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2周波数出力でプラズマを効率的に加熱し、核融合炉に向け大きく前進

原子力機構、核融合炉に必要な高性能マイクロ波源を開発

2014年08月22日 18時14分更新

文● 行正和義

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開発した2周波数ジャイロトロンと核融合実験装置JT-60SA用ジャイロトロン(JT-60SAには9基のジャイロトロンが装備される)

 日本原子力研究開発機構(原子力機構)は8月21日、核融合炉用燃料プラズマ加熱マイクロ波源「ジャイロトロン」の研究を進めた結果、2周波数を出力可能なジャイロトロンを新たに開発、核融合炉に必要となる1000kW出力を100秒以上維持することに成功したと発表した

マイクロ波の周波数によって加熱位置が変わる概念図(左)と2周波ジャイロトロンの構造(右)

 核融合炉では燃料プラズマを数億度に加熱するため強力なマイクロ波を入射するマイクロ波源を用いる。ジャイロトロンは電子を強磁場中で加速し、その回転エネルギーをマイクロ波に変換するものだが、これまでジャイロトロン内の損失エネルギーが熱となることから長時間の連続動作ができなかった。

建設中の超伝導トカマク型核融合実験装置JT-60SA5(左)とジャイロトロンの配置(右)。JT060SAは核融合炉ではなく実験装置だが、核融合炉開発を目指す国際熱核融合実験炉(ITER)計画の一貫

 このため、これまではエネルギー損失が少なくなるよう1つの周波数に絞ったジャイロトロンを設計・実験していたが、原研では新たに3極型電子銃を用いた電子ビームを使うことで周波数を変えつつ低損失が実現できることに着目。110/138GHzの周波数を切り替えて照射し、1000kW出力を100秒以上持続することに世界で初めて成功した。

世界のジャイロトロン開発と今回の成果

 これは核融合炉に必要な性能を満たしており、茨城県那珂市に日欧共同で建設中の超伝導トカマク型核融合実験装置「JT-60SA5」に使用し、実験装置の高性能化を目指す。また、開発の成功は核融合炉を高性能化するための加熱位置可変マイクロ波加熱装置の実現に向けて大きく前進するものだという。

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