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埋め込みデバイスを使わず不随下肢を動作させる

脊髄損傷を迂回した、信号による歩行制御に世界で初めて成功

2014年08月18日 17時26分更新

文● 行正和義

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コンピュータによる脊髄迂回路は、脳から上肢筋への信号を筋電図として読み取る記録部、記録された信号を処理して刺激パルスに作り変える制御部、および生成された刺激パルスを皮膚表面に当てる磁気コイルで刺激を行う刺激部で構成される

 自然科学研究機構、福島県立医科大学、千葉大学の共同研究チームは8月14日、脊髄損傷により下肢が動かなくなった患者でも歩行を可能とするシステムの開発を進め、世界で初めて随意的に歩行パターン制御に成功したと発表した。

 脊髄損傷などによる下半身まひは、脳からの四肢を動かす神経信号が下肢に伝わらないために起きるが、下肢を制御す筋肉や神経は正常に残っている場合もある。研究チームでは、腕に貼った筋電位センサーから歩行時の腕振り運動を読み出し、コンピューターによる補正をかけたのち腰部にある歩行中枢を磁気的に刺激するシステムを開発した。

コンピューターによる脊髄迂回路の概念図

 健常者でのテストでは、被験者が下肢をリラックスするように指示していても脊髄迂回路によって腕の運動に合わせて下肢の歩行運動が生じ、腕振り運動からの信号によって歩行運動が制御できることを確認した。今後、サルなどの動物試験を経て下肢不随患者へのテストを行うことを予定している。

コンピューターを介した脊髄迂回路による下肢歩行運動パターンの制御

 ただし、現在の方式では座っている状態から立ち上がるための動作や立った姿勢の保持、歩行中に障害物に脚が当たったときの対応もできないなど限界が残る。しかし非侵襲性の(電極などを埋め込まない)システムで下半身まひの患者が歩けるようになる可能性が示されるなど、研究の進展が期待される。

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