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ソフトウェアの時代は終わったのか?

2014年08月27日 16時00分更新

文● Matt Asay via ReadWrite

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そうではない。来たる「ハードウェアの時代」にこそソフトウェアが求められているのだ。

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有名なテクノロジー評論家のマイケル・S・マローンによると、サンフランシスコはこれからスランプに陥るという。

マローンはこれまで30年以上テクノロジー記者として活躍している。最近ウォールストリートジャーナルに掲載された彼の評論記事は「プログラマーのゲシュタルト」と題され、これから訪れる「デバイスの時代」には「より年齢層の高い家族を持った偏狭で実用主義」の人々によって支配されるとしている。

しかしこの記事に私は問題を感じている。何故ならその主張は全く間違っているからだ。

機械の時代

多少言いすぎかもしれない。確かにマローンの主張するようにハードウェアの重要性は増している。それはサーバーやデータセンターなどの大きなものではない。モノのインターネット(IoT)を形成する、お互いが繋がりあう小さなデバイスの集合体がこれからは重要なのだ。寝るときにも取り外さないFitBitや、耕運機に搭載される最新のセンサーなどが世の中を変えることになるだろう。

すべてにおいてデバイスがポイントとなる。

マローンがこれらのデバイスに惑わされ、数十億を超えるその数に圧倒されても無理がないのかもしれない:

シリコンバレーはドットコム・バブル以来、20年程ソフトウェアに支配されてきた。我々はプログラム・コードの時代を生きており、それに伴いプログラマーのゲシュタルトが生まれた。この人は若く、独身で都会的。ユートピアを信じる夢のある人間だ。遊び人の学生がそのまま億万長者になるようなものだ。ただこの時代はもう終わりを迎えようとしている。ハードウェアのサイクルが加速し、腕時計やウェアラブル端末、モバイル医療機器、自動運転走行車、ドローン、3Dプリンターとセンサーの革命的な進化によって時代は変化している。そしてこのハードウェアサイクルにIoTが作り出すクラウドが合体することになる。

我々は今デバイスの時代を迎えようとしている。この次世代はモノを作る者により支配され、その立役者の年齢層は高く家族持ちで偏狭で実用主義者になるだろう。これによりシリコンバレーのスタイル、人、態度はかつて計算機やPCが君臨した時代へと戻り評判が悪化する。一方のソーシャルネットワークの巨人たちの肩身は狭くなっていく

これは我々オジサンにとっては楽しそうな話だ(なんといっても私も41才だ)。それに確かにハードウェアを取り巻く文化がサンフランシスコからシリコンバレーへ入り込む可能性はある。例えばグーグルのGlassや自動運転車両やTeslaの電気自動車やアップルの美しいハードウェア製品等がこれにあたる。

だがこういったビジョンは、ハードウェアが一本の「木」だとしてソフトウェアがすべてを包む「森」であることを見逃している。

機械にはソフトウェアが必須となる

ハードウェアはその上で動作するソフトウェアの存在無くしては何の意味もなさない。アップルの驚異的な成長は美しいデバイスというよりはiTunesのおかげであり、グーグルのGlassがうっとうしくもクールなのは中身のソフトウェアのおかげなのだ。

Red Hatのクリシュナン・サブラマニアンは私にこう話してくれた:

IoT時代にソフトウェアの役割が減ることは考えられませんし、私はこの主張に強く反対です。むしろより高度なソフトウェアを開発するための土台となるでしょう。確かに新しいデバイスの市場は生まれるでしょうが、それによってソフトウェアが代償とはなりません

そもそもIoTはハードウェアによって作られるわけではない。IoTは各々のデバイス同士が通信しあうソフトウェアがあってこそ初めて成立する。以前にも書いたように数百万人ものデベロッパーが一緒になりこのIoT時代を築くわけであり、彼らのほとんどはソフトウェアの開発者になるのだ。

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確かにハードウェアも儲かるかもしれない。しかし(Boschのような)賢いハードウェア・メーカーは規格の標準化を推進しており、それはその上に乗っかるサービスでマネタイズが図れるからなのだ。これまでも言ってきたように、ハードウェア路線だけを進む会社はやがて滅びてしまう。ハードの先にある可能性をインターネット上のサービスと共に融合できるメーカーの将来は実に明るいのだ。

これから世界はハードウェアの黄金時代を迎えるのか?その答えはYESだ。でも何故「黄金」なのかというと、黄金なるソフトウェアの時代がすでにあり、その恩恵を受けるからである。Pivotalのアンドリュー・クレイ・シェイファーがいうように「ソフトウェアには長期的に掛けよ(bet long on software.)」ということだ。

トップ画像提供:Adriana Lee

Matt Asay
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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