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あなたの会社がさらに多くのオープンソースソフトを書くべき理由

2014年08月27日 16時00分更新

文● Matt Asay via ReadWrite

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閉ざされた環境で真のイノベーションは起こらない

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ウォール・ストリート・ジャーナルに、Zulilyで書かれている多くのソフトウェアはインハウスだというニュースが載った。しかしそれは間違いだ。エリック・レイモンドが数年前に書いたように、世界のソフトの95%は販売のためではなく自分たちが利用するために書かれている。そうである理由は数あるが、中でもZulilyのCEO、ルーク・フライアングが言うように「出来合いのソフトだけで我々のようなペースで仕事をこなすのはほぼ不可能だ」という事が大きいだろう。

20年前からそうであったように、今でもこれは正しい。

ただしウォール・ストリート・ジャーナルが見落としている、確実に異なっている点もある。まず社内でつくられたソフトウェアは会社の競争力の源であるとして、これまで厳重に守られてきた。しかしながら今日、企業は社内で秘匿して置くよりも、むしろ逆にオープンソース化してしまった方がメリットが大きいという事に気付き始めている。

これが会社がオープンソースにもっと貢献するべきだという理由だ。他にもある。

歴史的な変化

この20年間は変革期だった。ほとんどのソフトが自社用途で書かれるなかで、幅広い企業のためにソフトを提供するSAPやMSといったベンダーが多くの注目を集めた。

これはあくまで理屈の上だけの話だ。

実際の所、バイヤーはライセンス料に対してわずかばかりのお金を払い、それを自分たちの業務に適合させるために、ライセンスの5倍以上を支払っていた。例えばERPシステムに10万ドル払う企業は、それが使い物になるようにするのに追加で50万ドル支払わなければならないと言った具合だ。

オープンソースが軌道に乗った理由に、機能的に足りていないものをタダか安値で仕入れて、浮いたお金を業務に適合させるためのチューニングに回すことが出来るという事がある。どの道カスタマイズは必要なものだが、オープンソースのやり方は安上がりであり、間違いなくニーズをより満たす結果に落ち着くのだ。

そんな中、テクノロジーベンダーたちはこれまでと同じことを続けることに生き残りを掛けていると、Redmonkのアナリスト、ステファン・オ・グラディーは述べている。

近年、主要なテクノロジー企業は何かに特化することを避ける傾向がある。仮想化アプライアンス ー 目的毎にカスタマイズされたシステムを並行して稼働させる環境 ー はRedHatやWindowsなどから市場を奪うことに完全に失敗した。
20年以上、あることに対するソリューションというのは決まっている。アプリケーション・データ・持続性についてはリレーショナル・データベース、エンタープライズクラスのアプリ開発についてはJavaといった具合だ

しかしこれまで、企業はコンテンツマネジメントシステムのようなよくあるシステムにおいてすら、ベンダーがニーズに完全に応えていると考えてはいない。彼らは自分たちに適合するシステムを求めているのだ。

そこで彼ら企業はベンダに頼るのをやめ、自分たちでベンダ的なことを始めた。

痒いところを自分でかく

オ・グラディーは例によってこの点を指摘した。2010年の記事で、彼は「ソフトウェアベンダーは『自分たちの顧客』という新たな市場の競争相手に向かい合っている」という興味深いトレンドについて触れた。

今日び最もよく見かける技術について考えてみてほしい。そのほとんどがオープンソースであり、更にいうとほぼその全てはかつて企業が業務のために書かれたものであったり、技術者の趣味で書かれたものだった。Linux,Git,Hadoop,Cassandra,MongoDB,Androidなど、枚挙にいとまがなく、これらの中に最初から販売目的で作られたものは存在しない。

これらは企業(多くはWeb関係)が自分たちのニーズを満たすため、もしくはオープンソースでよく言われるところの「痒いところを自分でかく」為に書かれたものである。そして銀行や病院その他で作られた昔の世代のソフトとは異なり、これらのソースはオープンにされた。

メンテナンスの手間を嫌って自社でのソフトづくりを避ける企業がある中、オープンソース化によってもたらされるプロジェクトでのメンテナンス・拡張によってこれらの労力は低減させる事も出来、それによって最初の開発にかかったコストの償却もできるようになる。Hadoopを始めたのはYahooだが、最大の貢献者は今ではClouderaでありHortonworksだ。FacebookはCassandraを立ち上げたが、今、主にメンテナンスを行っているのはDataStaxだ。こういった例はいくらでもある。

もう諦めよう

ソフトウェアにおけるイノベーションは、今日閉ざされた環境の中で起こってはいない。もし起こっているとすれば、それはいつまでもそこにはいない。オープンソースは旧来の構図を大きく変え、その正当性が確立されたものだ。

これは気の小さい人に向いていることではない。

もっとも優れたオープンソースプロジェクトでは、イノベーションは驚くべきスピードで起こる。これは誰かが単に、あなたがオープンにしたソースの面倒を見るよというようなものではなく、オープンにするかしないかについて賛成・反対共に様々な論争を巻き起こすものだ。しかしながら最大の「賛成派」たちは、オープンにされたコードに貢献することを望む最高の技術者たちだ。(優れた技術者を巻き込むには、彼らが好む仕事の場を用意する必要がある。Netflixに聞いてみるといい)

関連記事:共食いするオープンソース・ソフトウェア

関連記事:「コードのオープンソース化」のメリット・デメリットを考える

だからといってこれは他人事を決め込む理由にはならないだろう。定義があやふやな「コミュニティー」の利益のためではなく、自分自身の利益の為にも参加するべき時だ。オープンソースによるソフト開発の第一の利益享受者は、あなたでありあなたの会社なのだ。

トップ画像提供:Shutterstock

Matt Asay
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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