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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第108回

AmazonがSquare対抗のクレカ決済サービス開始、赤字でもする理由は?

2014年08月21日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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 米Amazonが先週、モバイル端末でクレジットカード決済ができる「Amazon Local Register」を発表した。Squareなどが開拓した分野に、低料率をウリに挑戦状を突きつける。社名の由来であるアマゾン川のごとく小売業界を飲み込むAmazon、同社のクレジット決済サービス参入をいくつかの方角から見てみたい。

SquareやCoineyなど、スマホを使ったクレカ決済はすでに先行サービスが多数あるが、このタイミングでAmazonが参入してきた

利益が伸びず、盛り上がりが一段落した
スマホを利用したモバイルクレジットカード決済

 専用のクレジットカードリーダーをモバイル端末のイヤフォンジャックに挿入し、アプリと連携してクレジットカード決済ができるというモバイル決済の手法は大掛かりなシステム投資なしにクレジット利用のニーズに答えられることから、カフェや花屋といった小規模なショップ、タクシーやフードトラックなどにじわじわ広がっている。

 大きく貢献したのは、この分野の草分け的存在であるSquare。創業者であるJack Dorsey氏のプロフィール(Dorsey氏はTwitterを共同創業している)もあって、2011~12年頃に”次のトレンドか!”とメディアを騒がせた。Squareのほか、ベンチャーならCoiney、eBay傘下のPayPal、中小規模企業がよく利用する会計ソフトなどを提供するIntuitなどの大手も参入。日本でも複数のサービスがスタートしている。

 そのSquareがスタートした2010年から4年が経過した。現在市場はというと、昨年後半ごろから厳しい目が向けられている。その理由の1つが(単体での)長期的な収益性への疑問だ。

 決済サービスのビジネスモデルは取引高に応じて手数料をとるというものだ。カードリーダーは10ドル程度、実質的には無料になるケースも多い。アプリももちろん無料。つまりこの端末を持つ商店で顧客が利用して、ようやくわずかな手数料を得られるというものだ。

端末代は10ドルだが実質的には無料

 その手数料の料率たるや、Squareは2.75%、PayPal Hereが2.7%。100ドルで2.7~2.75ドルが入るが、実際にはこの手数料の一部をクレジットカード会社に支払い、安全対策も講じなければならない。一部では、Squareの手元に残るのは1%以下という向きもある。例えばカフェやフードトラックで顧客が10ドルを支払ったとしても、Squareは10セント得られるかどうかなのだ。

クレカ決済だけでは儲からないので
多角化戦略に転じたSquare

 eBayを親会社にもつPayPalなどと比べると、このような薄利はSquareのような専業ベンチャーにとっては苦しい。ということもあり、Squareは身売りするという憶測まで流れたが、このところ事業の多角化を図っている。

 たとえば8月初めには食品デリバリーのCaviarを買収した。自社顧客であるレストランやカフェに食品配達サービスも提供できることになる。このほか、ショップ側が顧客に予約サービスを提供できる「Square Appoint」、エンドユーザー向けの決済アプリ「Square Order」など、決済にとどまらない分野に拡大している。

 なお、Square Orderは「Square Wallet」の打ち切りに合わせて発表したサービスだ。Square Walletは名前を伝えて顔を見せるだけで決済できるという画期的なものだったが、利用が伸び悩んだ模様だ。Square Orderでは、ショップに行く前にチェックインして店舗に知らせるという点ではWalletと同じだが、Orderは決済まで済ませることができる。

オンラインで注文&決済まで済み、リアル店舗ではサービスを受けるだけという仕組みを提供する「Square Order」

 ちなみにSquareの評価額は50億ドル程度と言われている。

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