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え~ぶい! 第4回

真のアンツィオ戦は見どころ満点、4.1chで劇場の興奮を自宅でも

やっぱりすごい! ガルパンOVAの「センシャラウンド改」を体験

2014年08月20日 17時00分更新

文● 鳥居一豊

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実力の高い小型スピーカーを使い、4.1チャンネルサラウンドを実現!!

 しかし、家庭でサラウンドシステムを実現しようと思っても、なかなかにハードルが高いと感じる読者も多いだろう。一番の問題は後方にスピーカーを配置することだ。配線の引き回しの問題もあるし、リビングなどの生活空間にサラウンドシステムを取り入れようとすると、後方のスピーカーが邪魔になることが多いためだ。

鳥居一豊さんのご自宅にあるソニーの4Kプロジェクター「VPL-VW500ES」(価格:84万円)を使い、150インチの大画面でガルパンを視聴。戦車道の試合を臨場感満点で観戦したい。

 そんな事情もあり、最新のシアター用スピーカーシステムでは、バーチャルサラウンド技術などを使い、テレビの周りに置いたスピーカーだけで仮想的に後方の音を再現するシステムが人気だ。たくさんのメーカーからさまざまな製品が発売されている。

 だが、仮想的なサラウンド再生と、後方に実スピーカーが存在するシステムでは、仮にそれが安価なスピーカーであっても、後方の音の再現性に大きな違いが出る。筆者なら、比較的高価なバーチャルサラウンドのシアタースピーカーよりも、安価なシステムの方がサラウンドの満足度は高いと感じている。量販店に脚を運べば、スピーカー5本とサブウーファーのセットで3万円といったものもある。

 しかし話をよく聞くと、編集部Kはオーディオ好きで「どうせ買うなら映画だけじゃなくて、音楽再生の質にもこだわりたい」のだという。

 というわけで「手のひらに乗るようなコンパクトなスピーカー5つと、サブウーファーの組み合わせならば実現しやすいし、配線の引き回しさえきちんと整理すれば、後ろのスピーカーは壁掛けや天井吊りもできる」という提案をにべもなく却下。「それでは肝心の音質が不十分だ」とわがままななことを言いだす始末。

 逆に編集部Kが提案してきたのが、Hi-Fi用の小型スピーカー4本とサブウーファーを組み合わせたシステムだ。音楽再生用として十分な実力のある小型スピーカーを2セット使用し、コンパクトなサラウンド再生環境を実現しようというわけだ。

「ELAC 301.2XL」(価格:ペア8万6400円)と「DESKTOP STAND 301 SILVER」(1万2960円)。ぱっと見ものすごく小さく、この広い部屋には力不足なのではと思うかもしれないが、実際に聴くとそのスケール感の大きさと、解像感が高く豊富な情報量に驚かされる。

 かくして我が家に持ち込まれたのが、ELACの小型スピーカー「301.2XL」「301.2」(各1セット)。そして、OPPOのBDプレーヤー「BDP-105JP」だ。

リアに置いたのは「ELAC 301.2」(価格:ペア8万4240円)。縦横はXLと同じだが奥行きはかなりコンパクトだ。壁掛け用のマウントやフロアスタンドなどもあり、設置の自由度が高い。

 ELACの301.2は、幅91×奥行き125×高さ121mmというコンパクトさ。振動板は20mmのシルクドームと78×108mmの楕円形アルミ・ハイブリッド・ウーファーとなっている。アルミ押し出し材を使ったエンクロージャーは剛性もしっかりとしていてずっしりと重い。

 ELACというドイツのメーカーは、国内でも人気の高いスピーカーブランドだが、人気の理由のひとつと言えるのが、「鳴りっぷりの良さ」。ラインアップはコンパクト機やトールボーイ型が主体だが、特に小型スピーカーの分野では独壇場的なポジションを占める。「良好な定位」や「立体的な空間の再現性」に加えて、大型スピーカーにも負けない堂々としたスケール感を楽しめるのだ。

 とはいえ301.2シリーズのように、手の平サイズと言わないまでも、片手でつかむことができる小さなスピーカーを使い、16畳を超えるようなリスリングルームでどこまで迫力のある再生が楽しめるのか心配な人もいるだろう。しかしその点の心配は無用だと言っておこう。

BDP-105JP(オープンプライス)は、ブルーレイやDVDはもちろんSACDまで再生できるユニーバーサルプレーヤーだ。

 OPPOのBDP-105JPは、同社の上級BDプレーヤーで、国内のAC100Vに最適化した電源回路を備えたモデル。BD/DVDはもちろんのこと、CDやSACDの再生も可能なユニバーサルプレーヤーで、しかもネットワーク接続によるハイレゾ音源の再生までできる多機能モデルだ。オーディオ用のD/AコンバーターにESS社の高音質DACを搭載するなど、音質へのこだわりもかなりのレベル。またBDなどの映像を4K24pへアップコンバートする機能も備えている。

