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絶対にもうかるベンチャーの仕組み

2014年06月25日 07時00分更新

文● 伊藤達哉(Tatsuya Ito)/アスキークラウド編集部

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 2000年頃から国の施策もあり、創薬バイオベンチャーの起業が増えたものの、大半が利益を上げられていないという。東京大学の敷地内にオフィスを構えるペプチドリームもブームに乗るかたちで2006年に起業したが、他のベンチャー企業との違いは薬を作る前にビジネスモデルを構築した点にある。
 ペプチドリームの代表取締役の窪田規一社長は「一つの知財や突出した研究だけでは、ビジネスは難しい。システムをつくることで、初めてビジネスとして成り立ちます」と語る。

ペプチドリーム

ペプチドリーム代表取締役 窪田規一社長(写真:篠原孝志)

 同社の強みは、創薬の基となる「特殊ペプチド」。従来の医薬品の中心は「低分子医薬」と「抗体医薬」の2つだったが、互いに優位点と問題点がある。特殊ペプチドは低分子医薬と抗体医薬の問題点を減らしつつ、双方の優位点を実現できる「第三の創薬」として注目を集めている。ペプチドリームのイノベーションは、特殊ペプチドをプラットホーム化させてエコシステムに組み込むことで、必ずもうかる仕組みを作り上げたことだ。

 まず、特殊ペプチドから創薬するための「ライブラリー」を1兆種類作成。従来の創薬ベンチャーはその1兆種類を販売するだけでビジネスを完結させていたが、同社はライブラリーの特許を取得し、製薬会社に共同研究を持ちかけて契約を結ぶ。スタート時の研究開発費はもちろん、研究が進む段階ごとに成功報酬をもらい、最終的に薬として市場に販売された場合には売れた金額の数%をロイヤルティーとして受け取る。「成功報酬は製薬会社側の都合で払われていたこともありました。われわれは、進捗に応じて報酬をいただく契約をしています。プロジェクトが成功すれば絶対に赤字になることはありません」(窪田社長)。

 2009年に米国の大手製薬会社ブリストル・マイヤーズ スクイブと契約を皮切りに薬品メーカー9社と契約。2010年度から黒字化を続けており、2013年6月には東証マザーズに上場。初値は7900円を付けた。2013年度の営業利益率は51.8%を見込む。

 製薬業界では、主力製品の特許切れによって1兆円以上の売り上げが飛んだ企業もある。その一方で現在、ペプチドリームは26本のプロジェクトを動かしているという。薬を「もの作り」の観点で捉えプラットホーム化に成功したペプチドリームのイノベーションは、アスキークラウド8月号の特集「日本のイノベーション企業ランキング」で詳しく取り上げると共に、6月26日に放送する「アスキークラウドニコニコシンポジウム」で窪田社長の口から直に語られる予定だ。


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