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映画『STAND BY ME ドラえもん』を手掛けた「白組」オフィスにお邪魔してお話をうかがった

えっ、指紋つきのドラえもん!? 3DCGに込められた「質感」へのこだわり (2/3)

2014年08月08日 08時00分更新

文● 松野/ASCII.jp編集部

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完成できるギリギリを目指している

花房真氏

八木 『ナキ』の時は髪を束にしてたけど、『ドラえもん』ではちゃんと毛を1本1本にしたいとか。あと「広い画」をたくさん作りたいと。街がバーッと広がっているとか、未来の世界とか。でも、それをやるとメモリーを食うんです(笑)。完成できるギリギリを目指してるので、スペックは使い切ります。

鈴木 植物も細かいものを用意したり、キャラクター数も多いし、今回もけっこう冒険しましたね。

八木 『ナキ』では手を出したくても出せない部分があった。時間をかければできるけど、そのぶんお金がかかる。広くても何もない水平線とか、そういう画を多くせざるを得なかったんです。今回は色々詰め込めてます。『ドラえもん』ではマシンが早かったり、人が慣れていたのもあるし、何ができて何ができていなかったか、ということをリストアップして、きちんと整理できていたことが大きい。

レンダリングサーバー。ピーク時で約250台が稼働していたとのこと

鈴木 ハードの性能面でいうと、最後のレンダリングが最も負荷が大きいです。尺が長ければ長いほど大変。前作だとカメラワークが少な目だったり、一枚の大きな画を作ってパームしていたところを、今回は真面目にリソースをかけています。

八木 『ナキ』は全部変換でやってました。2Dの絵を1度つくって、さらに別の会社で3Dに起こしてもらうんです。今回は作品全体の1/4にあたる20分ぐらいの場面を、ちゃんとLとRのカメラを作って、倍のレンダーを使って撮影しています。そうすると時間も倍かかるんですけど(笑)。

時間がかかるのは「アセット作り」

実際に見せていただいた「のび太」のCGモデル。やわらかい質感が表現されている

八木 工程は、まずシナリオの執筆がありまして、その裏でキャラクター、シナリオに合わせた小物や背景を開発します。「アセット作り」というんですが、表情や動きはどこまでやるのか、というところを確定するまで詰めていく。シナリオができて、絵コンテが上がってきたら、CGで大まかなレイアウトを組んでみる。これが決まるまで大体1年半ですね。準備期間、基礎作りが長い。

花房 準備をキチンとやっておかないと、例えばキャラクターがちゃんとできていないと、実際にカットが決まったあとのシーン作りに影響が出るんですよ。これを2時間アニメーションさせると思うと、手は抜けないですよね。結果的に、最初のほうに力がいきがちになってしまう。

鈴木 キャラクターの計算をするにも背景データがちゃんとなくちゃいけないんです。たとえば、空き地の中だけで1400万ポリゴン。外の民家とかも3500万ポリゴン。リアルタイムでは開けないですね。計算して初めて絵がわかる。ちなみにキャラクターで言うと、ドラえもんが29万ポリゴン、のび太が86万ポリゴン。一般的なシーンで、4000万ポリゴンぐらいです。データは最終的にレンダリングサーバーに全部集約されるんですが、普通のマシンでは耐えられないですね。ピーク時は数100フレームと計算したものが1週間帰ってこない。失敗すると大変です、全部撮りなおさなきゃいけないので(笑)。

空き地のデータ。これだけで約1400万ポリゴン

八木 映画自体の解像度は2Kなんですが、広告なんかでもっと解像度の高い、5Kとか6Kの絵を要求されたりします。『ナキ』の時は当然ボロボロのものが出てくるんですよ(笑)。でも今回は違います。作り込み過ぎて映画では確認できないぐらいのものになってます。

鈴木 モデルにはテクスチャを貼りつけるんですが、今回は全体を通して4Kのテクスチャを使っていて、のび太1人にテクスチャを61枚貼っています。

花房 映画は2Kしかないのにね(笑)。映画の中でもすごくモデルに寄るところがあって、寄った用のモデルを別に作るのはコストがかかりますし。CG映画ってハリウッドのものが凄いけど、あれに勝たなきゃいけない。お客さんは同じ1800円払って見るのに、負けていると「なんで日本の映画は」と思われる。それは嫌なので。

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