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Linuxの世界制覇が完了:反オープンソース・コミュニティに賭けるのが愚かな理由

2014年07月14日 16時23分更新

文● Matt Asay via ReadWrite

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どんな強みがあろうと、オープンソース・コミュニティと張り合える単一の企業は存在しない

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10年前、Unixは最速コンピュータ世界トップ10のうちの5つに入っており、スーパーコンピューター市場の44%を占めていた。今日はどうだろうか? かつて処理能力に置いて揺るぎない地位を占めていたUnixは、Linuxにその地位を取って代わられてからというもの世界最速コンピュータのトップ10どころか、50位にすら入っていない。

Linuxの隆盛及びUnixの没落をハッキリと示すこの統計から、プロプライエタリなベンダーがオープンソースに太刀打ちしようとしても無理だということだ。 もっともこれはコミュニティの手を借りなければの話だが。

コミュニティー:隠れたパフォーマンス・ブースター

コミュニティーの有効性は常に明らかだったわけではない。1999年、高価なUnixサーバを作っていたSunのCEO スコット・マクネリはLinuxのパフォーマンスについてこう攻撃した。

LinuxはWindowsみたいなものだ。クライアントやアプライアンスに使うには重すぎるし、サーバー用途に使えるほどスケーラブルでもない。なぜ世界中の人がMSに金を払い続けるのか理解できないが、Linuxに対しても同じ事が起こるだろうか? もしそうなら何かの間違いだ。

マクネリに先見の明が無いとは言えない。1999年の時点でLinuxは世界最速ランキングの500位にも入っていなかったし、実の所SunのSolarisのパフォーマンスはLinuxのそれよりはるかに優れていた。

しかしそのSunおよびSolarisでも勝つことができないのがLinuxコミュニティーだった。

Sunはその抜きん出たイノベーションの歴史を誇りに思っていいが、たとえ会社がどんなに素晴らしいものだとしても、それはあくまで一つの会社に過ぎない。今日、一社だけで大規模なインフラを支えるだけの幅広く経験深いエンジニアを賄うことは不可能だ。

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そして現在、Linuxは世界最速ランキングの上位500の大部分を占めている。最速マシンのうち、実に97%がLinuxで動いており、Unixで動いているものは2%に過ぎない(このうちSolarisは含まれていない)。マクネリはLinuxを追い抜こうとベンチマークを試みたが、望んでいたような奇跡の大逆転は起こせなかった。

結局の所、ベンチマークテストは普通の用途ではまず行わない処理を行うという意味では、偏ったパフォーマンス測定方法だ。私達の日常にとっては、コミュニティーベンチマークの方がずっと意味がある。

ベンチマーキング・コミュニティー

FacebookのMySQLのエキスパートであるマーク・キャラガンは、最近の意図的なベンチマークテストの行われ方(彼はこれを「ベンチマーケティング」と呼んでいる) に批判の声をあげ、データベースのパフォーマンス測定を行うにあたり、異なるシステムがどのようなコンテキストで比較されるかを考慮するよう呼びかけている。

「ベンチマーケティング」はオープンソース・プロプライエタリの区別なく、データベースの評価において普通に行われていることだ。このベンチマーケティングの目的は、如何に商品Aが商品Bより優れているかを喧伝する事だ。偶然であれ意図的なものであれ、良好なベンチマーケティングの結果は「AはBより優れている」という事を言いたいのであって、「AはBよりこのコンテキストにおいて優れている」という事ではない。コンテキストには、ベンチマークの結果に置いて非常に重要なものであり、それにはハードウェア、負荷、比較対象同士の設定が適切に行われているか、あるシステムがほかより速いと証明したい理由はなにか、といった事が含まれる。

Linuxの様なオープンソースOSでは、評価はコミュニティのコンテキストなしでは行えない。1999年にマクネリはコンテキストを考慮しない、ひたすら計算を行わせるタイプのベンチマークを行い、これにおいてSolarisはLinuxより評価された。しかしこのベンチマークという木を見たマクネリは、Linuxコミュニティーの成長という森を見損ねた。

コミュニティの活発な活動はオープンソース・プロジェクトに多くの利点をもたらした。

1.オープンソース・プロジェクトを取り入れる事は素晴らしいことだと示した

2.オープンソース・プロジェクトを取り入れる事は安全だと示した

3.より多くのマーケットを生み出した

4.成果物をライバルとなる商品より質の高いものにした

上記2についてだが、安全性は数によって支えられる。中身がよくわからないコードに頼った結果、問題を起こすというリスクをコミュニティが減少させるだけでなく、GitHubやStackOverflowと言ったようなネットでの情報の充実を保証する。それによりこれらの技術をもったユーザー層が厚くなり、その技術の市場への浸透を容易にさせる。これはやがて核となる技術のアドオンを作る第三のコミュニティーの生成を促し、プロジェクトのネットワークは更に大きなものとなる。これは永続的なサイクルであり、一社でこのようなものを作り上げ、継続することは出来ない。

パフォーマンスについてはこれまで分かっている通り、プロジェクトが十分勢いに乗れば割と楽に解決できる問題だ。Linuxの場合、その性能はRedHat、IBM、HP、Oracle、そして皮肉なことにSunが商業的に多大な注目を集めるようになってから爆発的に伸びた。彼らはそれぞれの理由でLinuxに貢献する理由があり、それぞれに改良を行った。結果、全体としての機能だけでなく性能も向上した。

2014年のコミュニティの大きな賭け

以上が私が、HadoopやOpenStack、その他といったオープンソース・プロジェクトに対して楽観的に考えている理由だ。パフォーマンス、将来性など、Linuxが10年前に経験したように乗り越える問題はまだまだある。しかしこれらはコミュニティの深い関心を集める限り、時間が解決する事だ。

とは言え、時折一者に多くが偏ってしまうという事がある。OpenStackはその一例だ。リーダーシップの不足が叫ばれたこのクラウドコミュニティは、マーケットへの進出の途中でつまづいてしまっている。OpenStackコミュニティーがリーダーシップの問題を解決できたとしたら、既に抱えている活発なコミュニティーがその進展を支えるだろう。

Matt Asay
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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