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GPS頼りのリスク──日本の測位衛星事情

2014年06月19日 07時00分更新

澁野義一(Giichi Shibuno)/アスキークラウド編集部

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 スマホの普及で、すっかりおなじみになったGPS。測位衛星を使い、現在位置を把握する機能だ。何気なく使っていると忘れがちだが、そもそもはGPSは米国の軍事技術を利用している。軍事衛星の一部の機能を民間に開放している状態で、「戦争など有事の際には、GPSが突然利用できなくなる恐れがある」(専門家)のだ。

 そもそも、衛星測位システムの総称は「GNSS」(Global Navigation Satellite System)。うち、米国が運用しているものを「GPS」(Global Positioning System)と呼ぶ。現在、31基が稼働中だ。

地球を回る測位衛星は、GPSだけではない。

 米国のGPSに頼らず、自前でGNSSを構築・運用している国もいくつかある。例えばロシアは「GLONASS」(グロナス)と呼ばれる衛星測位システムを持ち、24基を運用中。同じく中国も「北斗」(バイドゥ)というシステムを構築している。すでに15基が打ち上がっており、2020年までに35基での運用を目指す。もちろん、これらは軍事利用が前提だ。

 ただし欧州には、完全に民生用のGNSSがある。EUが構築中の「Galileo」(ガリレオ)だ。日本・EU間の産業協力を担う非営利団体、日欧産業協力センターのファブリツィオ・ムラ事務局次長は「『ガリレオ』は軍事衛星のリスクヘッジとして重要な、民生用のGNSSシステム。最終的には30基を用意する予定で、今年秋には8基を打ち上げます」と話す。

チェコで開催された欧州宇宙博でも、「ガリレオ」がPRされている。

 一方で、日本はどうか。「日本では(米国との関係上)わざわざGPSなみのシステムを構築する必要性はないでしょう」と話すのは、国内衛星メーカーのライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティングの谷島 潔氏だ。

「米国ではGPSを維持するため、1年間に約1000億円を使っています。日本の人口に置き換えて計算すると、1人あたり年間ざっくり1000円かかるわけです。GPSは無料なのに、わざわざ国民が1000円も出して用意する必要性があるかといえば、難しいでしょうね」(谷島氏)

 現在の日本にはGPSのように位置を測定する衛星はないが、GPSの測位情報を補完・補強する衛星を運用している。それが「QZSS」(Quasi-Zenith Satellites System、準天頂衛星システム)。すでに初号機「みちびき」が2010年にH-IIAロケット18号機で打ち上げられており、2018年までに計4基(うち1基は静止衛星)体制になる予定だ。

 とはいえ、GPSが使えなくなると利用できなくなる状況は同じ。そこで、今後打ち上げる予定の次世代準天頂衛星には、「ガリレオ」の信号も受信できる機能が盛り込まれるという。

キーワードは『マルチGNSS』。技術の進歩で、小さなチップで複数のGNSSからの信号を受信できるようになりました。まだスマホに入るまでにはなっていませんが、すでに受信機は開発されています」(谷島氏)

 今後マルチGNSSが一般化すれば、日本とはあまり関わりがなさそうな欧州の「ガリレオ」も、役割が変わる。

『ガリレオ』はマルチGNSSの重要なピース。衛星の寿命はわずか10年で、お金の掛かる消耗品です。うまく相互利用するのが理想的ですね」(谷島氏)


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