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1限目:コピーライターに学ぶ、書くための「レシピ」 (2/2)

2014年07月24日 11時00分更新

文●森田哲生/Rockaku

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【下ごしらえ_その1】「つくる人は誰だ?」〜主語の設定

 みなさんは「How」と「What」の関係をご存じでしょうか。広告クリエイティブの本なんかでよく語られることで、「How=どう伝えるか」よりも、まず「What=何を伝えるか」を考えなきゃダメですよ……という基礎的な考え方です。つまり、「手法よりも本質が大事」というお話ですね。しかしながらここ最近、この関係性の中で、もうひとつ注目すべき要素が加わったように感じます。

 それが「Who=誰が伝えるか」です。インターネット、そしてSNSの普及によって、人々は受信した情報に対して、内容以前に「コレって誰が言ってるの?」という部分を自然に意識するようになりました。

 例えば、「空心菜に美肌効果がある」という情報がTwitterのタイムラインに流れてきたとします(ちなみにそんな情報が実際にあるわけじゃないですよ。念のため)。でも、その発信者が八百屋さんの場合と、友だちの場合と、カリスマモデルの場合と、研究機関の場合とでは、受け止められ方がまったく異なるはずです。

 カレーだって、つくるのがインド料理屋なのか、洋食店なのか、蕎麦屋なのか、あるいは実家のお母さんなのか……で、味も見た目もまったく変わってくるじゃないですか。だから、コピーやテキストを書くときに、最初に決めておくべき要素として「Who=誰が伝えるか」はきわめて重要なことなんです。もう少し文法っぽく言えば、「主語を設定する」ということになるでしょうか。

 とりあえず、主語の設定についてはこの図を見てください。主語を明確にしておくと、読者の受けとり方も変わりますが、書く側にとっても、スタンスが安定するので、“書かずギライ”解消に大きな効果があります。つまり、「主語を設定する」ということは、書く側にとっても、読む側にとっても、「情報の質」の向上につながるんです。

【下ごしらえ_その2】「なんのために料理するの?」=目標の設定

 「主語」が定まったら次は「目的」です。どんな料理にも、食べさせる相手と感じてほしい味わいがあるように、コピーやテキストにも、ターゲットと果たすべき使命があります。というか、ないと困ります。「なんかこの余白にいい感じのコピー入れてよ」という要求は、断固として拒まねばなりません。

 とにかくクリックされたいのか、ユーザーとコミュニケーションをとりたいのか、ブランドイメージを高めたいのか、使命の内容は千差万別ですが、そこをつかまなければ、的確な言葉選びができないのです。このあたりは、2時限目以降で詳しく掘り下げていく予定です。

【下ごしらえ_その3】「的確な具材を選ぶ方法って?」=ジャガイモはキーワードである

 主語と目的がきちんと設定できたら、あとはコピー、テキストという「料理」を構成するための具材、つまりはキーワードとなる情報を選んでいきます。とりあえず、先ほどみなさんに無茶ぶりしたカレーのレシピの回答例を思い出してください。

 情報を整理しようとすると、この画像のように、具体性の高い要素であるところの、食材や調味料にマーキングをする人が多いという傾向があります。このぐちゃぐちゃした「カレーのつくり方」が、たとえば新製品のリリース資料だったとしましょう。みなさんがそれを基に、ニュース記事や製品ページを制作しなければならなくなったら、ジャガイモにアンダーラインを引くように、重要な情報にマーキングしていけばいいんです。

 具材=具体的な情報。つまりは、ジャガイモを選ぶように、キーワードを見つけていけば、あなたが書くコピーやテキストは、きっと食べやすく、美味しくなるはずです。

【下ごしらえ_その4】「皮をむくか否かそれが問題だ」〜単語のブラッシュアップ

 さて、与えられた資料から「具材」をじょうずに拾い出した後、もうひとつやるべきことがあります。それは「皮むき作業」です。まずは下図を見てください。

 図のように、「単語」は、基本的にその具体性が高いほど、明解に伝わるようになります。「皮むき作業」とは、与えられた資料に「豪華特典を進呈」とあったら、担当者に「それは具体的に何か?」を聞いたり、調べたりして書くことを意味します。豪華特典→現金還元→10万円還元といった具合です。ただし、これはあくまでも「基本的」なお話。実は、例外的に皮をむかないほうがいい場合もあります。それが下図のような場合です。

 こちらはジャガイモの皮むきというより、「精米」みたいな話なのですが、あえて具体性を高めず、いい感じに調整することで、コピーやテキストをより伝わりやすく、共感を得やすいモノにするという、秘伝の技です。特に短い文章、キャッチコピーやニュース記事をつくるときに留意しなければならない大事なTIPSとなります。これは3時限目で詳しくお話ししていく予定なので、頭の片隅に保存しておいてください。

下ごしらえが終わったら「初期設定表」をつくる

 「主語」と「目的」を設定し、使うべき「単語」が決まれば、下ごしらえは一とおり完了です。「調味料」や「道具」については、下ごしらえの次の段階となる「調理」に当たるので、またの機会に触れていきましょう。ここまでの工程で整理・把握したことがらは、図のような「初期設定表」をつくって整理しておいたほうがいいでしょう。Web構築的に言えば「要件定義」という部分になるでしょうか。

 コピーやテキストを制作している最中に迷いを感じたら、「この表からぶれてないか?」をチェックすることで、自分が今から何を書くべきなのかが明確になりますし、書いたものの品質をチェックする目安にもなります。また、「刺さるコピーを書け!」などとのたまった上司に対して、明解なプレゼンテーションができるようになるはずです。

 あとは、自分が書くべきコピーやテキストの種類を踏まえて書いてみるだけです。“書かずギライ”克服への第一歩は、まず「漠然と書く」のではなく、レシピをつくるように材料をそろえ、可視化し、整理する=下ごしらえから、というわけです。

 次回は、次のステップ、コピーとテキストの種類を紹介します。それではごきげんよう。さようなら。

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