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「iPhone 6」&「iOS 8」全力徹底特集! ― 第17回

日本最大級の腕時計正規販売店のCEOがApple Watchを語る

腕時計の目利きが斬る「Apple Watch」のコト

2014年09月12日 09時00分更新

文● 石田憲孝(ベスト販売代表取締役社長)

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 現地時間9月9日、満を持して登場した「Apple Watch」。今回の発表に関して、腕時計正規販売店「BEST新宿本店」「ISHIDA表参道」などを経営し、自身も腕時計のトップバイヤーである石田憲孝氏に寄稿をいただいた。

予想通り保守的だったデザイン

ベスト販売代表取締役社長 石田憲孝氏

 デザイナーについての公式発表はないが、発表されたデザインと今までの情報の経緯から、マーク・ニューソン氏がデザインに絡んでいることは間違いない。彼が時計を発表したのは今から20年くらい前のこと。丸い宇宙船のようなデザインのものからスタートした。その後に、マナティ、ソラリスというスクウェアー形状のものを発表。

 当初、人気を博した先進的デザインも時が経つにつれて、時計業界においての地位向上をめざし高級化したため、急激に求心力を失った。もともとマーク・ニューソンの作りだすデザインは近未来的で流麗なものが多く、それが身の回りに点在するアートとして魅力的であった。30万円程度の時計であれば物珍しさで購入できるものでも、さすがに100万を軽く超えていくものになるとその近未来感が邪魔をしてユーザーが離れていった。

 時計では失敗したが、今度はアップルの時計を手がけるに至った。金額ではなく、その話題性はマーク・ニューソンにとっては間違いなく魅力的であったろう。しかし、時計業界においてはすでにApple Watchのデザインは斬新でも近未来的でももはやない。アップルにしては保守的なものだった。一般的にはもちろん、魅力的にうつるかもしれない。

 ようするに時計をしてきた層と時間は携帯でみれば十分だと思ってきた層で、評価は大きくわかれる。時計業界をよく知る人にとっては、拍子抜けな発表だったはずだ。

 僕の知り合いがApple Watchの営業のトップについたが(本国で)、時計業界で売るかどうかは別としていろんな弊害も考えられる。

右から二人目は撮影当時タグ・ホイヤーに在籍し、現在はアップルに席をおくPatrick Pruniaux氏と石田氏

 例えば、その一つが時計のストラップに対しての問題である。マグネット式は時計業界では今までも多々挑戦されてきたものであるが、いまだ確実なものができていない。時計というカテゴリーで考えるとApple Watchのマグネットシステムのものはあまりにも簡単だ。ベルクロ式にして長さを保つことによりマグネットを補完している。メタルブレスのものはブレス調整をどこでどのようにやるのかも非常に興味深い。もしくは簡素的なシステムになっているのか?

発表ではミラネーゼループ、レザーループのモデルはマグネット式バックル仕様だ

 時計業界は100年以上続く業界で、そこでストラップのシステムも多く挑戦されている中、まだ、完全なものはないといえる。もっとも問題なのはブレスの調整で、その調整を簡素にかつ丈夫に、絶対はずれないようにすることがいまだ目標だ。

 そのレベルを目指していない時点で、時計業界の考え方ではないのだ。アップルだからこそなせることだ。他にもブレスのバックルのつくりや、サファイアガラスの面取りなど、時計業界ではやらないことをやるのもさすがである。このような細部は時計業界では修理の作業性(修理ができないとか)、安全性(防水や品質)にかかわってくる。例えば時計業界では車のようなカラーの鉄がない。これもともかく、服とこすれたりと非常にタイトな利用空間において剥げてしまう可能性が高いからだ。時計業界ではタブーなことをアップルだからこそできる。

 逆に言えばApple Watchが成功しても、時計業界はそちらへと向かうことはないといえる。しかし、それで問題がないと判断されれば、時計業界も大きくそちらに舵を切るかもしれない。そのときはかなり造形的に楽しくて、魅力的な時計が実現することになる。


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