる。それゆえJALは、旅客から見れば神経質に思えるほど高い精度で駐機させているのだ。
飛行機に何度か乗ったことがあれば経験したこともあるだろう。目的地の空港に着陸し、ゲートに駐機してから外に出るまでの待ち時間。あの一番イライラする時間を短縮するのが、正確に停止目標へ飛行機を誘導するマーシャラーなのだ。
到着機の旅客がいち早く空港に降りられるか? すべての作業が素早く円滑に進むかどうか? は、マーシャラーの腕に託されているといっても過言ではない。JALの定時運航世界ナンバーワンは、停止位置の正確さとマーシャラーの誘導の上に成り立っているともいえるだろう。