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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 ― 第110回

Apple PayでついにNFCモバイル決済は普及に向かうか?

2014年09月17日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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 Appleの9月9日のイベントは盛りだくさんというにふさわしい内容となった。最新のスマートフォンに加え、ウワサされていたスマートウォッチも登場した。だが、Steve Jobs氏からバトンを引き継いだTim Cook氏にとって最大の賭けはこれらの端末ではなく、「Apple Pay」だろう。Appleの影響力が健在かどうかを試されることになる。

長らく話題になりつつ、ようやくiPhoneにもNFCが搭載され、Appleはモバイル決済に取り組むことになった

やっと登場、NFCに対応したiPhone

 NFCチップを搭載したモバイル端末を利用して決済を行なうモバイル決済は、日本ではおサイフケータイとして10年前から提供されているものだ。だが、日本など一部の国を除くとモバイル決済は普及していない。スマートフォンの登場以前から、携帯電話の機能や役割を広げてくれるNFCが、将来重要になると言われてきたが、iPhoneが起こしたブームにより後回しになっていた感がある。

 iPhone登場から3年が経過した2010年の後半、モバイル業界は再びNFC機運にあふれていた。2011年の「Mobile World Congress」では、南仏ニースで地元キャリアのOrangeなどが展開したパイロットプロジェクトの「Cityzi」がその経過を発表し、そのほかにも韓国など世界各地で”次はNFC”という興奮を感じることができた。

 だがモバイル業界が最も注目していたのは、Appleだった。次のiPhoneではNFCを搭載するだろうという期待まじりの予想が流れていたからだ。だがその秋に登場した「iPhone 4s」はNFCを搭載していなかった。

 Appleは翌年2012年の「iOS 6」で「Passbook」を発表した。クーポンやチケットなどを管理できるもので、コマースへの足がかりを思わせた。

 一方で、”まずはローンチ、運用しながら修正していく”を得意とするGoogleは、2011年に「Google Wallet」を発表、地域を限定してパイロットを開始した。そしてGoogle Walletに参加していない残りのキャリアが手を組んで、モバイルNFCを盛り上げるべく業界団体ISISを立ち上げた。

 ISISはこのところの政治情勢を受けて、最近名称をSoftcardに変更している(ISISは過激派「イスラム国」の前身の組織名)。このような経緯もあって、Google WalletとSoftcardは対抗と見られている。このパッチワーク状態も、米国でNFC決済が普及していない理由の1つに見える。”フライング”になってしまった感があるGoogle Wallet、そして何度かの延期の末に満を持して2013年に秋にスタートしたISISもゆっくりの様子だ。

トークン手法とTouch IDを利用した
セキュリティーを武器とするApple Pay

 この間、Appleはこれらの動向をにらみながらApple Payに向けた準備を進めていたようだ。New York Timesによると、Appleが最初に外部(クレジットカード会社)に話を持ちかけたのは2013年初めとのこと。同年夏には大手銀行と話し合いを開始したという。Appleが課す厳しい条件の下、プロジェクトはほんの一部が関与する”超”機密扱いで進められ、正式名称や全体の構想も明かされなかったようだ。中には9月9日に初めて名称や参加企業を聞いたところもあったようだ。

 前段で流れを説明した通り、Apple Payのローンチは驚きではない。誰もがいつかはAppleがNFCを搭載したiPhoneを投入すると予想していた。だが、いくつかの仕掛けもある。実際、焦る業界をよそに準備を進めてきただけあって、一見するとよく考えられたサービスのようだ。

 まずはセキュリティー。Apple Payはトークン手法を利用する。Apple Payで利用するクレジットカードを登録すると、実際のクレジットカード番号ではなく、固有のDevice Account Numberが割り当てられ、この番号を取引の際に利用するというものだ。

 ショップでApple Payを利用して支払う際、ショップ側とはDevice Account Numberでやりとりし、各トランザクションごとに動的にセキュリティーコードが生成される。またクレジットカード情報は端末側のSecure Elementに格納され、Apple側は購入履歴などを保存しないとのこと。認証はおなじみ「Touch ID」の指紋認証を利用するので強固といってよいだろう。これに、端末紛失・盗難時にリモートから操作できる「Find My iPhone(iPhoneを探す)」が加わる。

 このあたりは、クレジットカード情報をGoogleサーバーで管理するGoogle Walletと比較すると、安全面とプライバシー面で上回ると言えそうだだ。クレジットカード業者や金融機関にしてみれば、不正利用予防としては高いレベルの対策といえるだろう。

 これに、Appleのお家芸であるユーザビリティー、つまり使い易さが加わる。クレジットカードは写真を取って登録できるし、iTunesに登録しているものを追加することもできる。Google Walletのように手作業で番号を入力する必要はない。Apple Watchでの利用はiPhoneよりもさらにスムーズに、スマートになりそうだ。


(次ページでは、「アメリカの小売り大手は参加しない!?」)

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