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可能性が広がる生物由来のナノチューブ素材

岡山大学、微生物が作る酸化鉄でリチウムイオン電池が特性向上することを発見

2014年06月18日 16時08分更新

文● 行正和義

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電子顕微鏡写真:(左)鉄酸化細菌が作るチューブ状酸化鉄/(右)チューブ状酸化鉄中に微生物が一列に並んでいる

 岡山大学の研究グループは6月12日、自然界の地下水中で微生物が作るチューブ状酸化鉄が、現行のリチウムイオン電池の負極材料よりも優れた電池特性を示すことを発見したと発表した。

 地下水の湧き出る湧水や小川では水中に溶けている鉄イオンを酸化することで生命活動を行う鉄酸化細菌が生息し、側溝などに褐色の沈殿物を形成して美観を損ねるものと知られている。岡山大学大学院自然科学研究科では、この褐色沈殿物の酸化鉄が機能性材料となると考え、15年ほど前から研究を進め、これまで触媒や顔料、植物成長促進などの機能を見出してきた。

 とくにチューブ上の酸化鉄を作る細菌を単離、OUMS1と名付けて培養条件を調整し、チューブを形成する途中で取り込むシリコンと鉄の比率を人為的に操作することに成功していた。

 今回、東京工業大学や京都大学と共同で研究を進め、リチウムイオン電池の負極材料としての可能性を調べた。チューブ状酸化鉄にはシリコンやリンと結合したアモルファス酸化物が分散して存在するが、そのアモルファス相が充放電過程における鉄粒子の体積変化を吸収し、粒子の凝集や成長を抑制して安定化させる働きをすることが分かったという。研究室では、さらに培養条件を変えてナノ構造を制御、自然界にない鉄/シリコンの比率を持たせるなど研究を進めるとしている。

 携帯電話/スマホをはじめとしたモバイル機器、EVやハイブリッド車など、バッテリー性能の向上が求められており、さまざまなメーカーや研究所が研究を進め性能向上を目指している。とくに電池の劣化を抑える電極材料としてはカーボンナノチューブなどがナノ素材が有望視されている。微生物由来の機能性材料は、炭素材や酸化物とは異なる特性や低コストが期待でき、次世代の電池負極材開発に役立つ材料として注目される。

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