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信頼性の強化とエコシステムで国産PaaSの存在感を示す

kintoneはクラウド型の新しいSIビジネスを切り拓けるのか?

2014年09月11日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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9月10日、サイボウズはkintoneのビジネスに関する発表会を開催した。製品の強化はもちろん、クラウドとしての信頼性強化とエコシステムの拡大を進めることで、プラットフォームとしての魅力をますます高めていくという。

1700社を突破したkintoneに手応え

 発表会に登壇したサイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏は、クラウド事業への投資で赤字を計上したことを前向きに評価した後、創業時からの売上グラフを掲出。cybozu.comのリリースを機に、鈍化した売上が再度上向きになったことをアピールした。

サイボウズ代表取締役社長 青野慶久氏

 cybozu.comの有効契約社数は8000社を超え、kintoneも1700社を突破。「1年目は全然売れなかったが、手応えを感じている。特に4月のkintone Lightの投入で潮目が変わった」(青野氏)とのことで、現在では月間トライアルが1200件、月間問い合わせが1000件、そして月間新規導入社数も100社以上に拡大してきたという。

 kintone開始から2年半を経て、ビジネスモデルの特徴も明らかになってきた。オンプレミスの場合、初年度に売上が集中し、保守料のみの2・3年目は一気に売上が小さくなるが、クラウドの場合は金額は小さいものの「ユーザーを追加するので、少しずつプラスになる」(青野氏)という傾向があるという。当初、機能の絞り込まれたシンプルなPaaSとしてスタートしたkintoneも、カスタマイズやAPI連携が強化され、信頼性も向上。直販からパートナー販売へと商流も大きく変わり、転換期を迎えていると分析する。

オンプレミスとクラウドにおける1社あたりの平均売上推移の違い

 最新の導入事例も披露。企業間でのサプライチェーン管理で使っているアサヒビール中国や、グローバルのBPMに役立てているDeNAなど、グローバルでの事例が増えているほか、医療分野でも事例が登場。医療法人ゆうの森では患者の情報をkintoneでデータベース化し、「症状が悪化したどうするかまで登録されている。運用効率が上がって、黒字化までこぎつけた」という。

脆弱性報奨制度で高い安全性を実現

 次に青野氏はkintoneの製品としての信頼性や強化点について言及した。クラウドアプリケーションであるkintoneは2012年1月以来、17回177件におよぶ機能追加を実施。直近の9月には、Garoonのスケジュール機能とkintoneの顧客・案件管理が連携する機能を追加する。

API、スマホ対応、カスタマイズ、プラグインなど、17回177件におよぶ機能追加を実施

 運用に関しては、99.9979%という高い通算稼働率をアピール。セキュリティに関しては、未知の脆弱性を発見することによって報奨金を支払う制度をスタートさせたことで、報告件数が3倍に跳ね上がったと報告した。ちなみに脆弱性認定件数は83件で、kintoneは1件のみ。青野氏は、「すでにお支払額は280万円まで確定しており、うれしくもあり、(どこまで用意できるか)不安でもあり。でも、見つけていただき、大変ありがたい」と語る。

 さらに運用と開発を組織的に分離したほか、社内横断的なセキュリティ専門チームである「CSM」や外部からの通報に適切に対応するインシデント対応組織である「Cy-SIRT」を設置。開発者、オペレーター、ソフトウェアを信用しないタフな原則を適用することで、「日本の独立系のソフトメーカーではもっとも高いレベル」(青野氏)を実現しているという。

外部と協力した脆弱性への取り組み

厳しい原則などを掲げるセキュリティを守る体制

(次ページ、パートナーから見たkintoneビジネスの実情)


 

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