AWS Summit Tokyo 2014基調講演は事例のラッシュ
NTTドコモもRedshift採用!アジャイルを実現するためのAWS
2014年07月17日 14時30分更新
7月17日、Amazon Web Services(AWS)主催のイベント「AWS Summit Tokyo 2014」が開催された。初日の基調講演で登壇した米Amazon.com CTOのワーナー・ボゲルズ氏は、企業がアジャイル(俊敏性)になるためにAWSのようなクラウドが重要な役割を果たすと説明した。
不確実性の時代に必要なアジャイルの価値
米Amazon.com CTOのワーナー・ボゲルズ氏の基調講演では、スタートアップ、エンタープライズ、パブリックセクターなど数多くの事例を紹介しつつ、ユーザーがなぜAWSを選ぶのかについて多くの時間が費やされた。
個人宅の空き部屋を貸し借りするサービスを提供するAirbnbは、昨年400万人だった利用者が1年半で1500万人にまで拡大している。このサービスを実現すべく、同社はAWSを100%活用。たったの5人のチームで、1300ものEC2インスタンスを運用しているという。「自分たちがよりよい製品を注力するためにリソースを使っているんだというのが答え。ITには人を使わないということだ」(ボゲルズ氏)。
こうしたスタートアップに対してエンタープライズは遅れをとっており、今後はよりアジャイル(俊敏)でなければならないとボゲルズ氏は指摘する。「競争は激化し、顧客のロイヤリティは低下している。去年売れた物が今年売れるかわからないという不確実性の中、企業はリソースの使い方を変えなければならない」。足りなければオンデマンドでリソースを調達し、終わったらリソースを開放し、固定費を変動費に変えていく必要がある。企業の人事では当たり前のようにやってきたことが、ITの分野では実現していない。「コスト削減のためには、業者と長期契約を結ばないといけなかったからだ」(ボゲルズ氏)。
Redshiftでのデータ解析をスタートするNTTドコモ
おもに開発面でアジャイルを得た事例として、ボゲルズ氏はNTTドコモを紹介する。NTTドコモは昨年行なわれたre:inventで、数多くのAWSのインスタンスを「しゃべってコンシェル」や自然言語の処理で使っていることを発表。おもにWebサービス開発の分野で、従来型のウォーターフォール型の開発からアジャイル型の開発に移行したという。
NTTドコモ 執行役員 研究開発推進部部長 栄藤稔氏は、「AWSを使うことで、開発のカルチャーが変わってきた。クラウドの導入で安く・早く失敗できるように意識したり、発注先はパートナーとみなすようになっている」と語る。また、小さく作って大きく伸ばす、従来の常識やルールから離れるといった考え方が根付きつつあるという。これにより少ない人数で、迅速な開発、保守運用が可能になった。栄藤氏は「よく言われているリーンスタートアップやアジャイル開発が大きな会社でもできる。性能やスケーラビリティだけではなく、エコシステムと付き合うことで勝ち得たモノ」と語る。
とはいえ、同社も一足飛びにAWSに進んだわけではない。「AWSを使うときはセキュリティどうなの? 性能出ないんじゃない?、SLA保証しているの? エコシステムのスイッチにコストがかかる、などが議論され、結局使わないという結論になることが多い。われわれもそんな議論をさんざんしてきた」(栄藤氏)。しかし、結果的に迅速な開発やスケーラビリティを考え、NTTドコモはAWSに“ダイブ”した。「ともかく使うことにより、結果を知る。なにができたかを解析して、そのフィードバックを戻し、また戻す。この繰り返しでクラウドがどこまで使えるかがわかる」(栄藤氏)。
このようにして、NTTドコモは2012年からWebサービスのAWS移行を開始し、開発において新しい文化とカルチャーを得てきた。そして、今回2014年に解析系の業務システムにAWSを採用することを明らかにした。「NTTドコモのデータセンターとAmazonのVPCをつないで、Redshiftのシステムを使う。データ規模は数PBにおよぶことになる」(栄藤氏)。
最後、栄藤氏は「なにごとにもダイブすることが大事。挑戦して、使っていけば、新しいことが見えてくる」と述べ、基調講演内でのスピーチを締めた。
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