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Webデザイナーの仕事がなくなる日

2014年06月27日 11時00分更新

文●吉田孝之/Web Professional編集部

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Photo:David Shankbone/CC BY 2.0(https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/legalcode)

 アフリカでもWebページを制作できる時代。「容易に身につけられる技能は、人件費が安い人と競争になったときに必ずコストで負ける」と指摘するのは、米アップルでシニアマネージャーを務めた松井 博氏。松井氏が著書『企業が「帝国化」する』で描くのは、近い将来訪れる「中間層の仕事がなくなる」世界だ。

 エクソンモービルやアップル、マクドナルドなどの市場を独占する巨大グローバル企業を、松井氏は「私設帝国」と呼ぶ。国家を超える多額のカネと強大な力を持つ “帝国”は、業界のビジネスのやり方を根本から破壊し、食物連鎖の頂点に立って顧客や業界を支配する。自らもメーカーであるはずのシャープは、アップルの要求に応じて液晶製造ラインを増設し、アプリ開発者はアップルの審査結果や規約変更に一喜一憂し、ユーザーはApple IDに管理され、同社がつくり上げた仕組みに呑み込まれていくわけだ。

 そんな帝国が牛耳る世界には、仕組みを作るきわめて少数の人と、仕組みの中で働く、多くの低賃金労働者、仕組みの中で消費を続ける人々——の3種類しかいなくなるという。

 「アフリカでもWebを制作できる」と聞けば、「言葉の壁」「日本独特のデザイン」といった反論も思いつく。だが、グーグルやアップルなど、私設帝国のデザインは世界共通で、HTMLの可読部分を書き換えれば他の言語版に変わる「言語の違い」でしかない。日本ならではのデザインができる人が必要なのではなく、最低限のローカライズをする人間がいればいいのだ。

 帝国の支配から逃れるためには「専門的な技能と創造性の有無が大きな鍵になる」と松井氏は語る。もっとも中途半端ではダメで、圧倒的な専門性を複数身につけることが不可欠だという。本書で紹介されている私設帝国のやり口と、後半で論じられている「ではどうすればいいか?」は、私たちのこれからのキャリアを真剣に考える参考になるはずだ。

Image from Amazon.co.jp
企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書)

【目次】

第1章 アップルはどうやって帝国化したのか
第2章 帝国の仕組み
第3章 帝国で働く人々
第4章 食を司る帝国たち
第5章 個人情報は誰のものか?
第6章 政府を超える企業たち
第7章 石油依存
第8章 帝国の末端は本当に不幸なのか?
第9章 帝国と付き合う
第10章 ではどうすればいいのか?

【著者プロフィール】

松井 博 (まつい ひろし)

1966年生まれ。神奈川県出身。地元の高校を卒業後、渡米。オハイオ・ウエズリアン大学卒業。沖電気工業株式会社、アップルジャパン株式会社を経て、2002年に米国アップル本社の開発本部に移籍。iPodやマッキントッシュなどのハードウェア製品の品質保証部のシニアマネージャーとして勤務。2009年に同社退職。現在カリフォルニア州クパチーノ市内にて保育園を経営。著書に「僕がアップルで学んだこと」「10年後の仕事のカタチ10のヒント」

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