このページの本文へ

「モノのインターネット」が未だに開通しない理由

2014年08月22日 07時00分更新

文● Matt Asay via ReadWrite

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

潜在能力は非常に高いが、障害もまた大きい。

MTE5NDg0MDYyMjU0NjYzMTgz_0

「モノのインターネット(Internet Of Things)」が重要事項になることが、ますます真実味を帯びてきている。問題はいつなのかということだ。アナリストの予測によると、すべてのスマートガジェットと「まだスマートでない」ガジェットを1つのネットワークにつなげるためには、2020年までに数百万人の開発者が必要だという。その発展は厳しい道のりになるとIDTechExが新しく詳細なレポートで示している。

関連記事:モノのインターネットには2020年までに何百万人もの開発者が必要となる

インターネットとモノ、両方にとっての眩しい未来

すべてのデバイスが繋がる未来に大きな関心が集まるのは、何も驚くことではない。何といっても、数百億ユニットがまとまったものとして市場に出ることが可能だからだ。ハードウェア、ソフトウェア、そして何よりサービスが、あらゆる方法で収入を得る機会を手にするだろう。

関連記事:モノのインターネットの分析には巨大な市場機会が待ち受けている

graph01

モノのインターネットのポテンシャル

開発者への需要増加も見込まれる。

graph02

IOT開発者の数(2014-2020)

つまり、収入と雇用を生み出す完璧な市場機会が嵐のようにやってくるわけだ。IDTechExは「既存市場は存在感を示そうと巨大な幻想を作り出すが、結局は名前を変えただけで、新しくも何ともないと皮肉を言う者もいる」と言及し、モノのインターネットを軽視すらしている。しかし、それでも私たちには大きな機会が残されている、とも言っている。

モノの氾濫を阻害するものは何か?

しかしながら、技術上の障害は依然として存在する。開発者たちにモノのインターネットを有効に利用するために最も重要な技術は何かと聞くと、Wi-Fi、リアルタイム位置情報トラッキング、バーコード、モバイル、GPSなどが挙がった。

graph03

IOT有効利用のために重要な技術

しかし、そういったビジョンを妨害する致命的問題を、IDTechExの調査は示している。この中にはCIO Insightで取り上げられている事項も含まれる。

1. 世界にはインターネットが普及していない地域もある。グーグルのような企業が気球式インターネットや他の低パワー低コスト方法を用いて普及に努めているが、現時点では成功例は少ない。

2. あまり多くの顧客数を見込めない。現在、自然資源、製造ライン、電力系統、効率的物流ネットワーク、リサイクル、家、オフィス、店、乗り物等に、およそ100億個のセンサーが展開されている。しかし、それらはインターネットに接続されていないどころか、連携もしていない。ネットワーク化の達成には投資が必要だが、回収の見通しがはっきりしないことには実現しないだろう。

Boschなどの企業は、あらゆるモノをネットワーク化することの可能性を理解し、サービスを構築している。しかしほとんどの企業は、理解できていないようだ。

3. 規格の欠如。既に400以上の規格が存在している。それは要するにまったく規格が存在しないのと同義である。メーカーにおいては、独自のプロトコルでデータ・サイロを製造するより、センサーの共通通信プロトコルを構築することが奨励されるべきだ。

#2とも関係することだが、ビジネスはデータを単独で貯め込むより、データをシェアするより魅力的な形に変わる必要がある。各企業が製品やサービスを独占的に作らなければならないと考えている限り、モノのインターネットは誕生しない。

4. 形式の定まらないソフトウェア。ソフトウェア、システム統合、処理における問題は多い。例えば、ミドルウェアは何をすればよいか、分析はデバイスとネットワークのどちらで実行するかといったことを決定しなければならない。#3と関係するが、各センサータイプがデータの収集、送信を異なるフォーマットで行い、どういったAPIハブや統合サイトでも、すべてのタイプに対応するとは考えにくい。現状はほとんど合意が得られていないが、規格化されたミドルウェアがなければどうにもならない。

5. セキュリティ問題。接続されたスマートデバイスのシステムとその他のツールは、攻撃されたり、繊細なデータにアクセスするよう仕向けられたりする恐れがあると、研究者らは危険性を強調している。また、単純に無線ネットワークが許容量を超えさせれば、それを麻痺させることが可能だ。モノとモノがやりとりできないのなら、モノのインターネットは役に立たない。

6. 電源問題。ノードが増えれば、そのバッテリーは充電不可能、あるいは交換不可能に陥ることが予想されるため、おそらく電源創出が必要になる。つまり、周辺の太陽光、あるいは運動エネルギーを電源としてシステムに取り込み、、バッテリーのいらない低パワーガジェット郡を稼動させることが必要になる。

開発者たちが希望になる

このように課題は大きいが、モノのインターネットへの熱意を失わず奮闘している者がいる。開発者たちだ。

Evans Dataの調査によれば、モノのインターネット向けアプリケーションに携わっている開発者は全体のたった17%だが、この数字はこれから上がる見込みで、特にアジア太平洋では急上昇しそうだ。ここ数年、開発者たちは低予算ながらも夢のある仕事で驚くべき腕前を見せてきた。Linux、Hadoop、Raspberry Pi等がその賜物である。

モノのインターネットに課題があるのは事実だが、開発者たちがそれを克服する可能性を持っていることもまた事実なのである。

トップ画像提供:Shutterstock

Matt Asay
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中