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アドビ初のPan-CJKはどのようにして生まれたのか

「源ノ角ゴシック」を実現させたアドビ西塚氏の勘と感覚

2014年07月29日 10時00分更新

文● 貝塚怜/ASCII.jp編集部

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源ノ角ゴシックによるカナ(Light)

アドビのフォント作りは、まず1000字から

—— フォント作成って具体的に、どういう工程を踏まえてできるものなんでしょう? もう少し詳しくうかがいたいです。

 「一番最初は、基本的に手書きデッサンですね。でも私は、かなり早い段階でデジタルに移行します」

—— その後は、ひたすらPCでの作業ですか?

 「つまったりすると、1度デッサンをしてPCに取り込んだりすることはあります。でも、スキャンして、きちんとトレースしてしまうと、そこから手書きに戻ることはあまりないですね」

—— 取り込んだあとは、どういう流れでしょう。

 「例えば今回の話で言うと、『う』のように縦長のものに少し幅を出したりですとか……でも、ただ広げるのではなく、トラディショナルなフォルムを保ちつつ、広げたりと、コンセプトに沿った修正をしていきます。

 漢字も同時に制作をしていくんですけど、漢字は仮名とはまた別です。アドビのゴシックは、漢字に関しては、小塚ゴシックを基に、新しいフォントを生み出していくというスタイルなんです」

源ノ角ゴシック(Normal)による漢字

—— 骨組みのようなイメージですか?

 「言い方が難しいんですけど、小塚ゴシックを基に、エレメントをひとつひとつ置き換えつつ、骨格全体のバランスも見直し、全体的に修正をかけていくというスタイルで作っていくんです」

—— どの漢字から始めるんですか?

 「アドビの場合はキーグリフというものがあります」

—— キーグリフ?

 「例えば、『木』みたいな単体の漢字、辺と旁に分かれている漢字、冠とその下の部分に分かれているものなどから、満遍なく1000字くらいピックアップしたものです。

 そのキーグリフを組みながら、『エレメントがもう少し下にいってくれないと困る』『もう少し上にいってくれないと困る』『角度がおかしい』というのをチェックしつつ、同時に足りないエレメントを作っていきます。まず1000字のキーグリフを組み終えてから、実際の作業に入ります」

—— そうすると、大体のデザインが定まるということですね。

 「そうですね。画数の異なる文字を何文字かずつ組み合わせた基本セットを使う場合もありますが、アドビでは、まず1000字からのスタートですね」

—— 「キーグリフ」の選択基準をもう少し詳しく教えてください。

 「比較的頻度の高いものをベースにして、そうでないものを混ぜてピックアップしていくという感じです。読めないような、ものすごい漢字も、結構混ざってますけど(笑)。

 ものすごい漢字といえば、漢字を作る作業をしていると、皆さん、私は漢字が全部読めてると思ってるみたいで、『その漢字、なんて読むの?』ってきかれることが多いんですけど、大抵知らないんです(笑)」

—— お!? あ、読みと漢字を結びつけるのはエンジニアさんだから……。

 「そうなんです、『いやいやいや、読めない読めない』っていう(笑)」

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