30秒で携帯電話をフル充電するStoreDot社の技術は記憶に新しいが、電気自動車のバッテリー分野でも何ともすごい技術が出てきた。
地球環境に優しい電気自動車に乗っているのに「充電ステーションを探して右往左往」など、自分には優しくないストレスたっぷりの状況は想像に難くない。
アルミニウム大手メーカーのAlcore社は6月2日、イスラエルのスタートアップPhinergy社との共同実証実験で再充電せずに約1600kmの走行に成功したと発表した。実験はモントリオールのサーキットで実施され、車両には空気アルミニウム電池を搭載。この電池はアルミニウムと空気中の酸素を反応させて水酸化アルミニウムに変化させる際に生まれる電力を利用するものだ。
1600kmというとあまりイメージが湧かないが、本州と北海道をつなぐ青函トンネルから本州・九州の関門トンネルまで道なりで約1600km。本州を横断できる距離を再充電せずに走行できると思えば、その走行距離の長さを実感できるのではないか。
世界の各地に燃料電池の交換ソリューションを展開していたBetter Place社は2012年に破綻してしまったが、Phinergy社を見ていると、イスラエルのスタートアップは自身で世界展開するのではなく、独創的なアイデアの開発に専念して展開は世界企業と組むことが一番性に合っているのかもしれないと筆者は感じる。
今後は電気自動車での実用化への動向だけでなく、スマホやPC、家電といった我々の生活になくてはならないものにこうした技術が応用されていくのかという点でもPhinergy社の動向に引き続き注目したい。
筆者紹介──加藤スティーブ
イスラエルの尖った技術に着目して、2006年にイスラエル初訪問。2009年にISRATECHを設立し、毎月40〜60社のスタートアップが生まれるイスラエル企業の情報を日本へ発信し続ける。2012年にはイスラエル国内にも拠点を設立。イスラエルのイノベーションを日本へ取り込むための活動に着手する。ダイヤモンドオンラインにて「サムスンは既に10年前に進出! 発明大国イスラエルの頭脳を生かせ」を連載。
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