1990年代、ネットワークOS「NetWare」を擁し、マイクロソフトと市場を争ったノベル。しかし、2010年に米The Attachmate Groupに買収されて以降、同社の組織やビジネスが見えにくくなっているのも事実だ。昨年12月に日本法人の社長に就任した河合哲也氏にノベルの最新動向と戦略について聞いた。
持っているポテンシャルを活かしきっていない
まずは、現在のノベルのビジネス組織について整理しておこう。現在ノベルはThe Attachmate Groupの傘下にあり、Attachmate(ホストインテグレーション)、NetIQ(システム管理)、SUSE(Linuxプラットフォーム)などのブランドとともに世界30カ国以上でソフトウェア関連ビジネスを展開している。日本では、ネットアイキューとノベルの営業やSE・コンサルティング、サポートなどが1つの組織として活動しているほか、SUSE事業部だけが独立した事業部となっている。
ノベル代表取締役社長の河合哲也氏は、「NetWareが市場を席巻している時代からよいテクノロジーに持っている会社だと思っていた。SUSEを買収して以降、正直ニュースも少なくなっていたが、また名門を復活できるようにがんばっていきたい」と抱負を語る。
2014年度は、日本でも新規ライセンスのビジネスで6%の成長を達成し、堅実に業績を回復させているという。しかし、河合氏は「6%の成長率では、名門は復活できない。持っているポテンシャルを活かしきっていない」と断言。2015年度はSUSEを中心にしたオープンソース、PlateSpinのバックアップ/マイグレーション、従来から高い実績を誇る認証/運用/ファイル管理などの全分野で昨年実績の1.5倍、つまり50%の売り上げ達成をぶち挙げる。
こだわりのエンタープライズ品質で顧客をつかむ
この成長の要因になるのは、SUSEを中心としたオープンソースビジネスだ。1992年に初の商用Linuxディストリビューションとして登場したSUSEをノベルが買収したのが、今から10年以上前。それ以来、同社が着々と強化を続けている「SUSE Linux Enterprise Server(SLES)」は、ハイエンドのエンタープライズ用途に特化することで、メインフレームやSAP、HPC(High Performance Computing)などの分野できわめて高いシェアを誇っているという。エンタープライズの利用に耐えうる品質、SAPやVMwareなどに向けた徹底検証、HA(High Availabirity)の標準搭載などで、あらゆる面で顧客の厳しい要件に応える。「自動車のブランドで例えれば、トヨタではなく、(高級車の)BMWみたいなもの。全体で見ればシェアは決して高くないが、ある層には熱狂的な支持を得ている」(河合氏)。
特にIBMのPOWERプラットフォーム上で動作するLinuxとして数多くの実績を持つほか、SAP HANAで唯一推奨されるOSがSLESだという。河合氏は「市場は商用UNIXが減って、Linuxが増えている状況。メインフレームもTCOの観点で再評価が進んで、見直されつつある。ハイエンドはあらゆるところで延びしろがある」と期待する。
こうしたエンタープライズ品質重視の哲学は、同社のOpenStackディストリビューションである「SUSE Cloud」にも引き継がれている。アップデートやインストレーション、プロビジョニングなどもスピーディに行なえるほか、先日は他社に先駆けHA機能も搭載された。「先日、OpenStackのイベントで、OpenStackを使って、VMを立ち上げるまでの時間を競う『Rule The Stack』がありました。そのコンテストで3分14秒という驚異的な時間で優勝したのが、SUSE Cloudのユーザーだったんです」(河合氏)。
エンタープライズのニーズに応えるという同社の姿勢は、「We Adapt,You Succeed」というロゴのタグラインにも現れている。「お客様の行く方向に我々が適用(Adapt)させ、成功をサポートするという意味。悪く言えば、ビジョナリではないかもしれないけど、これからも厳しい要件を持ったお客様を支えていく」(河合氏)。ハイエンドの顧客と常日頃から接し、日々ニーズを聞くことで、ユーザーに最適な製品・サービスを提供していく。NetWare自体から培ってきた強固なアライアンスパートナーが実現しようとするソリューションを黒子として支える。そして、セキュリティや運用管理などかゆいところに手の届くツールを確実にユーザーに提供していく。こうした“愚直さ”が、名門復活を見据えた新生ノベルを作り上げていくことになりそうだ。