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myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第31回

冬コミ87のトレンドは6~8月のpixiv投稿数を見ればわかる!?

再びコミケとpixivの二次創作人気を調べてみた(夏コミ編)

2014年07月31日 18時00分更新

文● myrmecoleon

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 この連載では、独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画やpixivの現在を紹介していきます。今回は再び開催迫ったコミックマーケット86関連の話題を取り上げてみましょう。連載一覧はこちら

筆者紹介:myrmecoleon

 明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2014』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
 Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

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ついに「艦これ」が「東方」を抜いた夏コミ86。昨年の冬コミ85に引き続き、人気ジャンルとpixivでの投稿数に関係はあるのか調べてみた

今年も暑いコミックマーケット86
人気トップ5は艦これ、東方、黒子、進撃、アイマス!

 例年通り、8月15日から17日にかけて東京お台場の東京ビッグサイトにおいて同人誌即売会「コミックマーケット86」が開催されます。コミックマーケットは、ニコニコ動画などの投稿サイトが登場するずっと以前からプロではない個人の作品発表の場として重要な地位を占めていたイベントです。来年3月末には40周年を記念した「コミケットスペシャル6 ~OTAKUサミット2015~」も開催。

 特にマンガやアニメの二次創作的な文化はコミケをはじめとする同人誌文化によって支えられてきた部分が大きく、またここでの二次創作の盛り上がりは、現在も多くの企業やクリエイターに注目されています。

 この連載では第16回で前回「コミックマーケット85」に関しての記事を書きましたが、今回もコミックマーケット86の人気の動向と、人気作品のpixivでの動きをみていきます。

コミックマーケット86のジャンルコード一覧(公式サイトより)

 第16回でもご紹介した通り、コミックマーケットではすべてのサークルは「ジャンルコード」という記号を付けて申し込まれます。このジャンルコードは発表する同人誌の内容などである程度決められており、そのサークルの傾向をみる材料になります。

 各サークルの申し込んだジャンルコードはコミックマーケットのWebカタログ等で公開されていますので、これを使ってどのようなサークルがどれくらいの割合存在するかを概観することができます。

 おもなジャンルの比率としてはグラフ1の通りです。前回とは大きくは変わりませんが、例年夏コミでは男性人気の高いジャンルの比率が減り、女性人気の高いジャンルが増える傾向があります。今回も「男性向」が前回から2ポイント減少、女性人気の高いマンガ系のジャンルが各1ポイント増加しています。

 また「同人ソフト」が前回から1ポイント減少、代わって「ゲーム」が1ポイント増加していますが、これは後述する「東方」サークルの減少と「艦これ」サークルの増加の関係と思われます。

 コミックマーケットにはここ10年ほどは毎回約3万5000のサークルが参加しています。

 これらの参加サークルをおおざっぱに分けると、二次創作中心のマンガ・アニメ・ゲーム・小説関連のジャンルが約半数、また半数以上が二次創作の「男性向」(いわゆるエロ)と「同人ソフト」(同人ゲームや同人音楽など。ネット関連やボカロもこちら。半分は東方Projectの二次創作)が合わせて2割強と、およそ6~7割程度が何らかの作品の二次創作を主とするサークルです。

 そのほか、オリジナルのマンガ作品や小説やゲーム、芸能人やスポーツ選手や歴史上の人物のファン作品、各種の評論など、さまざまな同人誌・同人作品を出しているサークルがあります。

公開されているコミックマーケットWebカタログのジャンルコード情報を参考にいくつかに区分けしたコミックマーケット86のサークル数の比率

 コミックマーケット86カタログのサークルカットで多かった作品はグラフ2の通りです。参考にコミックマーケット85での数も載せています。なおこれらのサークル数は手作業で数えたもので人によって差が出るものですので参考程度にご覧ください。

筆者追記「集計方法についてはグラフ2画像内の説明をご覧ください。説明にもあるとおり、この数字は正確な数字ではありません。参考程度にご覧ください。なお、本記事上記の表現が、グラフに使用した数値がコミケカタログ全体のサークルカットをすべて1つずつカウントする作業によるものであるように誤解させるとの指摘がありましたので、訂正のうえ、グラフ画像に説明を追加させてもらいました。誤解を与えて申し訳ありませんでした」(2014年8月4日)

