カナル型らしからぬ開放感!
ハイエンドイヤフォン「XBA-Z5」
インイヤー型のハイエンドモデルとなる「XBA-Z5」(10月18日発売 実売予想価格7万円前後)は、16mmのダイナミック型ユニットと、新開発となる「リニアドライブバランスド・アーマチュア」を2個採用したハイブリッド型。
各ユニットの構成は、ダイナミック型がウーファー、BAユニットのひとつがフルレンジ、もうひとつはHDスーパーツィーターという構成だ。
ダイナミック型の振動板は、LCP(液晶ポリマー)フィルムの表面に薄膜のアルミニウムをコーティングしたもので、これは前回紹介したオーバーヘッド型の「MDR-Z7」などと同じ技術が盛り込まれている。
BAユニットは、アーマチュアの形状と対称形状のT型とし、振動の対称性を高めたほか、振動板とダイレクトに連結することで振動ロスをなくし、より忠実な音の再現を可能にしている。
XBA-Z5だけの特徴としては、HDスーパーツィーター用のBAユニットの振動板をマグネシウムとし、超高音域の再現性を高めていること。そして、ハウジングの素材もすべてマグネシウム製とすることで薄型化を実現。さらに、振動にも強くなっており、にごりのない音質を実現する。
16cmの大口径ユニットを内蔵するだけに、カナル型としてはやや大きめのサイズに感じる。しかし、ハウジング部分が薄型になっているため、装着してみるとあまり耳からはみ出すような感じにはならない。
また、ケーブルは耳に引っかける装着方式を採用しており、耳にかける部分は形状記憶樹脂「テクノロート」を芯材とし、表面をシリコン素材としている。自由に変形するので自分の耳に合わせてフィットさせやすい。装着の安定感もかなりしっかりとしている。
その音はいい意味でカナル型らしくない開放感のある音だ。解像感は高いものの耳の奥というか、頭の中で小さなステージが展開する感じになりやすいカナル型だが、どちらかというとオーバーヘッド型に近い、耳の外に音源があるような広々としたステージ感が得られる。
クラシックなどを聴いていると、個々の音の粒立ちや情報量は十分なのだが、ステージ感が広く、ホールの響きなども鮮明に再現するため、ややオーケストラの位置から離れて聴いているような感じになる。
音色が繊細で優しい感触ということもあり、落ち着いた雰囲気で音楽を楽しめる印象だ。
バランス接続では
もはやスピーカーで聴いているのに近い
続いてバランス接続も試してみよう。MDR-Z5にもバランス接続用の別売ケーブルが用意されている。型名は「MUC-M20BL1」(10月18日発売 予想実売価格1万1000円前後)。
XBA-Z5は、ハウジング部分で接続コードを着脱でき、別売のコードに交換できる。着脱はネジ式などではなく、コネクター部分のでっぱりがパチンとはまる感じのハメコミ式。
頻繁に着脱するわけではないので、使っているうちに外れやすくなってしまうような心配はないと思うが、装着した状態でコード部分が固定され、回転できないため、逆に向きに付けてしまうこともあった。その点、最初のうちはちょっと戸惑うかもしれない。
ポタアンの「PHA-3」と組み合わせ、バランス接続での試聴を試してみた。アンバランス接続でも印象的だった、広々としたステージの再現がさらに豊かになる。
PHA-3のしっかりと芯のある音のおかげで、漠然と音が広がるのではなく、個々の音が鮮明に立ちながら、雄大なスケール感で迫ってくる。ジャズでは、歌手の声がバックの演奏の前に出てきて、立体的なステージが感じられる。優しい感触のきめ細かな音色はより緻密さを増し、生き生きとした感じになる。低音感もより力強いものとなる。
PHA-3の音の実力による部分もあるが、ステージの広がり感や奥行きのある立体的な再現はさらに良好になる。
この組み合わせとなると、もはやヘッドフォンでの試聴というよりも、スピーカーで聴いているような感じに近くなる。このあたりはヘッドフォン主体で聴くことが多い人には違和感があるかもしれないが、頭の中で音が鳴っている感じのない自然な音の広がりは、気持ち良く音楽を楽しみたい人には満足度が高いと思う。
(次ページへ続く、「スタンダードモデルの「XBA-A2」を試聴!」 )
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