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1限目:コピーライターに学ぶ、書くための「レシピ」 (1/2)

2014年07月24日 11時00分更新

文●森田哲生/Rockaku

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 僕はコピーライターです。日ごろ、書く専門家として、広告代理店や制作会社、企業の方々から依頼を受け、コピーやテキストを書くのが僕の仕事です。また、セミナーや研修でライティングを教えることもあります。そんな僕がこれまでの仕事を通して感じてきたのが、“書かずギライ”の存在です。“書かずギライ”の方たちはこう言います。「おれ、文才ないからなあ」「どうも書くことが苦手で」と。

 しかし、そんなことをおっしゃる方々も、その実、非常に優秀な方ばかりで、デザイン、プログラミング、マネージメント、マーケティングといった、ご自分の専門分野では非常に優れた能力を発揮していたりします。もう、提案したり教えたりする僕が劣等感にさいなまれるほどに、です。

 で、僕は考えました。“書かずギライ”の正体、それは“自分が書いたもののクオリティが判断できない状態”なのではないか……と。デザインやプログラムと違って、善し悪しの判定が難しく(いや、それぞれに難しい部分はあると思うんですけどね)、アプリケーションやOS、プラットフォームを使いこなして……的なスキルはあまり関係がないし、営業活動のように明確な数字が出るわけでもない(コンバージョンやPVは計れますけどね)。「何がいいのか悪いのかわからない」ということは、「終わりがさっぱり見えない仕事」ってことじゃないですか。そんなの誰だってキライになりますよ。

 でもその一方で、SNSだとか、コンテンツマーケティングだとか、オウンドメディアだとか、書く専門家でなくとも、言葉によるコミュニケーションスキルが求められる時代になってきているのも事実です。“書かずギライ”の人でも“書かなきゃいけない”シーンが増えているんですね。

 だから、コピーやテキストを書く上での「基準」のようなものを明確に設定しながら、“書かなきゃいけない人”の“書かずギライ”を克服してしていこう! というテーマを掲げてみようと思いました。この連載を通じて、“書かなきゃいけない人”に、“書かずギライ”を克服するヒントをつかんでいただけたらうれしいです。

「カレー」のレシピを再構築してみる

 さて、前置きはこれくらいにして、みなさんにいきなり問題を出します。これは僕が講師を担当するセミナーや研修では必ず出題するワークショップです。左記のぐちゃぐちゃに書かれた「カレーのつくり方」を、右記のフォーマットに沿って整理してみてください。

シンキングタイム!

……ハイ時間になりました。 たとえば、こんな感じになります。

 これはつまり「レシピ」の編集です。「え? 料理レシピサイトで目立つ方法を教えてくれる連載なの?」と思った方、お願いだからまだ離脱しないでください。基本的に唐突な話から入るのが僕のスタイルですから。

 さて「レシピ」ってなんでしょうか? 料理をつくるためのテキストですよね。レシピは一度構築したものを、言葉や数字に分解して、再現するための設計書。情報としての精度が求められる分野です。つまり、ライティングの基礎的な構造が凝縮されているんです。

 たとえば、上司からいきなり「さあ、刺さるコピーをいますぐ書け!」なんて言われたら僕だって逃げ出したくなります。とにかく、どんなコピーや文章を書くにしても、下準備が必要です。

 もしも、上司からの命令が「カレーをつくれ!」だったら、心構えって全然違うと思うんです。カレーをつくるためには、最低限、「つくる人」がいて、「食べる人」の要望や人数の把握があって、それに合わせた「食材」と「調味料」、「道具」をそろえる必要があります。その点は揺るぎなく明解ですよね。でもそれは、コピーや文章作成でもまったく同じことが言えるんですよ。「つくる人」はそのメッセージの発信者ですし、「食べる人」はターゲットの設定です。それに、「食材」は商品やサービスの情報、「調味料」はターゲットに会わせたトーン&マナー、「道具」はそのコピーや文章が掲載されるメディアにあたる……そんなふうに捉えてみてください。そう考えたら、“書かずギライ脱却への道”に確実に近づけるはずなんです。というわけで、“書かずギライ”を、“とりあえず書いてみる”という段階に導くために、今回はコピーやテキストを「料理」に見立てて、必要な情報、条件、材料や要素を整えていく“下ごしらえ”の工程をご紹介していきたいと思います。

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