このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

LINEビジネスコネクトとExactTargetをCMO必須のツールへ

セールスフォースとLINEが切り開くマーケティングの未来とは?

2014年06月11日 09時00分更新

文● 大河原克行

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

LINEビジネスコネクト導入の敷居を下げたい

 企業は、自社をフォローしている顧客や、自社が発信する情報を受け取ることを選択した顧客と、直接コミュニケーションを取り、メンバー限定のコンテンツなどを提供。さらに、ユーザーの承認に基づいて、LINEアカウントをSalesforce ExactTarget Marketing Cloud内のユーザープロファイルにリンクさせることで、より最適化したメッセージを送信することができる。

 今回の提携によって、①Marketing Cloudに格納されているプロファイルデータ(位置情報や言語情報など)に基づくLINEフォロワーのセグメント化とターゲティングを通じた高価値コンテンツの提供、②LINEフォロワーとのOne to Oneの双方向コミュニケーション、③動画や画像、オーディオファイルなど質が高い動的なコンテンツを通じた顧客エンゲージメントの促進などが図れるという。

 LINE上では、日本では100社以上、海外でも200社が企業アカウントを持って、メッセージを送信しているという。これによって、3億5000万人が企業とつながっているという。また、今年2月からは、「LINEビジネスコネクト」の提供を開始。公式アカウントの各種機能を企業向けにAPIで提供する法人向けソリューションとして展開してきた。

 田端氏は、「100社以上の企業を訪問したが、7~8割の企業がすぐにやるという回答ではなかった。アプリ開発の予算、スケジュールの問題、部門の壁などがその理由。宣伝部門とIT部門の間にボールが落ちるというような状況もみられた」とする。さらに、「企業アカウントからは、全員に同じメッセージを送るか、あるいは送らないか、という二者択一しかなかった」とも語る。

 だが、セールスフォース・ドットコムとの提携でこれが解決できるとする。「LINEビジネスコネクトの導入負担が飛躍的に軽減されること、Salesforce ExactTarget Marketing Cloudの全世界1万社の実績を活用できる。今まで“絨毯爆撃”的に送信していた企業からのメッセージが、GPSを誘導したように“ピンポイント爆撃”が可能になる」と田端氏は表現。「われわれがやりたいことのハードルが一気に下がる。海外に出ていくという観点でも大きな意味がある」とする。

ホークスレイ氏と田端氏の特別対談が行なわれた

今のスマホ向けの投資は若者を無視しているのと同じ

 一方で、田端氏はこんな指摘もする。「若者の○○離れ、という言い方がされるが、大手企業の多くが従来メディアを中心とした広告投資のまま。しかし、若者のメディア接触の時間の20~30%が、スマホに割かれているのが実態。スマホ向けの投資に2~3%割いていたらいい方であるという状況を考えると、若者が見ていないところに投資して、見ているところに投資していないことがわかる。これは若者を無視しているのと同じ。離れるのは当然である」

 こうしたギャップを埋めるという点でも、今回の提携は意味があるといえそうだ。「若い人たちは、必ずLINEのグループに入っている。クラスのグループ、部活のグループ、バイト仲間のグループといったように複数のグループに入っている人もいる。そこで、個人間のメッセージがやりとりされている。もし、フットサルのグループがあれば、スポーツ用品メーカーがスポンサードするといったこともできる。ジャンストインタイムでメッセージを届けることができるLINEと、One to Oneマーケティングが実現できるSalesforce ExactTarget Marketing Cloudによって、狙ったセグメンテーションに対して、効果がある形で情報を提供することができる」(田端氏)。

企業のマーケティングインフラとしてLINEをどう活用する?

 LINEが目指している将来の姿は、パーソナルなコミュニケーションツールという点がコアであることは変わらない。だが、「企業のマーケテイングインフラとしてどう活用するのかという取り組みが重要になる。さらに、ニュースサービス、eコマースなど、付加的サービスによって、総合的なコミュニケーションのインフラにしていくことも目指したい」とする。

 いわば、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)にとって欠かせないツールへと発展させる考えだ。「ここでは、CRMと呼ばれるリレーションシップというつながりではなく、トラスト(信頼)が大切である。企業と顧客とが、お互いに信頼を持ったコミュニケーション環境を構築したい」とする。

 これに対して、ホークスレイ氏は、「これからの時代を考えれば、CMOというのはわくわくする役職である」と前置きし、「コンシューマユーザーは、マーケットよりも先に行っているのが実態。その点では、顧客のより近くにいることが大切である。CMOという職種は、日本では定義されていない。また、日本のCMOにはリスクを負うことが許容されていないという環境もある。しかし、CMOは、俊敏性を持って、デジタルマーケティングを活用しなくてはならない。デジタルマーケティングは大きな投資をせずに実行できるものであり、これを活用しない手はない」とする。

 また、田端氏は「テレビへの広告出稿では、プランを立てて、成果を検証するのに数か月かかる。しかし、LINEを使ったデジタルマーケティングは、一日単位、時間単位となり、PDCAのサイクルが短くなる。これは失敗を繰り返しても、精度を高めることができるともいえる。だが、強いブランドを持った企業の方が、コンサバティブ。ブランドを守る、あるいは恥をかきたくないということがあるのだろう。しかし、失敗を避けていることが失敗ということがある。こうした点も打破しなくてはならない」と語る。

 さらに田端氏は、「オンラインの売り上げと、オフラインの売り上げというような考え方がまだまだ多い。ユーザーからすれば、そんな区別はなく、どちらで買っても同じ。国内と海外、販売促進部門とIT部門といったボーダーラインも同じ。LINEは、こうしたボーダーラインを取り払うツールになる」とする。

 ホークスレイ氏も、「Salesforce ExactTarget Marketing CloudとLINEの組み合わせは、破壊的な技術になる」と宣言してみせる。

「Salesforce ExactTarget Marketing CloudとLINEは破壊的な技術になる」(ホークスレイ氏)

 これからデジタルマーケティングは、One to Oneの世界に入ってくるのは明らかだ。LINEとSalesforce ExactTarget Marketing Cloudの組み合わせが、One to Oneマーケティングを加速するのは間違いなさそうだ。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