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サービスの均一化で実現したスタバのオムニチャネル

2014年08月23日 16時00分更新

文● 伊藤達哉(Tatsuya Ito)/アスキークラウド編集部

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 銀座にスターバックス(スタバ)の海外1号店がオープンした1996年当時、日本の喫茶店市場の主役はドトールコーヒー(ドトール)だった。コーヒー1杯をたった180円で提供したドトールの1995年度の売上高は約400億円。1980年に表参道で出店してから15年で全国600店舗以上を展開するコーヒーチェーンに成長したのだ。

 しかし、スタバは「たばこ臭くない、くつろげる喫茶店」としてブランドを確立し売上高を伸ばし続けた。2014年3月期の通期売上高を比較すると、ドトールが約739億円で、スタバは約1257億円。フランチャイズ中心のドトールに対して、スタバはほぼ全店が直営店であり、ビジネスモデルの違いはあるとはいえ、「少し高くてもいい」と思わせるブランドの価値がスタバの急成長を支えた。

スタバの日本進出の相談を受けたあるコンサルタントは、「日本では成功しない」とリポートで指摘した。「禁煙」が当時の日本の飲食業界で来店者を減らすとされていたからだ。(写真:三浦健司)

 オムニチャネルが、認知、検討、購入の各段階を1店舗で完結させず、SNSからECサイト、実店舗までを一つの購買体験として客をあまねく(omni)包み込むことだとすれば、私たちがスタバで体験するのはオムニチャネルそのものだ。

 ある客が「キャラメルマキアート」と言えば、スタッフは「キャラマキ」などと略さずに「キャラメルマキアート」と復唱する。そばにいる客も「キャラメルマキアート」という正確な商品名を知り、覚えた商品は全国どこでも買える。
 最も小さいカップは「ショート」であり、仮に客が「Sサイズで」と注文しても「ショートですね」と言い直す。以前はレジの横に並んでいたカップの見本が、現在は置かれていないのは、客がカップの大きさを把握したと判断したからだ。

 客を育てながらブランドをつくり、ブランドを育てながら客を増やしてきたのがスタバだ。また、オムニチャネルが成立するには顧客の顕在化したニーズにどの販売チャネルでも対応できる仕組みが必要。

 アスキークラウド10月号の特集「スターバックスに学ぶ完璧なオムニチャネル」では、スタバが取り組むオムニチャネルの基本「サービスの均一化」から百貨店やコンビニのオムニチャネルの成否を占う。


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