 上位にはDARBEE VISIONの映像処理回路を備えた「BDP-105DJP」というモデルもあるが、音声信号処理回路や電源などは同等。高機能かつ高画質・高音質なBDプレーヤーとしては、現在トップクラスにあると言えるモデルだ。

サラウンドシステムのスピーカー設定などは、AVアンプにお任せ

 ではさっそく、スピーカーの設置や接続をしていこう。筆者宅にはもともと4.1chのスピーカーシステムが組まれているので、接続はスピーカーの置き場所さえ決まってしまえば、スピーカーケーブルをつなぎ替えるだけで済む。

鳥居さんが導入しているパイオニアの「SC-LX83」(販売終了)。パイオニア独自の自動音場補正機能「MCACC」を使って、位相特性の乱れや定在波の干渉といった音質低下の要因も的確に補正できる。

 このあとは、AVアンプの自動音場補正機能にお任せ。現行のAVアンプならば一部の低価格モデルを除いてほぼすべての機種に備わっている機能で、部屋やスピーカーの設置状況に最適な音響設定を自動調整してくれる。付属する測定用マイクを使って、各チャンネルのスピーカーの音を計測し、各チャンネルに接続されているスピーカーの有無、配線の間違いなどのチェックから、各スピーカーの音量、距離、周波数特性を測定し、最適なバランスに調整するものだ。

 ちなみに、AVアンプは筆者が使用しているパイオニアの「SC-LX83」を使用している。

自動補正適用前(左)は周波数帯域ごとにバラバラだった残響特性が、自動補正を適用後(右)には各帯域とも直線に近づいている。特に低域の部分の乱れが補正された。

 LX83には前述したスピーカーの音量や距離、周波数特性の補正及び調整に加え、独自の「フルバンド・フェイズ・コントロール」により、位相特性や群遅延特性の補正、部屋の音響のクセの原因である定在波(ある特定の周波数の音=主に低音が強調され、音のこもりや不明瞭な響きの原因となる)の除去などの機能も持つ。

 これらは一般的な家庭の室内(オーディオ再生に特化して設計されたわけではない部屋)で、より理想的な音響を実現するために有効な機能だ。

 専用のマイクを三脚に固定して、視聴位置に置き、測定を開始。しばらく待って測定が完了すれば、準備は完了だ。スピーカーは小型と判別され、再生できない低音域はサブウーファーが受け持つ設定となっている。そのクロスオーバー周波数もAVアンプが最適に設定している。

音楽再生でも積極的に活用したい「2.1chシステム」

 小型スピーカーの弱みである低域をサブウーファーで補う2.1ch再生は、オーディオの世界ではかなり昔からある手法だ。きちんと設定したサブウーファーと組み合わせれば、制約のあるスペースでも、大型のスピーカーでの再生に匹敵するような充実したサウンドを楽しむことができる。

 たいていのサブウーファーには「ハイカットフィルター」と呼ばれる、特定の周波数より上の帯域をカットするつまみが設けられているし、音量調整用のボリュームもある。あとは小型スピーカーが低域をどこまで再生できるかを調べ、それより下の音だけをサブウーファーで再生するようにし(クロスオーバー周波数の調整)、スピーカーとサブウーファーの音量を微調整するだけだ。

2.1ch環境でもAVアンプは大げさじゃない

 しかしこれを自分の耳で合わせるのは到底無理。できるのはごく一部の超人だけだ。

 やはりスピーカーの周波数特性や音量を測定する機械が必要だ。しかしながらHi-Fi再生をうたうプリメインアンプには、そのような機能はないし、自室の音響特性が分かる測定器を持っている人もほとんどいないだろう。だから、小型スピーカーにサブウーファーを組み合わせた2.1ch再生は、理論上シアター用途だけではなく、音楽再生にもかなり有効だと言われながら、一般にはほとんど普及していない。

 ところが、AVアンプであればその測定および調整を自動で行える。

 今回はサラウンドも含めた4.1ch再生だから、もともとAVアンプの独壇場ではあるが、実は小型スピーカーでHi-Fi的に2.1ch再生を楽しみたい場合でも、AVアンプはかなり便利な機器として活用できる。AVアンプ自体もハイレゾ対応のネットワーク再生機能を備えるなど高機能化しており、より質の高いオーディオ再生を楽しむためにもAVアンプはおすすめなのだ。

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