 コミケで人気のあるジャンルには男性寄りのものと女性寄りのものがあります。もちろん男性寄りのジャンルで描いている女性作家も多いですし、逆も多いです。

 男性寄りのジャンルでは「東方Project」がここ4年ほど2000サークルを超えて二次創作の原作品としてはトップを維持していましたが、近年はサークル数を減らし、今回ついに2000を切りました。

本家サークルの上海アリス幻樂団は、東方Project最新作「弾幕アマノジャク」を5月に発表済み


 代わって拡大したのがこの連載でもたびたび取り上げている「艦隊これくしょん」で、前回の1000サークル超えからさらに拡大して2000を超え、概算でついに「東方Project」を抜きました。

 今回の申し込みから独立ジャンルコードの「301 艦これ」が新設されており、この関係か前回はゲーム系二次創作ジャンルの「300 ゲーム(その他)」と男性・成人向け専門ジャンルの「200 男性向」と半々だった艦これサークルはおおよそ2:1くらいの比率でゲームジャンルの「301 艦これ」のほうが多い結果となっています。それでも今回の「男性向」では艦これ関連のサークルが最も多く、人気の拡大が伺われます。

「艦隊これくしょん」は今回のコミケ86からジャンルコードが新設された

 ほか男性寄りでは前回取り上げた「アイドルマスター」も人気が高いです。また同じ「ギャルゲー」ジャンルの中では同じく前回取り上げた「ラブライブ!」が急成長しています。

 今回の「男性向」のサークルでは「ラブライブ!」が「艦これ」に次いでサークル数が多かったです。また「アイドルマスター」もほぼ同規模「男性向」でのサークル参加があります。前回の調査で「ラブライブ!」の女性人気の高さを紹介しましたが、それでも基本的には男性寄りのジャンルです。

 女性寄りの作品では、脅迫事件も無事終結した「黒子のバスケ」が前回とほぼ同程度のサークル数です。ただし夏コミは女性系のジャンルはむしろ増えるのが普通ですので、最大手であるものの、やや人気が落ちつきだしている印象です。

 またジャンプ系では他に「ハイキュー!!」の人気が高いです。アニメ以前から同人人気の高い作品で、今回はまだアニメ化前の申し込みですので、今後さらに「ハイキュー!!」人気が高まることが期待されます。

 昨年アニメ化した「進撃の巨人」もサークル数を伸ばしており、根強い人気が伺えます。同じく昨年にアニメ化、現在2期が放送中の「Free!」もサークル数が増えています。また「弱虫ペダル」ももともと同人人気の高かった漫画作品ですが、昨年下旬からのアニメ化もあり、大きくサークル数を増やしています。

コミックマーケット86のWebカタログおよび冊子カタログを参考に、今回参加している各作品の二次創作サークルの数を概算したもの。正確な数字は求めるのが困難のため参考程度に。グラフが青いのは男性サークル寄り、赤いのは女性サークル寄りの作品。VOCALOIDは本文の記述のとおりのため紫とした。また参考にコミックマーケット85のサークル数を灰色で示している

 以前から人気の高いジャンルではまだまだサークル数は多いものの、「ヘタリア」はややサークル増、「TIGER&BUNNY」はややサークル減、グラフにはありませんが「戦国BASARA」もサークル数を減らしています。またこれらの下では「鬼灯の冷徹」などが人気があるほか、「ジョジョの奇妙な冒険」がアニメの影響もあってかサークル数を増やしていて気になるところです。

 「VOCALOID」は以前紹介したとおり若干特殊なジャンルで、マンガなどの同人誌は女性作家が多く、VOCALOIDを使った同人音楽等は男性作家(ボカロP)が比較的多いです。今回は少しサークル数を減らしています。

 全体的なジャンルコードの動きとしては、ジャンルコードを新設した「艦これ」と、「進撃の巨人」「弱虫ペダル」を擁する「FC(少年)」でサークル数を大きく増やしており、代わりに「男性向」「東方Project」「ゲーム(RPG)」「鉄道・旅行・メカミリ」「TIGER&BUNNY」などがサークル数を大きく減らしています。去年の夏コミとの比較では「ゲーム(恋愛)」ジャンルもサークル数を減らし続けています。

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