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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 ― 第45回

セルフパブリッシングの未来(5)

J コミ改め「絶版マンガ図書館」から考えるマンガのバリューチェーン

2014年07月18日 09時00分更新

文● まつもとあつし

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絶版マンガを全ページ無料配信しているJコミが7月11日、「絶版マンガ図書館」としてリニューアルした。写真は記者発表会での赤松健氏

絶版マンガ図書館とは?

Jコミ改め絶版マンガ図書館の代表を務める、漫画家の赤松健氏

 絶版マンガを全ページ無料配信しているJコミが7月11日、「絶版マンガ図書館」としてリニューアルした。

 これまで赤松氏の個人的な繋がりを起点に絶版となったマンガを配信してきたが、これをユーザーからの資料の投稿を起点にする方向に大きく転換した。2010年のJコミのローンチを取材していた筆者にとっても、大きな意味を持つものだ。

 絶版マンガ図書館は、「日本のマンガ文化の100%保存」を目指し、出版社が取り扱わなくなった全ての絶版マンガを収集し、全ページをそのサイトに公開する。

 公開までのプロセスは次のようになっている。まず、読者は掲載して欲しい作品の“資料”をサイトにアップロードする。その資料はJコミが開発した「絶版判定アルゴリズム」により自動的に絶版であるかどうか振り分けられるが、最終的な判断は手動(目視)だという。

 そして、ランダムに選択した作品中の5ページを電子透かし入りで掲載、作者(もしくは遺族などの権利者)が公開を許可すれば、全ページを無料公開する。

 Jコミ同様、公開された作品ページには広告が入り、読者は無料で閲覧でき、作家は広告収入を得られる。また、作家が望めばKindleストアに同時登録したり電子透かし入りPDFを作家が自ら販売可能(絶版マンガ図書館は5%の手数料を予定)。さらにはこれまでJコミで提供していた高精細オンデマンド印刷にも対応することで作家の収入につなげていく。

自作の『ラブひな』を例に、セリフのOCRについて説明する赤松氏

 赤松氏によれば、「これまで絶版になってしまったマンガを読みたいと思う場合、海賊版に頼る人もいた。しかし、絶版マンガ図書館ができれば、海賊版頒布者ではなく、作家が収入を得られるようになり、読者も金銭的負担を負わずに作品を楽しめるようになる。いわば電子書籍版『YouTube』を目指す」と、同サイトの誕生理由と抱負を説明した。

 東大相沢研究室と共同で、マンガのセリフのOCRとその検索インデックスや広告マッチングへの活用についても検証を進めるという。

 「Jコミ」という名前は「(週刊少年)ジャンプ」を想起させてしまうので、今回の機能アップを機に名称を変更することにした、と赤松氏は冗談めかして語る。しかし、出版不況のなか、デビューはもちろん、連載を継続し、単行本の販売(印税)で制作コストを回収し収益を上げていくことは、ごく一部の人気作家を除いて難しい現実がある。

 絶版マンガを、海賊版ではなく、作家に収益がもたらされる形で配信する今回の取り組みは、じつはマンガのバリューチェーンの「欠けたピース」を埋める取り組みだと取材を通じて感じている。

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