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事例もテクノロジーも満載!NTT Com Forum 2014 第6回

IDCアナリストが語る、ビジネス変革とイノベーションの現在位置

アジアの先進企業はどのようにICTを活用し、変革を目指すか

2014年10月14日 09時00分更新

文● 福田悦朋

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10月9日、「NTT Communications Forum 2014」のグローバルセミナーステージでは、IDC Asia/Pacificのアナリストが登壇し、ICTによる“破壊的イノベーション”が進む中で、アジア太平洋地域の企業がどのようなICT戦略に舵を切っているのかが具体的な事例とともに示された。

IDC Asia/Pacific プラクティス グループ グループ バイス プレジデントのサンドラ・ワン(Sandra Ng)氏

アジア市場に対する関心の高さからか、ワン氏の講演は多数の聴講者が客席を埋め尽くし、熱気に包まれたものとなった

“破壊的イノベーション”は新興企業だけのものではない

 「破壊的イノベーションの時代におけるビジネストランスフォーメーション」と題された講演で、IDC Asia/Pacificのサンドラ・ワン(Sandra Ng)氏は、こう話を切り出した。

 「ICTはもはや、単なる業務の効率化/合理化の道具ではなく、イノベーションを加速させるドライバーである。ここにいる多くの方も、ICTによる破壊的イノベーションを目の当たりにし、体感しているはずだ」(ワン氏)

 「ICTによる破壊的イノベーション」の身近な例が、Eコマースだ。アマゾン・ドットコム(Amazon.com)、アリババ(Alibaba)、楽天といったEコマース企業の台頭によって、これまでの大規模小売企業が「強み」としてきた実店舗数の多さが無力化され、むしろ「最大の弱点」になりかねないほどの変化が巻き起こっている。

 「さらにアリババ傘下の金融サービス会社、アリペイ(Alipay)は、銀行としても急速に力を付けている。要するに、アリババがICTで引き起こしたイノベーションは、既存の銀行勢力にとっての新たなライバルを現出させ、金融の世界にも大きなインパクトを与えつつある」(ワン氏)

 しかしながら、破壊的なイノベーションは、何も新興勢力の専売特許ではない。ICTの変化をとらえて巧みに活用することができれば、“オールドプレイヤー”に属する企業であっても、ビジネスモデルに新たな変革の渦を巻き起こし、形勢を一気に逆転することができる。

 「だからこそ、ウォルマート(Wal-Mart)は過去3年間で15社ものIT企業を買収し、Eコマースチャネルの強化と変革に力を注いでいるのだ」(ワン氏)

 同様に、英国の大手小売業テスコ(TESCO)も、ICTによる販売チャネルや顧客接点の改革に意欲的な1社だと、ワン氏は説明する。テスコでは、地下鉄のプラットフォーム全面に展開された大型のデジタルサイネージから、直接商品が注文できるEコマースのシステムを、韓国で始動させている。

英国のテスコは、韓国の地下鉄駅プラットフォームのデジタルサイネージをEコマースのインタフェースとして活用している

新たなビジネスモデルや競合への危機感と、クラウド活用の深化

 IDCがアジア太平洋地域の企業幹部を対象に「懸念すべき事柄・関心事」を聞いた調査では、上位項目に「(人的コストの上昇などによる)オペレーションコスト増の抑制」と併せて、「新たなビジネスモデルの出現」「新たな競合の台頭」もランクされている。

アジア太平洋地域の企業経営幹部の関心事、トップ5。経済発展に伴う人件費=オペレーションコストの増大が最大の懸念事項だが、同様に、新たなビジネスモデル、新たな競合への備えも重要な経営課題となっている

 こうした危機意識は、当然、ICTを使ったビジネス改革への積極性へとつながっていく。「たとえば高級リゾートのバニアン・ツリー・リゾート(Banyan Tree Resort)では、スマートデバイス経由でのチェックインに対応したり、チェックイン後すぐにパーソナライズされた情報提供を行ったりするなど、ICTによる顧客体験の高度化に力を注いでいる」と、ワン氏は話す。

 スマートデバイスを、顧客接点の強化やファン層の育成/囲い込みに活用しようとする企業は少なくない。IDCでは、こうした「モビリティ」の技術に加え、「ソーシャルビジネス」や「ビッグデータアナリティクス」、さらには「クラウド」を、ビジネス革新/破壊的イノベーションにおいて中心的な役割を演じる要素ととらえている。

 その中で、ICTによるあらゆるイノベーションの土台を成すのが「クラウドコンピューティング」のインフラだ。ビジネスの変化や革新に対する必要性/危機感の高まりに伴って、アジア太平洋地域でも、クラウド活用に対する企業の意欲と活用レベルは急速に高まっていると、ワン氏は指摘する。

 「2013年時点でのIDC Asia/Pacific調査では、クラウド活用について何も具体的な戦略を持っていない企業が、全体の40%近くもあった。ところが今年(2014年)の調査では、そうした企業の割合は2%へと激減している。ほとんどの企業は、何らかのクラウド戦略を策定し、具体的な活用へと乗り出したというわけだ」(ワン氏)

IDC Asia/Pacific調査による、企業/組織におけるクラウド活用レベル(ステージ)の変化。「ステージ0:戦略がない/不明確」の企業は、2013年調査では40%近くいたが、今年の調査では2%に激減している

(→次ページ、「銀行にとっては、ITこそがビジネスパワーの源泉、中枢だ」)

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