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myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第28回

pixivのVOCALOIDイラスト投稿を検証

VOCALOIDはいつから女性人気が高まったのか?

2014年06月19日 18時00分更新

文● myrmecoleon

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VOCALOIDタグはイラストの文化
R-18も漫画も少ない

 以下のグラフ4にpixivのVOCALOID関連イラストのR-18・漫画タグの比率の推移を示しました。

 VOCALOIDのイラストはpixiv初期からR-18タグの比率は非常に小さく、2008年から2009年にやや増加しているものの、東方でもっともR-18率が低かったときよりもさらに低い比率です。その後2%まで落ち、以降現在まで1.5%から2%程度のR-18イラストが投稿されています。ボカロの18禁イラストは比較的少ないです。

 漫画タグも年々増えてはいるもののあまり多くはないようです。カゲプロのイラストでさえ4.7%に漫画タグがあったことを考えると、VOCALOIDは漫画よりもイラストの文化と言えるかもしれません。

pixivのVOCALOID関連イラストにつけられていた「R-18」「漫画」のタグについて、月ごとのVOCALOID関連イラストの作品数で作品数を割ったもの。2014年は6月上旬までの値。漫画タグは増加しているものの、いずれもあまり多くない

 こうしたpixivでのVOCALOIDのイラスト投稿者は7割が女性です。投稿者の7割が性別の情報を公開、2割強が性別と年齢の両方を公開しています。両方を公開しているユーザー約3万7000名についてみてみると、19歳から20代前半の女性の投稿者が多く、以下上下の年代に向かってなだらかな山を作っています。

 女性が多い一方、カゲプロなどと比べると男性の投稿もあります。男性投稿者は24歳を中心に山を作っており、東方と類似した分布となっています。

VOCALOID関連イラストの投稿者について、性別・年齢をpixiv上で公開しているユーザー約3万7000名について集計してグラフにしたもの。青が男性、赤が女性

カゲプロとボカロの人気はリンクしている!?
女性人気と低年齢化の関係は?

 VOCALOIDは女性人気が高いとはよく言われるところですが、これはいつからの傾向なのでしょうか。

 各年にpixivにVOCALOID関連イラストを投稿したユーザーについて性別の比率を調べると、2007年頃の初期は男性投稿者が多かったようです。しかし年々女性率が増加、2008年におよそ半々、2009年に逆転、2011年には現在と同程度の7割前後となっています。

 全体の投稿者の増加もあり、2009年・2010年頃に女性投稿者が急増しています(性別公開ユーザーのみでも2009年は約1万8000名、2010年は約3万6000名の女性ユーザーが投稿していました)。少なくともイラスト投稿については、実質的にVOCALOIDの女性人気が定着したのはこの頃と言ってよいでしょう。

 ちょうど2009年はニコ動では歌ってみたのボカロ曲ブームが起こった頃です(連載第2回第22回参照)。歌ってみたも女性投稿が多く、当時のVOCALOIDの女性人気の現われの1つと言えます。

 これらを見るとVOCALOID周辺の女性人気は2008年頃まで潜在的に進んでいたのが、その後2009年から2010年にかけて劇的に進展したと見るのが妥当でしょうか。

各年にVOCALOID関連イラストを投稿したユーザーのうち性別を公開している者について、男女の比率をグラフにしたもの。2014年は6月上旬までの投稿

 VOCALOIDは若い女性の投稿者も多く、第23回で取り上げたカゲプロの人気などもこれまでVOCALOIDのイラストを投稿していた層が移動しているのか、と考えていました。しかし実際に調べてみると違うようです。

 各年ごとの女性投稿者の年齢分布(大ざっぱに投稿時の年齢に調整済み)をみると、2009年頃までは19歳と21歳にピークがあり、裾野がゆるやかなため比較的低年齢の投稿が見えるものの、どちらかというと大学生から高校生の年代で起こっていた人気のようです。

 急増した2010年では20歳と17歳に山があり、2011年・2012年も16~17歳の投稿は多いですが18歳をピークとした分布をしています。若い女性投稿者が増えていたことは事実ですが、カゲプロのように14~15歳をピークとした分布ではありません。

 女子中学生高学年を中心とするカゲプロ人気に対して、この頃のボカロ人気は女子高校生高学年を中心としており、異なるユーザー層による人気だったようです。

 一方、2013年にはVOCALOID関連イラストの投稿者でも14歳・15歳の投稿が増加しています。2014年もいまのところ同様の傾向を見せています。

 2013年はカゲプロ人気が大きく盛り上がった時期でもありますが、タグとしてはこの頃すでにカゲプロはVOCALOIDからは分離し始めています。単にカゲプロ人気で中学生の投稿が増えたわけではないと思われますが、カゲプロが呼び水となって初音ミクなどの投稿も増えたという見方はできるのかもしれません。

 また2013年は『りぼん』などの少女マンガ誌で初音ミクなどを取り上げる動きが活発化、U-18優先を打ち出した「マジカルミライ」なども開催され、VOCALOIDの低年齢層へのアピールが目立った年でもあります。こうした動きが反映されたものかもしれません。

 すでに2013年はじめのアスキー・メディアワークス/角川アスキー総合研究所の「子どもライフスタイル調査2013冬(PDF注意)」などでも小学生のボカロ人気が示されていましたので、潜在していた小中学生のボカロ人気がこの頃からpixivの投稿などにもはっきり現れたということなのかもしれません。

 若い女性のボカロ人気はこれまでしばしば語られることではありますが、2009年頃からの高校生世代の人気(ボカロ人気の女性化)と、2013年頃からの中学生世代での人気(ボカロ人気の低年齢化)は分けて考えたほうが良いのかもしれません

各年にVOCALOID関連イラストを投稿した女性ユーザーのうち性別・年齢を公開している者について、各年の年齢別のユーザー数をグラフにしたもの。2014年は6月上旬までの投稿

 過去7年ほどのpixivでのVOCALOID関連イラストの投稿を見ていくと、15万という非常に大きな規模のユーザーがそこに関わってきた様子が概観できます。

 その間、GUMI人気などニコニコ動画と相関する動きがありつつ、キャラクターとしてはやはり安定して初音ミクの人気が高いです。むしろ近年は初音ミクを描く比率が増加していました。3月9日や8月31日といった記念日に投稿数が急増する様子も見え、イラスト投稿において初音ミク人気は現在も健在と言えるでしょう。

 pixivでのボカロの女性人気もやはりニコ動の歌ってみた人気などと相関し、2010年頃からはっきり女性投稿者が大半となりました。一方でその年齢構成は変わりつつあり、2013年以降は14歳15歳の中学校高学年の投稿者が急増しています。原因は特定できませんが、これまでとは新しい動きが起こっていると言ってよいでしょう。

 2013年は「初音ミクV3」の発売などもあり劇的な変化を期待していたものの、それほどの明確な動きはなく停滞感を感じる部分もありましたが、今回のデータなどを見ているとボカロ人気において大きな動きが起こっていたことが見て取れます。まだまだ注目していきたいと思います。

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