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クラウド時代を象徴する、Chromebook特集 第6回

日本とアメリカの違い、熾烈な低価格競争など課題は多い

Chromebook普及に向けた課題とは

2014年08月28日 15時50分更新

文● 松野/ASCII.jp編集部

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今回は、Chromebookが今後普及していくために乗り越えなくてはならない課題について考える。

Chromebookは国内市場でも普及するか?

IDC JapanのPC年間出荷台数の調査結果。法人向けの出荷台数はほとんどの年で家庭向けを上回っている

 まずは国内の企業および教育機関向けに提供されるChromebookだが、そもそも市場がどの程度あるのかを確認しておこう。ここ2年ほどは、法人向けPCの出荷台数が家庭向けPCを上回る状況が続いている。IDC Japanの調査によれば、2013年のPC年間出荷台数は1562万台で、そのうち家庭市場が586万台、ビジネス市場が976万台を占めている(参考:2013年 国内クライアントPC市場実績値を発表)。

 例年にくらべ家庭向けと法人向けに大きな差がついた形となったが、一方では家庭向けPCがタブレットの爆発的な普及により販売台数を落とし、逆に法人向けPCはWindows XPのサポート終了に伴う買い替えで大きく台数を伸ばした格好だ。2012年のデータを見ると、法人向けも家庭向けもほぼ800万台となっており、わずかに法人向けの出荷が上回っている。法人向けPCの市場は家庭向けと同程度か、あるいはより大きいということが言えるだろう。

 タブレットの販売拡大はPCにとって脅威だが、ビジネス用途では長文のメール、文書や表計算などクリエイティブな作業が必要になるため、タイプ機能のないタブレットの採用は見送られるか、あるいはノートPCとの2台持ちが主流となっている。今後タブレットの拡大により家庭向けPCがシェアを落とすことはあっても、法人向けPCは一定のシェアを維持し続けられるだろう。

米NPDグループの調査結果。前年に比べ、Chromebookが爆発的にシェアを伸ばしているのが分かる

 実際に2011年頃から投入が開始されているアメリカでは、Chromebookはどの程度のシェアを獲得しているだろうか。調査会社のNPDグループによると、Chromebookは2013年1月から11月までのアメリカにおける法人市場のシェアが台数ベースで9.6%、ノートPC全体では約21%を占めている(参考:U.S. Commercial Channel Computing Device Sales Set to End 2013 with Double-Digit Growth, According to NPD)。

 2012年の市場シェアが1%にも満たなかったことを考慮に入れれば、その伸び率は驚異的だと言えるだろう。タブレットの増加により総じてシェアを落としているPC業界にあって、Chromebookだけが着実に販売台数を伸ばしているのも大きなポイントだ。第2世代までは存在感のなかったChromebookが、第3世代となってようやく市場に受け入れられつつあるのが分かる。

 アメリカでの爆発的な成功をもって日本市場に乗り込んできたChromebook。日本でもシェア1割を獲得できた場合、年間出荷台数は80~90万台前後だろうか。ただ実際のところ、国内での普及はそう簡単ではない。

 米ガートナーの最近の調査によれば、Chromebookの成長を牽引しているのは教育市場であり、2013年の販売は実に85%が教育向けだったとしている。本特集第4回において、ジャーナリストの西田宗近氏は、高校以上ではタイプ機能を必須とするアメリカ教育とタイプ機能にこだわらずタブレットを多く導入している日本教育の違いについて触れ、日本の教育機関に限ってはChromebookは流行しないだろうと予想している。現状、アメリカでは8割以上の販売を教育市場に頼っているChromebookにとって、教育機関への導入の推進は大きな課題となるだろう。

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