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LUN=VM単位にならないSANストレージの弱点を解消

ネットアップが解説する次期vSphereの目玉「VVOL」のメリット

2014年10月01日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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9月30日、ネットアップは次期VMware vSphere 6.0で搭載される「VVOL(Virtual Volume)」への対応について説明する勉強会を開催した。SANストレージにおけるVM管理の課題を解決するVVOLにいち早く対応するほか、VVOLと同じコンセプトで長らく展開してきたNFSと仮想化環境との親和性もアピールされた。

VM単位にLUNを割り当てられるVVOLとは?

 VVOLとは、仮想マシンを複数のオブジェクトとして管理するストレージの新フレームワークで、VMの物理ディスクであるVMDK単位にストレージのLUNを割り当てることができる。vSphere環境とSANストレージの課題を解決すべく、次期のVMware vSphere 6.0で導入される大きな改良点だ。VVOLのコンセプトとネットアップのclusterd Data ONTAPでの実装についてネットアップの大西宏和氏が説明した。

ネットアップ システム技術本部 テクノロジーSE部 シニア システムズエンジニア 大西宏和氏

 VVOL登場の背景には、VM単位でのSANストレージの管理に限界が生じたことが挙げられる。ESXiホストとFC/iSCSIで接続される従来のSANストレージでは、1つのLUNが1つのデータストアとひもづく管理形態となっており、ストレージからはVMDK単位での管理ができなかった。つまり、仮想マシンとストレージのLUNの管理単位が一致していなかったのだ。そのため、LUN単位でリストアを行なうと、データストア上のすべてのVMが過去の状態に戻ってしまうことになる。また、LUNを共用しているため、1つのVMDKの性能問題が、データストア全体に波及してしまうという弱点があった。「従来、VAAI(vStorage API for Array Integration)などAPIでの解決を図ってきたが、この2つの課題だけは解決しきれなかった。そこで、コンセプトを変えてVVOLを打ち出してきたようだ」(大西氏)。

VVOL登場の背景

 これに対してVVOLであれば、1つのVMDKを1つのLUNにひもづけることができる。「VMFSとは異なるVVOL Datastoreという新たなデータストアを作りVMDKごとにLUNオブジェクトを格納する形になる」(大西氏)。これにより、ストレージの機能を使って、VM単位でスナップショットやクローンをとったり、QoSを保証することができる。

NFSのFlexVolumeの応用でVVOLへの対応を可能に

 VVOLは6月末からβプログラムを実施しているが、ネットアップのストレージOS「clustered Data ONTAP」ではバージョン8.2.1で、すでにVVOLをサポートしている。理由はVMwareと共同でVVOLを開発してきたことと、VVOLと同じような運用コンセプトをNFS上ですでに実装していたからだという。

 元来、ネットアップのNFS環境では、FlexVolumeという機構を用いて、VMDKをファイル単位で管理している。このファイル単位でクローンやスナップショットをとることが可能なほか、QoSも利用できる。このFlexVolumeの機構をそのままSANに適用すれば、仮想マシンをストレージ上のオブジェクトとして管理するVVOLのアーキテクチャとなるわけだ。clustered Data ONTAPでは、NFSやFC/iSCSIともにFlexVolumeがVVOL Datastoreとして利用可能になっており、ストレージ側でクローンやスナップショットをとることができるという。「もともと(FlexVolumeと)コンセプトがいっしょなので、VVOLの実装も早かった。他社が物理ディスク上にイチからVVOL対応を実装するのは、時間がかかると予想される」(大西氏)。

NFSのデータストアとVVOLはコンセプトが近い

 ネットアップならではのポイントはクローンやスナップショットにおいても、性能劣化が発生せず、秒単位で作成できる点。VVOLのアーキテクチャ上はvSphereから見たPE(プロトコルエンドポイント)以下の実装がストレージベンダーに依存するため、性能や実行時間に差が付くことが予想されるという。これに対して、clustered DataONTAPでは、追記型のファイルシステムの特徴を活かし、同一ブロックを再利用した高速なクローン・スナップショットが実現されており、本番環境での利用においても効果を発揮する。

仮想マシンで高速なストレージクローン機能を利用できる

 また、Virtual Storage Console(VSC) 5.0 for VMware vSphere(vCenterプラグイン)とも統合されており、ウィザードからVVOLデータストアを生成できる。VSC上に表示されたストレージプロファイルを選択すると、VVOL対応のVASA(VMware-Aware Storage API)プロバイダーを経由し、プロファイルに対応したVVOL Datastoreを作成できるようになるという。ここまで来ると、VMwareが描くSoftware Defined Storageの理想にかなり肉薄してくることになる。

 VMwareと統合的な運用を行なえるVVOLのメリットは大きいが、ネットアップが本来主張したいのは、そもそも仮想化環境においてはSANより、NFSのNASの方が優れているという点のようだ。「ネットアップのお客様の8割以上がNFSの運用ですし、中規模環境以上やVDI環境はNFSでの運用がほとんど」(大西氏)。クラウド基盤においては、大量の仮想マシンをプロビジョニングしなければならないが、このときハイパーバイザーとストレージで管理の単位が異なるのは運用に支障を来す。

クラウド基盤のストレージ運用はNFSでのNAS環境はオススメ

 複数の仮想マシンでストレージの性能を共有すると、他のマシンに影響を与える。また、仮想マシン側でスナップショットやクローンをとる際の、性能への影響も注意が必要だという。その点、ファイル単位で仮想マシンを管理するNFSの運用であれば、単一のストレージ領域に多数の仮想マシンを配置することができ、排他制御の面でも性能の劣化が発生しない仕様になっているという。

 ネットアップとしては、NFSによる仮想化環境の運用をメインに、VVOLという選択肢もいち早く提供する。対応モジュールもすでにダウンロード可能になっており、検証にも利用できるという。

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