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“テクノロジー回帰”のHPがアーキテクトコミュニティを立ち上げ

HPが「Tech Power Club」で見せた“未来のサーバー技術”

2014年07月22日 14時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 7月上旬、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、ITインフラエンジニアやITアーキテクトを対象とした「HP Tech Power Club」イベントを都内で開催した。“テクノロジーカンパニー”への回帰を強める同社の最新R&D成果や、次世代サーバーテクノロジーの具体的な姿がセミナーや展示を通じて紹介された。

「HP Tech Power Club」会場は多くのエンジニアで賑わった。高密度サーバー「Apollo」などの実機展示も

開会挨拶に立った日本HP 代表取締役 副社長執行役員 エンタープライズ事業統括の古森茂幹氏。「HPはもともとエンジニアリングの会社。イベントやコミュニティ活動を通じて、HPテクノロジーのファンを増やしていきたい」と挨拶

75周年、テクノロジーカンパニーへの原点回帰

 米HPは1939年、計測器メーカーとして創業された。今年はそれから75年の節目に当たる。

 米HP CEOのメグ・ホイットマン氏は、2011年のCEO就任以降「テクノロジーカンパニーへの原点回帰」をテーマに掲げ、技術R&Dへの投資を強化している。その一環として現在進められているのが“サーバープラットフォームを再定義する”3つのプロジェクト、Project Moonshot/Odyssey/Voyagerだ。

Project Moonshot/Odyssey/Voyager(今年1月の日本HP発表会資料より)

 基調講演で登壇した日本HPの手島主税氏は、「R&Dへの積極投資」に加え、「独自テクノロジーの開発」「技術コミュニティの拡大」という3つが、HPの重点施策だと説明する。今回のイベントも、日本における技術者コミュニティの立ち上げを目的としたものだ(詳しくは後述)。

日本HP 執行役員 HPサーバー事業統括本部 事業統括本部長の手島主税氏

HPの3大重点施策。技術開発への積極投資、次世代ITシステムの再定義、そして技術コミュニティの拡大

 手島氏は、これまでのサーバー市場では1種類のサーバーで幅広いワークロードに対応することが求められてきたが、さらなる最適化に向けて、個々のワークロードが持つ性格の違いを意識したサーバー設計が必要になると説明する。そこで、HPでは主要なワークロードを4種類に分類し、今夏から順次、それぞれに特化したサーバーラインアップを投入していていく。「HPには、『ワークロード特化型』へとサーバー市場を再定義していく責務がある」(手島氏)。

HPではワークロードを「コアビジネスアプリケーション」「ミッションクリティカル環境」「ビッグデータ、HPC、Web」「仮想化/クラウド環境」の4つに分類。それぞれの特性や要件に最適化されたサーバー製品群を提供していく戦略

HPのサーバー最高技術責任者が語る“未来のサーバー技術”

 では、さらにその先はどうなっていくのか。手島氏は、これから先のITに起きる「変化」は従来とまったく異なる性格のものになり、「間違いなくテクノロジー、特にサーバー領域でのイノベーションが必要になる」と、革新的テクノロジーのR&Dに取り組む意義を強調する。

 手島氏に続いて登壇した米HPのキース・マコーリフ(Keith McAuliffe)氏は、現在HP研究所で進められているサーバー領域における革新的テクノロジーのR&D成果を披露した。マコーリフ氏は、米HPのサーバー最高技術責任者(CTO)であり、HP研究所(HP Labs)も率いる人物だ。

米HP バイスプレジデント HPサーバー最高技術責任者 HPサーバーズグローバルビジネスユニット、キース・マコーリフ氏

 マコーリフ氏はまず、現在のサーバー/データセンター環境が抱える課題について総括した。よく知られるとおり、『ムーアの法則』に基づく進化スピードでは追随できないほどのデータ量爆発、それに伴うOLTPから分散/並列データ処理への処理方式の移行、消費電力の増大、そうした課題がある。

 これらの課題を根本的に解消すべく、HP研究所では「ワークロードに最適化されたSoC」「ユニバーサルメモリ」「フォトニクスとファブリック」という3つの革新的テクノロジーの研究開発に取り組んでいるという。こうしたテクノロジーで、現在とはまったく新しい“次世代のサーバーアーキテクチャ”を実現する計画だ。

 インテルの「Atom」やARMプロセッサといったSoCは、モバイルデバイスだけでなく、「HP Moonshot」などの高密度サーバーでも採用され始めている。プロセッサコアと各種コントローラが1つのチップに載っており、小さな消費電力でより多くの処理を実行できるためだ。

 HPではさらに、インテルと協働して、特定ワークロード向けプロセッサを統合したSoCを搭載するMoonshotカートリッジを開発している。マコーリフ氏は、たとえばVDI用途向けにグラフィックスアクセラレータを強化したもの、動画変換や音声処理を強化したもの、暗号化/復号処理をより高速化したもの、学術計算性能を強化したものなどの例を挙げた。

プロセッサコアや各種コントローラに加え、特定用途向けのアクセラレータをSoCに搭載することで“付加価値”を生む

グラフィックスアクセラレータを強化したSoCのダイ写真。アクセラレータ回路の面積がダイの半分を占める

(→次ページ、DRAMに匹敵するスピードの不揮発性メモリ)

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