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イスラエルITいろはにほへと 第8回

スタートアップを成功に導く3つのマインド

2014年09月10日 16時00分更新

文● 加藤スティーブ(ISRATECH)

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相澤智哉

MegaCips Technology Americaの戦略マーケティング担当副社長の相澤智哉氏。2004年ころからイスラエルのスタートアップとチップビジネスを推進

前回に引き続き、MegaChips Technology Americaの相澤智哉氏にイスラエルの半導体周辺ビジネスについて語ってもらった。


弊社と関係の深いB社を例にして、イスラエル企業の一面を紹介したい。

B社は、2000年に起業したホームネットワーク技術のスタートアップ。しかし単なるスタートアップだったB社は、ITU(国際電気通信連合)で国際標準を主導しつつ、米国の通信会社までのサプライチェーンを把握し、かつ量産化に至るまでの数年間を売り上げゼロで生き延びるため資金を獲得。最終的には米国大手電話会社のホームネットワーク技術に採用されて成功した。

筆者がこの会社にコンタクトしたときは、弊社もSerDes以外には特段の売りがなく、またB社の売り上げもほぼセロの状態。最初のミーティングに偶然同席していたCEOに対して「御社には間違いなく明るい未来がある。弊社は小さなASIC会社ではあるが、なんでもやるので、御社の発展に協力させてほしい」と、今から思えば恥ずかしくなるようなことを放言した記憶がある。その時にある副社長が「AFE(Analog Front End)はできる?」と私に尋ね、勢いで「イエス!」と答えたのがB社とのパートナーシップの始まりだ。

その後のAFE共同開発で強く感じたのは、

 (1) 質問や要求に遠慮がない(パートナーの苦労への労わりは要求の後)
 (2) 説得をあきらめない(しつこい)
 (3) 論理が明確((特にリスク判断や不具合の解析)

ということだ。

最初のサンプルでシステム評価の性能が出ずに対策が1年にも及んだが、そのときの彼らの質問や要求の遠慮のなさ、説得の強さ、その背景にある論理の確からしさは今でも忘れられない。このチップが量産化に至るまでは、さらに1年以上も待たねばならなかったものの、今ではそのAFEチップが某米国大手電話会社のテレビサービス向けセットトップボックスやゲートウェイに100%搭載されている。このような製品の成り行きを、今から十数年前に数人のタレントが集まってストーリーを描いていたという事実は、イスラエルのスタートアップのすごさの一面だろう。

ちなみに最初のミーティングで会った副社長は現在別のスタートアップを興しており、今でも我々の重要なパートナーだ。


筆者紹介──加藤スティーブ


著者近影

イスラエルの尖った技術に着目して、2006年にイスラエル初訪問。2009年にISRATECHを設立し、毎月40〜60社のスタートアップが生まれるイスラエル企業の情報を日本へ発信し続ける。2012年にはイスラエル国内にも拠点を設立。イスラエルのイノベーションを日本へ取り込むための活動に着手する。ダイヤモンドオンラインにて「サムスンは既に10年前に進出! 発明大国イスラエルの頭脳を生かせ」を連載。



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